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legacy online ― 歪愛 ―   作者: ゑルマ
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第三十八話:孤高の牙、交錯する意志



 『ミッシュウ・ラン』の喧騒から遠く離れた、ガレリアの外れ。崩れた石柱が並ぶ広場。ゲルドは一人、月明かりの下で銃の手入れをしていた。かつて、この場所には仲間たちがいた。共に背中を預けたカルマたちが。だが、あの「消失」の日を境に、ゲルドの傍らに立つ者は誰もいなくなった。


 理由も仕組みも分からぬまま、友が光の粒子となって永遠に失われる不条理。次に消えるのは自分かもしれない。そんな影を背負いながら、彼は孤独に銃を研ぎ続けていた。


 そこへ、二つの足音が近づく。


 「……何の用だ、お前たち」


 顔を上げず、ゲルドが地を這うような声で言った。そこに立っていたのは、リバルドとなーちょだ。


 「単刀直入に言いましょう。ゲルド、私たちのチームに入りませんか」


 リバルドが眼鏡の奥の瞳を鋭く光らせた。


 「……。断る。俺は馴れ合うつもりはないと言ったはずだ」


 「馴れ合いではありません。確実に生き延びるための『計算』です」


 リバルドは淡々と続けた。


 「アダダという少女たちのチームとの交戦……。個々の練度では勝っていても、結果は拮抗。いずれは3対2という単純な人数差に押し潰されていたでしょう。この世界で一人欠けている事実は、致命的な欠陥となります」


 なーちょが端末から顔を上げ、大きな溜息をついた。


 「もー、マジで数って暴力だよねー。一人多いだけでジリ貧確定。マジ無理ww」


 なーちょはいつもの軽い口調のまま、瞳から温度を消した。


 「……だからさ、あんたが必要なの。ゲルドくん。あんたの突破力があれば、私たちのピースが埋まって最強になれる。一人でカルマの影を追ってても、次に消えるのが自分じゃない保証なんてないでしょ?」


 リバルドが一歩前へ踏み出す。


 「私たちは、ただ勝ちたいだけです。……あなたも、一人で戦い続ける限界は感じているはずだ。どうですか、私たちの牙になりませんか」


 ゲルドは沈黙したまま、地面を軽く蹴った。


 「……。了承したわけではない。だが、お前たちが俺の足枷にならないか……戦場で確かめさせてもらう」


 【通常マッチ:廃都ダスト・レイル】


 転送完了と共に、三人は砂塵の舞う激戦区へと降り立った。


 「……。前方、ビル三階と屋上に計三。……やるよ」


 なーちょの声から甘さが消える。


 彼女のスキン**【HR2:ビーチウェーブ】**が発動し、重力を無視した緩やかな軌道でビルの窓から窓へと飛び移る。放たれる弾丸は特殊な衝撃分散システムにより、敵の反撃を物理的に弾き飛ばしていった。


 「私が釘付けにします。……ゲルド、正面を」


 リバルドがアサルトライフルを構える。スキン**【HR2:レオナルドリーフ】**が瓦礫の色彩をシミュレートし、彼の姿を背景へと完全に溶け込ませた。視認困難な位置からの正確無比な射撃に、敵は釘付けにされる。


 「……任せろ」


 ゲルドが地を蹴った。自らが弾丸となり、敵陣を粉砕するための攻めの突進。


 混乱する敵に対し、なーちょは時計塔の最上階から銃口を向けた。


 「……おやすみ。マジで。ww」


 鋭いマズルフラッシュ。敵を仕留めた直後、彼女は垂直に身を躍らせた。通常のプレイヤーなら即死する高度だが、水のクッションに着地したかのように無傷で降り立ち、即座に次の標的の背後を突く。


 「残るは、あなたの前の二人ですね」


 リバルドの報告を聞く前に、ゲルドは既に懐へ飛び込んでいた。銃身でガードを叩き割り、体勢を崩したところへ容赦のない零距離射撃を浴びせる。


 「……終わりだ」


 最後の一人が粒子となって霧散し、戦場に静寂が戻った。


 その後も数戦、三人は通常マッチを繰り返した。


 時には負けることもあったが、勝率は目に見えて跳ね上がっていった。転送ゲートから吐き出されたなーちょが、上機嫌に声を弾ませる。


 「えーマジやばいんですけどー! うちら相性抜群系??」


 「思った通りです」


 リバルドが眼鏡のブリッジをクイと押し上げた。


 「僕らに足りなかった詰める能力。チームの火力としての枠。それがゲルド、あなたの加入で完成されました」


 「ゲルちんも思うっしょ??」


 ゲルドは無言のまま、自分の拳を握りしめた。


 確かに感じていた。かつてカルマたちに感じた高揚。そして、この二人の技術は明らかに高い。サポート役ですら自ら決める力を備えたこの二人には、かつての信頼とは質の異なる、圧倒的な安心感があった。


 「……ああ。お前たち二人の能力は知っていたが、ここまでとは」


 ゲルドが低く、確かな敬意を込めて言った。


 「……バイザー娘たちとかち合うのが、楽しみだな」

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