第四十二話:黄金の輝きと太陽の塔
「ガチャパレス」に足を踏み入れると、相変わらずそこそこの賑わいを見せていた。
当たりを引いて叫ぶ声、外してがっかりする声、それを羨ましそうに見つめる羨望の声。
欲望と一喜一憂が渦巻くその空間に、アダダたちも足を踏み入れた。
「ガチャ台増えたんだね、混雑が少しだけ緩和されてるかな?」
クロが列に並びながら周囲を見渡す。
「人すげーな」
アッシュが呆れたように言った。
その熱気に当てられたのか、アダダもつい口に出してしまう。
「私も引いちゃおうかなー」
「アダダ、ご飯食べるためにゴールド換金してるんじゃねーのか?」
すかさずアッシュが突っ込んできた。
「ちょ! 私だってダイヤ少しはあるもん! でもゴールドは大事! カレー食べれなくなるもん!」
「アッシュもあまり人のこと言えないんじゃないの?」
クロが少し嘲笑気味に、悪戯な視線をアッシュに向けた。
「1連ばっか回してるから」
「うっ……朝まで45ダイヤ持ってたのによ……」
「僕が渡したスキンに文句でも??」
「ちげーよ! 感謝してるぜ! ちゃんとな! ただダイヤ0、ゴールド0だぜ!」
「さっきも私が払ったもんねー」
アダダが笑い声を上げると、アッシュはバツが悪そうに顔を背けた。
「返します、次」
そんな軽口を叩き合いながら列を進んでいく。
そしてついに、クロの番が回ってきた。
「僕の番だ」
クロは端末を操作する前に、一つ後ろに並んでいたプレイヤーに声をかけた。
「申し訳ない、まとめて引くので少し時間かかってしまう」
後ろの男性は少し驚いた顔をしたが、すぐに笑顔で手を振った。
「あ、いいよ。いいの出るといいな」
知らない人にまで気を配るその姿を見て、アダダは心の中で(クロってば出来た人だなぁ……)と感心してしまった。
「ありがとう」
クロがお礼を言い、いよいよ引き始める。
今回のレートは「5連+1」で5ダイヤ。手持ちは58ダイヤだ。
「とりあえず5連×10回やるね」
アダダとアッシュは横で両手を組み、お祈りポーズをとる。
大量のカプセルが排出されていく。
たまにSRの演出が出るものの、これといって目ぼしいものは出なかった。
「うーん、ダメか」
10セットを引き終え、クロは笑いながら少し諦めた様子を見せた。
「く……」
アダダが悔しがると、アッシュが腕を組んだ。
「出なさすぎて落ち着いちまうな」
「残念だけど目ぼしい物はなかったね。スキンのゴールド換金してこようかな」
「まだダイヤ少しあるだろ? 最後まで引けよ男ならよぉ!」
アッシュが焚きつけるが、アダダはすぐに制した。
「クロは生活費も考えてるんだよ、アッシュと違ってさ」
「ぐうの音も出ないツッコミありがとなぁ?」
ふてぶてしく答えるアッシュ。
クロは少し悩み、残りのダイヤ数を確認した。
「うーん、確かに生活費は残しておきたいけど……残り8ダイヤ。3連だけ回そうかな、5ダイヤ残して」
「おう、いけ!」
クロが単発ガチャを回し始める。
一回目、N。
二回目、N。
淡々とした結果に、空気が緩みかけたその時だった。
「ラスト行くよ」
クロがボタンを押した瞬間、突如としてガチャ台が大きく揺れた。
「あれ、なにこれ来た?!」
アダダの声と同時に、ガチャ台は金色に光り輝き、さらにその光度を増していく。
周囲のプレイヤーたちが眩しさに目を細める中、一つのアイテム名が浮かび上がった。
ガチャリザルト
HR2 イエローガンタイプスキン 「サン・スパイア」
「お」
クロは驚くでもなく、落ち着いた声で短く呟いた。
「えええええ!!」
アダダが叫ぶ横で、アッシュが頭を抱える。
「俺はまだ引けてないのに……なぜだ……」
ずっと後ろで見ていたあの男性も、目を丸くして声をかけてきた。
「おめでとう!」
「ありがとう、待たせてごめんね。君のガチャも幸運である様に祈っておくよ」
クロは最後まで紳士的に対応し、三人は列から外れた。
少し離れた場所で、さっそくウィンドウを覗き込み、効果を確認する。
HR2 イエローガンタイプスキン 「サン・スパイア」
特殊効果:
・初弾高速化によるマーカーショットが可能
・初弾判定はリロード後の最初の1発に適用
・命中した相手に(人間のみ)10秒間、天に伸びる光のマーカーが付与される
・マーカーは10秒間消えずに対象の位置を割り出すことができる
・マーカーはPTメンバーにのみ視認可能
「……マーカーショット?」
アダダが首をかしげると、クロが興味深そうに解説を始めた。
「なるほど……。ダメージ重視じゃなくて、完全にサポート特化の武器だね。
リロード後の最初の一発だけ弾速が上がって、当てると相手の位置が強制的に表示されるみたいだ」
「天に伸びるマーカーってのがエグいな」
アッシュがニヤリと笑う。
「壁裏だろうが遮蔽物だろうが、どこに隠れてるか丸わかりってことだろ? 10秒間も」
「うん。しかも『初弾高速化』のおかげで、当てやすくなっているのが大きいね。
これ、さっき話題に出てた『10vs10』とか、乱戦でこそ真価を発揮するんじゃないかな」
「あ!」
アダダはハッとして手を打った。
「もしかして、あのリバルドさんの特攻とか、なーちょさんの嫌らしい動きも、これでマーク付けちゃえば……」
「ああ、対策になる」
クロの瞳が鋭く光った。
「どれだけ速く動こうが、隠れようが、位置さえ分かれば僕たちで集中砲火を浴びせられる。
それに、僕が全体を見ながらマーカーをばら撒けば、アッシュやアダダも動きやすくなるはずだ」
「へっ、面白くなってきやがった。まさに司令塔様におあつらえ向きの武器じゃねぇか」
アッシュが嬉しそうにクロの背中を叩く。
クロは苦笑しながらも、手に入れたばかりの「サン・スパイア」を装備スロットにセットした。
「運は向いてきてるみたいだね。それじゃあ、行こうか。……その『10vs10』へ」




