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【ALICE】─全てが経験値で賄われる世界に落ちた世界。  作者: 御伽ノRe:アル


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82/84

ALICE.82─白薔薇西庭園⇔セーフゾーン。

「トランプ兵! 増援来ました! 数字の6が4! 数字の7が2!」


「こちら、残り数字の5が3! 数字の7が1!」


数字の8のトランプ兵を倒したからといって、攻略自体が終わるなんて事は─当たり前の事だが、そんな事は無い。


それを今、俺達は直接この身を持って─味わっていると言っても過言では無いだろう。


あれから、白薔薇西庭園内にてセーフゾーンを探す為にも引き続き─俺達は探索を続けている。


しかし、行く先行く先─全てに置いて、まるで狙いすましたかのように…トランプ兵達が俺達を待ち構えていた。


特に戦闘が長引いた際は最悪だ。


今現在のように、戦闘音を聞きつけられでもしたら─応援のトランプ兵達が徒党を組み、押し寄せて来る始末だ。


何とか未来達は、白薔薇の壁を背に─陣形を立て直す事が出来ていたが、それさえも何時まで持つかは分からない。


それに数字の8が居ない事自体は不幸中の幸いと言えるだろうが、それでも数字の7が居る。


数字の8程では無いが、数字の7も十分に厄介であり、脅威になり得る存在だった。


俺とイノリは遊撃としての役割を果たす為にも、数字の大きいトランプ兵へと優先的に向かい対処をしていた。


数字の8のトランプ兵を倒して以降、俺達はランク自体が少し伸びた事により─戦闘面に置いて、多少の余裕は生まれてはいた。


だが、今はこんな状況だ。


正直な話、正確な判断を下すのも困難な状況に追い詰められていると言えた。


それでも、何かしら判断を下さないといけないタイムリミットが刻一刻と差し迫っていた。


増援のトランプ兵達が合流し、押し寄せて来たのならば─それこそ、もう手遅れの合図だろう。


双剣を振るいつつ、俺は思考を常に動かし続け─最善を求め、俺達は戦い続けていた。




「カズキさん!」


「分かっている! 大きな数字は俺達に任せろ!」


これ以上、思案している時間は無いだろう。


決断の時が来たと捉えるべきだ。


未来の声で、改めて周囲の状況を確認し─一瞬も無駄にする事が無いよう戦況を把握していく。


そして、俺は決断する。




「カズキは─」


「あぁ! 俺は増援の方へ行く! イノリはこのまま未来達の方を頼む!」


「うん。─分かった!」


俺はイノリへと言葉を投げ掛けつつ、新たに現れたトランプ兵達へと一目散に駆け出した。


許容出来る時間の限界まで、思案してしまっていたのだ。


これ以上は増援がこちら側に合流してしまい、今の膠着状態は呆気なく瓦解してしまう未来が目前に迫っていた。


だからこそ、俺はギリギリまで考えてしまった分を取り戻す為にも全力で駆け抜けた。


イノリに任せてしまったが、彼女には今現在も引き続き戦い続けている未来達の事を任せるしか無い。


イノリは数字の7のトランプ兵の注意を惹き付ける為にも、引き続き戦闘状態へと入っていっていた。


─俺の、この判断を信じる他は無いだろう。


時間が許されるギリギリまで考え抜いた末の決断だ。


多少の誤差は有れど、最良の選択をしたつもりだ。


だが、それでも心情的な面に置いては─天秤は大きく心配の方へと傾くだろう。


しかし、どちらかを選ぶとしたら─未来達側の方が万が一、何かしらのトラブルに見舞われたとしてもイノリの安全に関して言うのならば…俺の今、突き進んでいる選択肢よりは安全と言えるだろう。


そんな事を考えてしまうものならば、俺は今この瞬間でさえ─イノリの居る背後へと、一瞬でも振り向きたくなってしまいそうになる。


だが、もう─そんな余裕は無い。


俺は自身の感情に無理矢理にでも蓋をしては、目前の俺を迎え撃とうと武器を構えながら駆けてくる─増援のトランプ兵達へと、ただ愚直に突っ込んで行くだけだった。







「僕も一緒に行こうかーぁな? 私の助けが必要だーぁよね?」


「─頼むッ!」


「あはははッ! あぁ、嬉しいかーぁな! 素直に頼られたからには分かったーぁよ! 俺に任せたまえッてーぇね!」


俺の心情を知ってか知らずか、イカレ帽子屋がひょっこりと俺の隣に現れては─共に駆け出して来ていた。


正直、この場面に置いて─イカれ帽子屋の助けは願ったり叶ったりだった。


イカレ帽子屋は、早速現れてはトランプ兵達の下へと向かい─倒すまでには達しはしないが、トランプ兵達の足止めを始めていた。


─いや?


正確には、最初に一体は倒していただろうか?


しかし、俺も既に数字の7のトランプ兵達との戦闘に入ってしまい─そこまで確認する余裕が無くなってしまっていた。


最後に確認出来たのは、俺達をまるで見定めているかのように─戦場を俯瞰するように立ち回っては戦っているイカレ帽子屋の姿だった。


そして、それは今現在も続いているようだ。


再度、イカレ帽子屋の姿を盗み見た時は─見事と言わざるを得ない動きで、増援で来た数字の6のトランプ兵4体を未だに翻弄していたのだった。




「そして、俺は─ッ! こいつらだッ!」


素早く視点を切替え、俺は目の前に迫り来る数字の7を冠するトランプ兵達を見やる。


既に何度も、互いに攻撃の間合いに入っており─2体のトランプ兵達が、それぞれ武器を構え直しては俺へと斬り込んで来ていた。


余力を残して置く程の余裕はもう無いだろうと、俺は即座に判断した。


そうして、全力で迎え撃つ為にも俺は自身の並列処理を限界まで行う。


そのお陰もあり、両サイドから攻め立てて来るトランプ兵の攻撃を無事に凌いでは捌ききる事に成功する。


そして、トランプ兵達に一瞬でも隙が生まれようものなら─俺は最大限の反撃を加えていった。




数字の8のトランプ兵との戦闘の恩恵もあるのだろう。


俺の視界は常に開けており、トランプ兵達のスピードにも目が追い付いていた。


その上、今現在はトランプ兵達の力に押される事も無くなりつつ有り─逆にこちらが打ち返せる位には力が伴って来ていた。


それに今は、ただ強さだけでなく─技量に関しても、トランプ兵達より突出して来ているようにも思える。


この感覚は、正しくALICEの穴の中の攻略時でしか得られない感覚だろう。




ただ、目の前の戦闘に集中し─俺は息を吸うように経験を吸収していく。


そして、それら集大成を常に昇華させては吐き出すように─その全てを攻撃へと転じさせていった。


弾いては避け、凌いでは攻め─相手の挙動を冷静に分析しては、最適解を導き出し攻撃を加えていく。


常に一手でも多く、トランプ兵へと攻撃を入れられるよう意識を割き─導き出された動きをなぞる様に立ち回っていく。


そして、いつかは終わりが来るのは道理だろう。


体力を失い、弱って来ているトランプ兵を1体沈められたら─一気に攻めへと転じる事が出来、残り1体のトランプ兵も多少苦戦はしたが討伐する事が出来た。




「おや? 良い感じだーぁね? なら、まだ行けるよーぉね? ほら、頑張りたまえ! なぁーんてーぇね?」


しかし、すかさず─イカレ帽子屋は俺がトランプ兵を討伐したのを見極めたのか、残りのトランプ兵を俺の方へとけしかけて来ていた。


「お前ッ─!」


「はははははッ!」


俺が文句の声をあげようと、イカレ帽子屋はただ笑うだけだった。


だが、そうだ。


実質コイツはけしかけて来たトランプ兵達を塞ぎ止めていたのだ。


多少の感謝は必要だろうが─いや、違うな。


それとこれとは別問題だろう。



「クソっ! イカレ帽子屋ッ!」


数字が一つ減っての6だからとて、急にトランプ兵が弱くなる訳では無いのだ。


そして、何よりもそれが四体も居るのだ。


確かに数字の8みたいに個体値として優れているのは別格だろうが、そもそも白薔薇西庭園を攻略する上で難点とされていたのがトランプ兵達の連携だ。


俺一人に対し、四体からの攻撃は正しく四方からの攻撃と言っても過言では無かった。


四方からの攻撃に、俺は双剣を迎撃の為にも無我夢中に振るうので─精一杯に陥る未来が目に見えていた。




「─カズキッ!」


しかし、途中からイノリが加勢に来てくれたのが大きかった。


イノリが一体目のトランプ兵を隙を突くように討伐した後から、だいぶ戦況は楽になったが─それでもシビアで、ハードな戦闘だったのには変わりは無かった。


だが、その過酷さ故に大きな恩恵も得られた。


俺達は早々にランクアップに必要な経験値を貯める事が出来、また一つランクを上げられた。


そして、やはりランクアップする事により─身体の疲労がだいぶ楽にもなったのだった。







「どうだったかーぁな? 見事な誘導だとは思わないかーぁね?」


「…素直に感謝されると思っているのか?」


「はははッ! 勿論、その反応でも結構だーぁよ? さぁさぁ、続きが楽しみだーぁね?」


「はぁ…」


チラリと横を見やれば、イノリも溜め息をついている辺り─まぁ、イカレ帽子屋へと対する感情は俺と似たようなものなのだろう。


未だに敵対心等は微塵も感じない。


そもそも脅威を感じる訳でも無い。


だからこそ、そこから導き出される答えは─イカレ帽子屋は敵では無いと言う至ってシンプルな答えになるのだろう。


それに気紛れ故かも知れないが、時たまだが─聖女の道標のメンバーを助けているのも既に、何度も見掛けてはいる。


しかし、だからといって─気の置けるような奴では到底無いというのが、俺の下すイカレ帽子屋への総評だった。







「皆! 装備、道具類の確認を─お願いします!」


「信弥さん、そっちは大丈夫そうか?」


「─ええ、何とかなっていますね。いえ、正確には違いますね。これもひとえに、カズキさん達のお陰ですね。こうやって進められているのは、カズキさん達の遊撃が有ってこそでしょう。…それで、そちら側はどんな状況でしょうか?」


「ん、俺達か? そうだな…正直な所、何とか戦えているというのが本音か? だが、実際はまだ余力は残っているし─戦えるな。信弥さんの方は未来さんが大いに奮い立ってたよな? 彼女の鼓舞が俺の所まで聞こえて来る時があったから、正直驚いてるぞ? まぁ、近況の話をするとしたら─そんな所か? イノリの方も大丈夫そうだな。そうなると、後は─まぁ、イカレ帽子屋か…」


「ふふふ。大丈夫だーぁよ? 心配してくれたのかーぁな? 私が無事なのは当たり前の事だーぁよね? まだまだ、余裕だーぁよ?」


「うん、私も大丈夫」


イノリの返事が霞んでしまうのは申し訳無いが、確かにイカレ帽子屋の返事は自信に満ち溢れていた。


なるほど、イカレ帽子屋は確かに余裕そうだ。


ステッキをクルリクルリと振り回しては遊んでおり、余裕綽々と言った感じだ。


だが、トランプ兵をけしかけて来た時の悪い笑顔を俺は忘れていないぞ─と、睨みつけてはみたが…それさえも、やはりどこ吹く風の様相だ。


全く、道化師みたいな奴だ。




「皆様、道具類の準備や装備の確認は大丈夫そうでしょうか? ─大丈夫そうですね? では、行きましょう。怪我等の心配のある方はサポートの方に都度、小さくとも相談して下さい。私達は、この戦場を生き抜くのです!」


「「「はいッ!」」」


聖女の道標のメンバー達の準備も整ったようで、俺とイノリは彼らと足並みを揃えるように攻略を再開していく。


だが、やはり─先に進むほどに、戦闘の濃さは混迷を増していった。


しかし、相対的に貰える経験値も増えていくのだけは良かったのかも知れないが─それでも、難戦が目立っていく。


それでも、俺とイノリ─後はイカレ帽子屋の存在も大きかったのだろう。


何とか、難戦が来ようとも俺達は乗り越えられ─着実に一歩一歩を進めていた。


そうして、進めると言う事は─いつかは、目的の場所に辿り着くという意味でもある。


その可能性が増えると言うことは、後はその可能性をこちらへ側と手繰り寄せるだけだ。


その可能性に賭け、俺達は何度も苦戦に陥ったが─その度に苦戦、又は困難を退けていった。


そして、その困難の先─何度目かの戦闘を終え、進んで行った先で…俺達は大きな空間に踊り出たのだった。







「─あれは、中央にあるのは…噴水か? それに小屋? この雰囲気、セーフゾーンか?」


「…分からない」


俺の独り言に近い呟きは傍に居たイノリの耳には届いていたようで、その返事が俺へと返って来ていた。


だが、イノリでも分からないか─。


そうなると、だ。




「─イカレ帽子屋? お前なら、分かるんじゃないか? 自分の庭みたいなものなんだろ?」


「う~ん、そうだーぁね…そのくらいなら、教えても大丈夫かーぁな? ああ、そうだーぁよ。おめでとうだーぁね? 確かに、ここは君達の探し求めていたセーフゾーンだーぁよ」


「「「─本当ですか!!」」」


イカレ帽子屋の返答の有無は皆、気になっていたのだろう。


そして、そんな中でのイカレ帽子屋の発言を受け─周囲は一気に歓喜のムードに包まれた。


暫らくの間、そのムードは途絶える事は無く─互いに生き延びられた喜びを分かち合う場になった。


人によっては熱い抱擁を交わし合い、互いの体温を感じる事で─生き残れた事を互いに確認し合っていた。


こうして、俺達は激戦の果て─やっと、腰を落ち着かせられる場所へと辿り着いたのだった。

御一読頂き、誠に有難う御座います。

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