第十六話:三人の誓い。ガレリアの風を受けて
クロとの対話を終え、私はガレリアの広場でアッシュと合流した。
「よぉ、アダダ! 帰ってきたか! 面構えが少しはマシになったじゃねぇか!」
アッシュは昨日のことなどこれっぽっちも気にしていない様子で、豪快に私の背中を叩いた。
「……アッシュ、昨日は本当にごめんなさい。私、自分のことしか考えてなくて」
「あぁ? そんなもん忘れたぜ! それより見ろよ、俺様の『しゃがみリーン』、さらに磨きがかかったぜ。さっきも訓練場で一暴れしてきたところだ!」
アッシュの底抜けの明るさに、私の心に僅かに残っていた澱がスッと消えていく。
「……ふふ、負けてられないね。私も、今日からまた全力でいくよ」
「ああ。三人が揃ってこそのチームだ」
クロが静かに頷き、私たちは再び並んで歩き出す。
ふと、自分のステータス画面を開くと、画面の隅で「5」という数字が輝いていた。
「……あ、そういえば。ダイヤが5個溜まってたんだった」
「お、ガチャか!? 引いちまえよアダダ! 景気付けによ!」
アッシュが興味津々に画面を覗き込んでくる。
この世界において、ダイヤは戦果を挙げた者だけが手にできる、血と汗の結晶だ。
3人は「ガチャ・パレス」へ向かう
たくさんの人がいる中ガチャを引く列に並び自分の番が来るのを待った。
「……5連で回すと、1回分おまけが付いてくるんだね。よし……回してみようかな」
私は意を決して、ダイヤを転送しガチャを回した。
画面が激しい光に包まれ、六つのカプセルが次々と排出される。
(……お願い、何か今の私に必要なものを!)
一連目……Nスキン「煤けた軍手」。
二連目……Nスキン「使い古しのブーツ」。
三連目……Nスキン「迷彩柄のバンダナ」。
「……う、うーん。やっぱりそんなに甘くないよね」
四連目、五連目と続くが、出てくるのはどれも平凡なデザインのNスキンばかり。
「おいおい、景気が悪いなぁ。全部ゴミじゃねぇか!」
アッシュがガッカリしたように声を上げる。私も、期待していた分だけ肩の力が抜けてしまった。
けれど、演出はまだ終わっていなかった。
「……あ、そうか。5連一気にやったから、最後の一回があるんだ」
画面に残った最後の一つ。
これまでのカプセルとは明らかに違う、僅かに銀色の輝きを帯びた演出が走った。
(……っ!?)
シュゴォォォ……という重厚な効果音と共に、画面中央でそのアイテムが姿を現す。
【SR:アジュア・タクティカルバイザー】
「……えっ!? SR……!?」
目の前に現れたのは、コバルト・ストリームと同じ鮮やかな青色のラインが走る、洗練されたデザインの頭部スキンだった。
「……すごい。SRの頭スキンだね。しかも、君の銃のカラーリングと完璧にマッチしている」
クロが驚きを隠せない様子で画面を見つめる。
「やったじゃねぇかアダダ! そのバイザー、めちゃくちゃ強そうだぜ!」
私は震える手で、そのバイザーを装備してみた。
視界の端に薄く青いインターフェースが投影され、キャラクターの外見が一気に「熟練の兵士」のような風格を帯びる。
(……アジュア・タクティカルバイザー。……今の私に、ピッタリのアイテム)
今の私には、それが「もう一度立ち上がれ」という、この世界からのエールのように感じられた。
「……もう一度行こう!あの戦場に!!」
青いバイザーを光らせ、私は顔を上げた。
昨日の敗北を塗り替えるための、新しい戦いが今、始まる。




