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【ALICE】─全てが経験値で賄われる世界に落ちた世界。  作者: 御伽ノRe:アル


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ALICE.76─出会い。

「あいつ、逃げたな…」


何となくだが、俺はそう思った。


かき回すだけ、かき回して─後は、逃げるタイプだったか…。


「……」


イノリの方も心無しか、非難めいた目を扉の先へと向けている。


まぁ今は、それでも…目の前の事に、集中しないとか─。




「え、えっと…。お邪魔、致します?」


「…別に、自由にすればいい。ここは、俺の家じゃないからな」


「─そ、そうなのですか?」


「私も失礼致します」


そうして、玄関先で待ちぼうけを食らっていたかのように立っていた未来達だったが─再起動が終わったのか、恐る恐ると俺達に話し掛けて来ていた。


とりあえず、外に立たせて置くわけにも行かないだろう。


…俺は彼らを小屋へと招き入れるのだった。







「それで? 一体全体、俺達に何のようだってんだ?」


「えっと…、そのですね? 特段、その─とても重要な用事が、あるという訳では無いのですが…。ただ、その─ここ、えっと…庭園に入れるようになりまして、ウサギに軽く貴方達の事が心配だからと─お見舞いしたいので居場所を教えて欲しいと、尋ねてみましたら…ここに居ると、教えて貰えたので─。それで、その…えっと、お訪ねしてみただけなのですけれども…」


「…おい? 本当に─それだけなのか?」


「えっと…」


「─カズキさん、横から…すみません。私達は別に悪気は無いんです。ただ、その本当に心配から訪れただけで…良ければ、その─色々とお話をさせて頂けたらと思っていただけで…」


「話を、ね? その心眼とやらを用いてって、いう事か?」


「「─ッ!?」」


「─ったく。そうやって、直ぐに顔に出すなよな? その反応は、お前達にとっては…デメリットしか生まない行為だっていうのは理解しているのか? そして、その結果…俺のお前達への警戒度が、今─更に、上がったからな? 俺はな、ただ何もなくニコニコと近付いて来る人間を、はい─そうなんですか、っと…安易に信じるような玉じゃないんだよ。─そういう風になるような生活は、残念ながら送って来てはいないからな。そもそも、俺は生きる為にも─基本的には物事を疑って生きて来ているんだ。そんな生活からの直感ではないが、お前達からは─濃厚な偽善者的な匂いが、嫌なほどしてくるぞ? 一体全体、本当に何が目的だっていうんだ? 良く聞けよ? これが、本当に最後の確認だ。─よく、物事を考えて話せよ? これ以上、面倒な問答を俺にさせないでくれ」


煙草も碌に吸えない事もあって、俺自身がイライラしているというのは自覚している。


だが、それ以上に彼らの良心をくすぐっては─情報を得ようとした、詐欺まがいではないが…騙そうとしてくる、雰囲気そのものが─俺を更に不愉快にさせていた。




「えっと、私は…私達は、その─」


「…いえ、未来さん。これは、この提案をした私がいけませんでした。こんなにも警戒心が高いとは思っていませんでした。完全に私の情報不足と、思い違いのせいです。─公安局の方とは上手く共闘していたという情報は得ていたので、私達にも上手くハマるかと思っていました」


「公安局?」


─ああ。


そのキーワードを聞いたら、紗奈さん達が脳裏に浮かんで来た。


いや、彼らと一緒に扱えと?


彼らは目の前の二人組とは違い、先に自分達から切れる札をしっかりと切ってきていた。


─俺はその誠実さに対して相応に応えただけだ。


警戒心というものは、一般的に自然と持ち合わせているのは当たり前の事だ。


その中で、こいつらはどうやって信頼を勝ち得ようとしていたというのだろうか?


そもそも、こいつらは何を吐き違えている?


いつから、俺は応えるのが当たり前だと思われていた?




「なぁ、お前達…何かを吐き違えていないか? いつから、お前達は俺達より偉い立場になった? そして、俺の上の立場だと─いつから傲慢に認識しているんだ? 心配してるから、教えて貰える? 教えて貰えるのが当たり前? 自分達から近寄って来ては、与えられるのが普通? そんなちょっとした慢心とも言える、小さな芽の認識があるよな? そういう芽は、俺には直ぐ分かるぞ? なぁ、お前達? その目を持って、何か勘違いしていないか? その傲慢な感情を助長させてはいないよな? 世界はお前たちを中心に回ってる訳じゃないんだぞ? それを自覚して、しっかりと認識しているのか?」


「貴方は何を言って─ッ!」


「─信弥! 大丈夫…大丈夫だから。その、ごめんなさい。本日は、これで私達は─」


「だから、なんでだ? なんで、お前達が勝手に決める? お前達が勝手に訪ねて来て、始めた物語なんだぞ? 巻き込まれた俺の意見は言う機会も無いっていう事なのか? なぁ? やっぱり、どこか勘違いしてるよな? 今、選ぼうとした─その選択は俺から見ても、一番滑稽だとも思える選択だぞ? そこら辺も、分かってるのか?」


「「─ッ」」


そこまで言って、どうやら少しは理解してきたらしい。


それにしても…この短い間に、だいぶ嫌われてしまったみたいだ。


今は、まるで親でも殺されたような目を─俺に対して、二人は向けて来ていた。


─やっぱり、何か面倒事がしそうな予感はしていたんだ。


自分の予感が見事に当たってしまった事に、内心俺は溜息を吐いてしまうのだった。







「─貴方は心底、人を不愉快にするのが得意な性格のようですね」


「それは、お互い様だろ? 自分の尺度や考え方に合わないのならば不愉快と割り切ってしまう。─そんな短慮な考え方をするお前達と関わるなんて、俺は基本的にはお断りだ。─だが、今は別だ。話にはしっかりと付き合えよ? お前達から勝手に来たんだろう? その始まりから、逃げるなよ? そもそも、都合の悪い事に毎度じゃないが─目を背けていたら、どうなるか…なんて事はお前達が、一番その身を持って知っているんじゃないのか?」


「「─ッ!」」


─ああ、コレは図星を引いたみたいだな。


再び、物凄い目で睨みつけて来たが…お前達、俺達を心配で来てたんじゃないのか?


そんな簡単に化けの皮が剥がれるようならば、そもそも心配とかという建て前を抜きで来れば良いものを…って、そんな事─今更だな。


俺だって、こんなに噛み合わない事には驚いているところだ。


こいつらもこいつらで、予定とは違い─調子をだいぶ狂わされてるという事なのだろう。


まぁ、次回からは気をつけて来てくれれば良いだけさ。




─さて、とりあえずだ。


俺は今も、実は辛い状況だったりする。


体調の悪さは、引き続き継続中だ。


早いとこ、話しを始めないとだな。







「─ああ、良い顔になったな。やっと、話が出来そうじゃないか。まずは、自己紹介から行こうか。─それが、普通っていうものだろ? 俺達は出会ったばかりなんだからな。─ッ! まぁ、俺の身体は今みたいに碌に動かない状態だ。口だけの挨拶で、些かぶっきらぼうに見えるかもしれないが…そこは、まぁ─勘弁してくれ。後は、俺に真っ当な話し方を求められては困る。一応、善処はするが─難しいって事を理解して欲しい。残念な事に、俺は真っ当で大層な生き方はして来れてないからな」


「え、ええ…分りました。えっと、私は─重盛未来と言います。聖女の道標というギルドのギルドリーダーをやらせて頂いています。それで彼は─」


「私はサブリーダーをやらせて貰っています。滝沢信弥と言います」


「─そうか、分かった。あっ、イノリの方は…悪いな。見ての通り、首しか動かせないみたいでな。─そうだな、本当に心配だと言うのならば…一つ、頼み事を聞いてくれないか? 信弥さんで良いよな? そう、呼ばせて貰うぞ。良ければ、俺の…あっちの方にある服の胸ポケットから煙草を取って来てくれないか? あっ、そうか…その前に、煙草は吸っても大丈夫か? ダメな奴は居るか?」


「は、はい。私は大丈夫です。─信弥は?」


「私も平気です。えっと、コチラになりますか?」


「ああ、悪い…。助かッ─! ったく、本当に不調だな」


「…点けて差し上げましょうか?」


「良いのか? …ああ、助かる」


折れ曲がってヨレてはいるが、ちゃんと吸える煙草だ。


信弥に火を点けて貰い、やっと俺は煙草を吸う事が出来た。


─なるほど、これが煙草の禁断症状ってやつなのか?


吸い始めた俺は、だいぶ心持ちが気持ち良くなってきた気がする。




「はぁー」


ふぅ─と、煙を吐くと綺麗な形で広がっていた。


「これは、幸先が良いみたいだな」


「えっと…?」


ふと、零してしまった独り言に未来が反応しては疑問を呈して来ていた。


ついつい、吸えた嬉しさも相まってか─俺は独り言を零してしまっていたらしい。




「─ああ、悪いな。これは、その…俺の勝手なジンクスって、やつだな。煙草の煙の形が綺麗だと幸先が良いんだ。逆に、歪だと悪くなるな。─今のは良い形だった。─だから…なんだ。あー…と、お前達との出会いは俺にとって、そうだな─お前達にとってはどう思うかは分からないが、良いって事なんだろうな。ふっ─まぁ、改めて宜しく頼む。別に俺はお前達を嫌ってる訳じゃない。立場上…というのは少し違うな。─どうにも、上手く寄り添え合えなそうな相手とは肌が合わないらしい。お前達の俺へと向けて来る警戒心が、どうやら…俺を苛立せてるんだと思う。まぁ、直ぐに信用しろというのは─さっきの話をしている時点で難しい事だとは思う。それでも余り俺や、そうだな…今は話せないがイノリの事も含めて、余り毛嫌いしないで貰えたら助かるな。…どうだ? 俺の言いたい事は伝わってるか?」


「─は、はい。その、すみませんでした」


「私も貴方の事を、少し─勘違いしていたようです。先程の無礼は詫びさせて下さい」


俺の話を聞き、二人は鳩が豆鉄砲を食らったかの様にとは言わないが─俺の態度に面食らったように、俺の事を見て来ていた。


いや、俺だって常に不機嫌な訳では無い。


むしろ、相手をただ理由も無く─毛嫌いする質でも無い。


そこら辺の線引き部分は、ここまで話しているんだ。


しっかりと、伝えないとフェアじゃないだろう?


それに、こいつらも根っからの悪人とかでは無さそうだ。


そこん所を確認する為にも、歩み寄りは大切な事なのだと俺は思っている。


なので、まぁ─突き放したような言い方をしてしまったが…俺から、再び歩み寄るのも吝かではないだろう。




「─別に良い。それよりも…どうしたんだ? 何か余裕が無い状況なのか? 俺は見ての通り、まともに動けない以前に…イノリと共に、ずっとここで眠り続けていたらしい。正直に話すと、外がどれほどの時間が経っているのかも分からない状況だ。逆に、俺達の方が色々と教えて欲しい。─但し、情報を得てばかりだと互いに利が無いからな。未来さん達が俺達の知る事、見聞きしてる事で知りたい情報が有るというのならば…提供出来る部分は可能な限りはしたいと思う。─それだったら、どうだ? 不足は有りそうか?」


「そ、それで良いのでしたら…」


「─そうか、助かる。イノリの方にも、また…回復したら話してみるといい。見ての通り、イノリは話せそうにないからな。とりあえず今は、俺だけで勘弁してくれるか?」


「…そこまで、私達は求めません」


「ふぅ─。…なら、大丈夫そうだな? なら、話し始めようか?」


ぎこちなくとも、何とか腕は動いてくれたので─煙草を吸い終えた俺は、煙草を取って火を消しては…未来達へと向かい合った。


そうして、俺達は改めて─対話という対話を始めるのだった。

御一読頂き、誠に有難う御座います。

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