第四十話:白装束の来訪者
店長特製の豪華な料理に舌鼓を打っていた、その時だった。
他の戦場から戻ってきたばかりだろうか、装備に汚れが目立つ二人組の男が席を立ち、「会計お願い」と声をかけた。
「はーい! 来てくれてありがと! お会計ね! んっとー、特製ミッシュウカレー二つとコーヒーにガレリアパインジュース。合わせて7200ゴールドになりますっ」
ディルーがパタパタと駆け寄り、明るく応じる。
「じゃ、1ダイヤでー」
男の一人が、無造作に青白く光る石をテーブルに置いた。
「あっ、ごめんね。ゴールドでしかダメなんだ!」
ディルーが申し訳なさそうに断ると、
二人組は「はぁ? 換金所で1万ゴールドになるだろ? 普通にあとで換金してくればいいじゃん」と食い下がる。
ディルーが少し怯えた感じで「んー、店長に聞いてくるね……」と言い終わる前に、カランカランと白い装束を見に纏った女性プレイヤーが入ってきた。
「着いたーお腹ぺこぺこやで……ここが噂のカレー屋さんやねんな」
白い装束の女はそう言いながら店内を見回す。
入り口に置いてあるモフモフの動物?らしきオブジェクトを「可愛いなぁコレ」と訛りの入った口調で言う。
そして前を振り向くと揉めている雰囲気に気付く。
「どないしたんー? 自分らさっきの奴らやんか」
「あ、ソフィーさん、さっきはどうも」
二人組の男の一人がそう言い、もう一人が続ける。
「先に死んだ俺らだけど、ソフィーさんが勝ってくれたからそのダイヤで飯食おうぜってなったんですけど……ダイヤ支払い出来なくて、少し揉めた形に……」
「ほーん? そしたら自分らが食べたご飯はウチのおかげやんな? そしたらウチの言うことは聞くやんな?」
有無を言わせぬ圧力で男たちに詰め寄る。
「お店がダイヤダメというならそれしかないねん。ゴールド支払いするのが店のルールなら従わなあかんやろ。ダイヤよこしな、ゴールドでウチが払っといたるわ」
男たちは「すんません」と縮み上がり、ソフィーに1ダイヤを差し出した。
「ほら、ねーちゃんお会計なんぼ?」
「えっ、あっ、7200ゴールドになります!」
「はい、ごめんなぁ。別に友達っちゅーわけちゃうけどこいつら顔見知りやねん。許したってや」
「いやいや! ありがとうございます!」
ディルーは丁寧にお礼を言い、男たちにも笑顔で声をかけた。
「カレーどうでしたか? 美味しかったですか? 美味しいと思ってくれたらまた来てくださいね!」
ニコッと笑いかけるディルーに、二人は内心で思う。
(か、かわいい……)
「ご、ごめんなさい! 美味しかったです! カレー! 次はゴールドちゃんと持って会いに来ます! あっ、間違えた食べに来ます!」
そう言いながら、二人はお店を出て行った。
そんなやりとりを見ていたアダダ達三人は呆然としてしまったが、やっぱでぃーちゃんの笑顔可愛いなと思うアダダであった。
白装束を纏うソフィーを見て、(あれ? 訓練所ですれ違った子だ)と思い出す。
「ねーちゃん可愛いわぁ……看板娘って所やな?」
少し会話を続けた後、ソフィーはアダダに向き直る。
「そこの青いゴーグル? のねーちゃん! このお店のオススメ教えてやぁ!」
「あっねーちゃん達も初めてだったりするやーん……」
アダダが戸惑いながら答えようとすると、
「何たってカレーがうめーぞ。激辛のな。白いやつ!」
アッシュが横から口を挟んだ。
「おっほんまか? それならウチもそれ頼むわぁ。ねーちゃん頼むな?」
「かしこまりました! ただここのカレーの激辛は店長が容赦なく作っているので、初めは普通のでいいかと…。
それと一緒に飲み物もどうですか? 店長特製のブレンドコーヒーがカレーと合いますよ!」
的確な説明のあと、追加の注文も促すディルー。笑顔という名の射撃をこれでもかと振り撒く。
「うっ……」
(ハートを射抜かれた様な感じ)
「ねーちゃん商売上手いなぁ……コーヒーも頼むな? カレーはねーちゃんの言う通りに普通で」
「はーい! 店長オーダー入りましたー」
ディルーが奥へ向かう横で、ソフィーはうっとりした目でその背中を見送っていた。
アダダがぼそっと「でぃーちゃんを狙うライバル……」と呟くと、
クロがそれに気づき、「アダダ……」と呆れ笑いをした。




