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legacy online ― 歪愛 ―   作者: ゑルマ
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第十九話:ガレリアの宴。店長の不敵な笑み



 リザルト画面に躍る「1st PLACE」の文字と、懐に転がり込んだ5個のダイヤ。


 「よっしゃあ! 最高の気分だぜ! っと、急に腹減ってきたな……おい、あそこ行こうぜ、あそこ!」


 アッシュが自分の腹を叩きながら、満面の笑みで私とクロを振り返る。


 「あそこって……店長のところだね」


 「あぁ。あそこのカレーを食わねぇと、勝利の味が完成しねぇからな!」


 私たちは戦場の熱を帯びたまま、ガレリアの路地裏にある馴染みの酒場へと足を向けた。


 そこは戦士たちが集う憩いの場。店長が振るう酒と料理、そして絶品のカレーが、疲れ果てたプレイヤーたちの心身を癒やす場所だ。


 だが、店を包む賑やかな笑い声の中に、私たちは「異質な空気」を感じ取った。


 暖簾をくぐり、店内に一歩踏み入れた瞬間。カウンターの奥から聞こえてきた声に、私は息を呑んだ。


 「――マジかよ。俺ら、負けるのいつも漁夫だよなー。情けねー笑」


 聞き覚えのある、自信に満ちた軽い声。


 「……ゲルドに頼りすぎてるところが、自分らは余計になさけねーよ……笑」


 「いやそんなことはねーよ、カルマ達にも助けられてる。勿論連勝とはいかないが、着実に勝利数は増えてるだろっ!」


 そこに座っていたのは、先ほどの戦場であの圧倒的な立ち回りと銃剣術を見せつけた、あの「最強のプレイヤー」たちだった。


 「おい……お前ら!」


 沈黙を破ったのは、やはりアッシュだった。


 カウンターに並んで座る二人組が、ゆっくりとこちらを振り返る。


 「……あ? なんだ、騒がしい奴らだな」


 男――ゲルドが、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。端正な顔立ちだが、その瞳には強者特有の鋭い光が宿っている。


 「ゲルド。この人たち、例の噂の……」


 隣に座る、どこか生真面目そうな雰囲気の男・カルマがゲルドの耳元で囁いた。


 「あぁ……なるほどな。ショッピングモールで俺に一掃された時よりは、少しは腕が上がったか?」


 その見下すような物言いに、アッシュがピクリと眉を跳ね上げた。


 「んだとコラ……! お前、名前はゲルドって言うんだろ? さっきの戦場でも見てたぜ、派手にやってたじゃねぇか!」


 アッシュがイラ立ちを隠さず詰め寄るが、ゲルドは全く動じない。


 「見てた? 趣味が悪いねぇ。漁夫を狙う勇気もなかったのか?」


 「なっ……!」


 「まぁ待てよ、アッシュ。……ゲルド、君たちはさっき、別のチームに落とされたんだね?」


 クロが冷静に割って入る。ゲルドはグラスを傾けると、面倒そうに肩をすくめた。


 「あぁ、最悪なタイミングで横槍を入れられてな。技術的には自分より上の奴は少ないと思ってるが、多勢に無勢じゃどうしようもねぇ。……まぁ、あの後を勝ったのがお前らだったとはな」


 「……自分はゲルドに教えたはずですよ。アダダさんたちのチームはかなり腕が良いと、街でも噂になっているんです」


 カルマが少し申し訳なさそうに私たちに会釈した。


 「ふん、噂ねぇ。……まぁ、あの時よりはいい目をし始めてるじゃねぇか。特に、そのバイザーの娘」


 ゲルドの視線が、私の青いバイザーを射抜く。


 「……アダダです。……さっきの動き、凄かったです。でも、次は負けません」


 私が真っ直ぐにゲルドを見据えると、彼は一瞬驚いたように目を細め、それから楽しげに笑い声を上げた。


 「――おいおい、店の中で暴れるんじゃねぇぞ。……ったく、騒がしい連中だ」


 カウンターの奥から、店長が湯気の立つカレーの皿を並べながら姿を現した。


 「親父こいつら、知り合いなの?」


 アッシュの問いに、店長は表情を変えず、淡々と答える。


 「あぁ。こいつも最近よく顔を出すようになってな」


 店長は私の顔とゲルドの顔を交互に見やり、何かを確信したようにニヤリと笑った。


 「……へぇ。なるほどな。アダダたちが言ってた『例のプレイヤー』ってのは、お前だったのか、ゲルド」


 店長の一言で、私とアッシュは息を呑んだ。店長の中でも、私たちの話していた宿敵の正体が、目の前の客と完全に一致したのだ。


 ゲルドは一瞬意外そうに眉を上げたが、店長の様子を見て、すぐにすべてを察したように鼻で笑った。


 「……なるほどな。店長もこいつらを、それなりに目にかけてるわけだ。道理で、少しはマシな面構えになるわけだ」


 店長はそれには答えず、ただ「ほら、冷める前に食え」と、私たちの前にカレーを置いた。


 店長の手が私の肩に一瞬だけ置かれ、すぐに離れる。言葉はない。けれど、その重みが「負けるなよ」と言っているように感じられた。


 「面白いじゃねぇか」


 ゲルドの瞳に、初めて私を対等な「敵」として認識するような、冷たく熱い火が灯った。


 「アダダ、だったか。次、戦場で会ったら容赦しねぇ。そのバイザーごとブチ抜いてやるよ」


 「……望むところだよ、ゲルド」


 酒場の喧騒の中、私たちは互いの存在を深く刻み込んだ。


 かつての敗北の象徴は、今、超えるべきライバルへと変わったのだ。


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