表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
legacy online ― 歪愛 ―   作者: ゑルマ
legacy online
46/74

第四十五話:黒き鳥の盟約と綻びの記憶



 リバルドが静かに全員へ視線を向けた。

 その落ち着いた声が、薄暗い地下室に響く。


 「消失事件を追う組織……うーん、アダダさん達も来た事ですし、正式に名前を決めましょう」


 アダダは少し背筋を伸ばし、クロとアッシュも自然と姿勢を正した。

 被害者たちも息を呑み、リバルドの言葉を待つ。


 「名前か……」

 クロが静かに呟く。


 「短くて、覚えやすくて、意味が通るものがいいね」

 アッシュが腕を組み、ふんと鼻を鳴らした。


 「ビビらせられるやつがいいな。敵に聞かせてもカッコつくやつ」

 なーちょがくすっと笑う。


 「ゲルちん達の拠点、レイブンだしぃ? 黒い鳥ってテーマでまとめるのもアリじゃなぁい?」


 その言葉に、クロがふと顔を上げた。

 静かで、しかし芯のある声で言う。


 「……《クロウ》はどうかな」


 その瞬間、部屋の空気がわずかに震えた。


 「クロウ……」

 アダダがその響きを確かめるように呟く。

 短く、鋭く、闇を切り裂くような名前。


 アッシュがすぐに反応した。


 「おいクロ! お前の名前じゃねぇか!」


 「偶然だよ」

 クロは苦笑したが、その目はどこか決意に満ちていた。


 ゲルドは腕を組んだまま、低く唸るように言った。


 「……悪くねぇ。黒い鳥は夜を見通す。闇の中で動く俺らに合ってる」


 リバルドも静かに頷く。


 「短く、覚えやすく、意味も通る。いい名前です」


 ロナが不安げな表情のまま、しかしどこか救われたように微笑んだ。


 「……《クロウ》、いいと思います」


 アダダは胸に手を当て、静かに言った。


 「じゃあ……私たちは今日から《クロウ》だね」


 その言葉が、地下室の空気を決定的に変えた。

 消えた仲間たちのために。

 これ以上誰も失わないために。

 闇の中で真実を追う者たちの名が、今ここに刻まれた。

 ──《クロウ》。


          ***


 「では改めて、我々は《クロウ》として今後活動します」

 リバルドが宣言すると同時に、その声音が事務的なものへと切り替わった。


 「ですが注意点です。我々はあくまで事件を追う協力者に過ぎない事。

外で表立って仲良しこよしするための組織ではありません」


 冷徹とも取れる言葉だが、そこにはプロ意識が宿っていた。


 「そして今後、情報などがある程度集まったら私に連絡をください。

それぞれの情報があなた方全員を集める必要があるレベルまで達したなら、召集をかけます」


 リバルドはアダダたちの方を向いた。


 「アダダさん、クロさん、アッシュさん。

ここの秘密の部屋は今後も使用しますので、出来れば内密にお願いしますね。

入り方は先ほどゲルドさんがやっていた通りに」


 「わかった」

 アダダたちは真剣な表情で頷いた。


 「では、アダダさん達にも情報を共有します。

まずここにいる方々は皆、消失により仲間を失った方々です」


 リバルドの手が部屋の人間を示す。


 「ゲルドさんもそう、ロナさんをはじめ、アダダさん達以外の方全員です」


 重苦しい空気が漂う中、ポツリポツリと声が挙がった。


 「俺は二人失った……」

 「俺達は一人……」

 「私は三人……」

 「私は一人です」


 次々と告げられる被害の数に、アダダたちの表情が曇る。

 これだけの人間が、誰にも知られずに消えているのだ。


 「私達はね、ゲルドさんのこともそうだけど……知り合いのお父さんがいなくなったの」

 アダダが切り出した。


 「しかも最近じゃない。15年前だ」

 クロが補足する。


 「昔からあったって情報しか渡せないけど……

その知り合いは私たちにとっては大事な人でね。話を聞いて堪らず声をかけたんだ」


 「新しい情報だね、それわ」

 なーちょが目を丸くする。


 「15年前……随分と昔からあったのですね……」

 リバルドが考え込むように顎に手をやった。


 その時だった。


 (――ッ!?)

 アダダの頭に、雷が落ちたような鋭い痛みが走った。


 「うっ……」

 思わずこめかみを押さえる。


 「アダダ? 大丈夫?」

 隣にいたクロがすぐに気付き、小声で心配そうに覗き込んできた。


 「う、うん。大丈夫」

 アダダは気丈に振る舞ったが、内心では激しい動揺が渦巻いていた。


 (リバルドさんが『昔』って言った瞬間に、なんか頭痛が……なんだろこれ……)

 『昔』。

 その単語に触れようとすると、思考に靄がかかる。

 明確なものはない。ただ、この時初めてアダダの中にだけ、世界に対する微かな綻びが生まれた。


 そんなアダダの違和感を知ってか知らずか、会議は進んでいく。


 「つまりこうですね」

 リバルドが要点をまとめる。


 「・我々が追う消失は15年前から存在」

 「・そしてなぜか今こうして我々の生きる時代にも現れた」

 「・動かない守衛団」


 リバルドの鋭い視線がアダダに向けられた。


 「アダダさん、その15年も前に消失した方は未だに見つからないのですか?」


 「えっ、あ、うん。そうみたい」


 15年も前に消失した人物が未だに見つからない。

 その事実は、僅かな希望を抱いていた被害者たちを絶望させるに十分だった。

 部屋の空気が重く沈む。


 ゲルドは腕を組んだまま黙っていた。

 だがその拳は強く握りしめられ、沸々とした怒りが滲み出ているようだった。


 「ふむ……そうですか……」

 リバルドも表情を曇らせるが、すぐに気を取り直して続けた。


 「・未だに帰らない15年前の被害者」

 「そして被害者の方々から聞いた状況も合わせるとこうです」

 「・消失したプレイヤー達はいずれも戦場から戻る時に既に戦場から排除……

つまりHPが0になり倒されている人」

 「・いつもならある観戦場からの声は聞こえない」

 「こんなところでしょうか」


 リバルドの分析に、なーちょが「あっ」と声を上げた。


 「あーし気になって見てたんだけどー、掲示板に仲間が消えたってカキコあったのねー」


 なーちょは人差し指をこめかみに当てて、記憶を手繰り寄せるポーズをとった後、パッと指を立てた。


 「んー、2時ぐらいっ? んでぇー、朝起きてもう一度見たら消えてたのよー。消されちゃった感じィー?」


 「なるほど……」

 リバルドが目を細める。


 「掲示板は確か、守衛団が何かしらの問題解決のために使うとかで作ったって話あったよな」

 ゲルドが低い声で言った。


 クロが思考を巡らせる。


 「守衛団が管理してる掲示板。そして消えたという書き込み。

守衛団は探すていを出してからすぐに行方不明と捜査の打ち切り……」


 クロの中で点が線へと繋がっていく。


 「守衛団、もしくは守衛団の裏の立場のある人間かに、不都合があると考えられるね」


 「私もそう思います」

 リバルドが頷く。


 「何かあるとしか思えないですね……」

 ロナが不安そうに身を縮めた。


 ゲルドが舌打ち交じりに言った。


 「俺のファン? 何だったかな名前」


 「タケオっちねー」

 すかさずなーちょが答える。


 「あーそう、そいつ。タケオ」

 ゲルドは凶悪な笑みを浮かべ、バキボキと指を鳴らした。


 「あいつから何か探れないか、もう一度当たってみるか」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ