ALICE.80─胡散臭い協力者。
「皆、お疲れ様です。そして、いよいよ─かねてより計画していた大規模攻略を本日をもって、開始致します! 残酷な事なのは承知していますが、この攻略の中では…私達の誰かが死んでしまう可能性は大いに潜んでおります。もしくは道半ばで、私達は大きな困難に直面するかも知れません。私達なら大丈夫! ─っと、そんな希望的な事を…胸を張って、私は言えません。私達の歩む道はもう既に、茨の道なのです。その道程は目に見えて、優しいものでは無い事は確定しているでしょう。そして、私達には─この心眼の目が有ります。そこから得られる情報通り、私達の今─目の前、この現在居られる場所にも闇が蔓延って来ています。─そうです。今や私達には、前しか存在し得ないのです。ただ、道を切り開き─前進し、生き抜く事が私達の生存…ひいては私達の運命を切り開く事に繋がると、私は信じています。しかし、それと同じくらい─私は皆を死地に連れて行きたくはないのです。なので、ここで逃げる事を選択する事も─確かに、一つの戦いなのです。今、この場で逃げるのは恥ずべき事ではありません。愛する者、守りたい者は誰にでも居ます。─ええ、私は皆に選択をして貰いたいのです。その結果、残って頂いても構いません。その上で、これからの先─この白薔薇西庭園の攻略を一緒に来て下さると言うのならば、私は喜んで命じましょう。─共に悔いが残らないように攻略をしましょうと。─共に死なないように、互いに助け合い…この困難に立ち向かって進みましょうと。皆の、その一つしか無い命は簡単に散らせては良いものではありません。あなた達の命を今も、片時も忘れる事なく大切に思っている─そして、慈しんでは愛してる者が…皆には必ず居ります。あなた達の帰るべき場所とは、その慈しみ愛してくれる者達の溢れる楽園です。その為にも、その手を振るう目的は愛する者を守る為でも有り─そして、そんなあなた達を守る為の手でもあるのです。私達は片時もそれを忘れてはなりません─私達は守りながら、果敢に攻めて行くのです! そして、その果てにこそ─この白薔薇西庭園の踏破が待っている事でしょう! この先に何が待ち受けているかは私も、いえ─私達の誰一人、未だに分かってはおりません。しかし、それでも─この未知の恐怖を切り開き、立ち向かおうとする私達の心…その気持ちこそ、私達の真実です! 皆、行きましょう! 私達を愛し、救い─そして、守る為にも!」
「「「─おおおお!!!!」」」
こちらまで、大歓声は聞こえてくる。
その熱い火照りはあっという間に周囲に伝播していき、今や一つの生き物の如く─大きな感情のうねりを生み出しているように見える。
「…熱狂的だな」
「えっと、それは…褒めていますか?」
「あぁ…そうだな。─何とも言えないな。俺にはそんなに熱くなることは、無かった…はず?」
そう、隣で聞いていた信弥に俺は答えを返していたが…。
─いや?
どうだったろうか?
何か─こう、引っ掛かかりを覚えたが…今は目の前の事だ。
俺は、少し頭を振っては目の前の光景へと視線を戻した。
「─いや、そうだな。今は、その熱も必要だな」
「そう言って貰えるなら、良かったです。こちら、参加予定の者です。ホワイトの事も事前には伝えておりますが、念の為。お互いに共有しておきましょう」
「─ああ、ありがとう」
そう言って、電子上にて互いの参加予定のメンバーを共有していく。
結構な人数が既にリスト化されては、俺の手元の電子情報にて名前が羅列していた。
「それにしても…もう、ある程度の参加者は決まっているのか?」
「─ああ、なるほど。今はまだ演説をしている最中なのに、何故? という、当然の疑問の表情ですね」
「…まぁ、な」
「それほどまでに、これからの攻略に私達は真剣と言う事だと思って貰えたら幸いです。何度か…いえ、何度も挑む中で─もう既に、私達の中でもトランプ兵に殺られた犠牲者は居ます。彼らには容赦というものが欠如していますからね。…殺された者の末路は酷いものです」
「そうか…」
─それは、そうだ。
俺達には身に覚えは少ないが、彼ら─トランプ兵は基本的に意思が薄いというか、皆無だ。
ぐちゃぐちゃのグチュグチュに対象がなっていたとしても、攻撃は執拗にされ続ける。
ALICEの穴では、最期は周りの土に吸収されていた気がしたが─ここでは目の前に見える薔薇の養分にでもなるのだろうか?
─いや、止めておこう。
軽く想像した所で気持ち悪くなってしまい、俺は想像するのを止める事にした。
「─カズキ、私達も行こう。向こうで未来さんが待っているはず」
「ああ、分かった。行こう、イノリ」
「うん」
そうして、信弥と別れ─俺はイノリに手を引かれては未来の下へと向かい始める。
そして、未来と合流し─俺達は聖女の道標の攻略メンバー達へと代わる代わる挨拶を交わしていく。
「─んぱぁ!」
「なっ!?」
「…ふふふ。驚いたかーぁな? やーぁ? きーたよ?」
「…何のようだ?」
見事に驚かされてしまった。
─いや?
その前に気配があったか?
自然と疑惑の目をそいつに向けてしまっていた。
まぁ、睨みつけようともそいつはどこ吹く風の雰囲気の構えだったが─その姿さえ様になっていた。
「僕のお気に入りが攻略に行くというのさーぁ? 助けが必要だーょね?」
「─助けだと?」
「ああ、そうだーぁよ? 任せたーまえ!」
そう言って、クルリとステッキを振り回し─トンッと、小気味よい音を立て…ステッキを地面に叩いては、目の前のそいつ─いや、イカレ帽子屋は帽子を取っては俺達へと優雅に一礼をして来ていた。
「邪魔にはならないよーぉ? ふふふ…どうだーぃ?」
「いや…」
「─カズキ、受けた方がいい」
「おやーぁ? 流石、お嬢ちゃん。お目が高いーね?」
「…イノリ? はぁ、分かった。─だが、味方の表示はされないが大丈夫なのか?」
「…ふふふ。私の心配をしてくれるのかーぁな? 大丈夫だーぁよ? 私はそんなに弱くはないかーぁらね? 庭園は私の遊び場だーぁよ?」
「…本当に大丈夫なのか?」
─はぁ。
だが、まぁ…イノリの言葉だ。
信じる事には信じるが、胡散臭いのは拭えない。
まぁ、拭えないのは仕方ない事だろう。
─そもそも、風体からして怪しいのだ。
俺は溜め息を吐きつつも、イカレ帽子屋の同行を許可するのだった。
それを見て、更にイカレ帽子屋はニンマリと顔を綻ばせていたのは蛇足だろう。
「カズキさん、えっと…?」
「やーぁ? 久し振りだーぁね? ご一緒させて貰うーょ?」
「…カズキさん、本当ですか?」
「未来さん、信弥さん。─いや、言いたい事は分かる。だから、そんな目で俺を見ないでくれ。…だが、連れて行く。自衛に関しては、コイツ自身で対処出来るらしい」
「ふふふー。大丈夫だーぁよ? だから、宜しくねーぇ?」
ヒラヒラと俺達へと手を降って来ては、ニマァと笑って来る─やはり、その姿からは怪しさしか感じられなかった。
「「はぁ…」」
─だが、未来と信弥も共に諦めたのだろう。
溜め息を吐いては、彼らもマッドハッターの同行を許可するのだった。
そうして、俺達は白薔薇西庭園へと足を踏み入れるのだった。
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