ALICE.69─ポーン担当【Q】
「さぁ! 皆! 開くよ!」
私は自身の掛け声と共に、大扉へと手を掛け開いていく─。
「おお〜、これは─見事な真っ暗闇! ふむふむ、ふむふむ? これは、どうなっているんだい?」
私は闇雲に手を入れては、抜いて…頭を入れては、抜いていく。
─匂いは、無いね。
─浮遊感や重圧感も感じない。
とりあえず、私達は別々に分かれて検分しつつも中に中にと─暗闇の中、その大扉の中へと入っていく。
そして、皆が入った時点で情報で得ていた─白く濃い霧が私達を包み込んで来た。
これも検分しないと! と、気持ちを新たにしていた所で…バタン─ッ! と、大扉が閉まっただろう音と共に─白く濃い霧が晴れていく。
そうして、白い濃い霧が晴れて─私達の目の前には、庭園が拡がっており…背後には忽然と現れた森が現れては、その中間地点を踏みしめるように─私達が立っていた。
「これは…観ているのと、実際に体験するのとでは全く感じ方が違うね? これはどういう原理で、いつの間にこうなってしまっているのかな? 草木は本物? なるほど? 木にも…質感があるみたいだ。─匂いも、薔薇の香り? 音も、葉擦れ? 薔薇の花びらの舞う音? 全部あるみたいだね。それに、話に聞いていた穴はどこかな? これは、横穴みたいなのは─クリアしないと出現しないと言う事なのかな? それに─」
正直な話を言うと、既に目の前に大きな庭園が拡がっており─薔薇が咲き誇っている、その非現実的な光景でさえ…私の知的好奇心を掻き立てるのには充分だった。
だけれども、それ以上に庭園の前に立ち塞がるように─聳え立っている大扉へと、私の目は向いてしまっていた。
その大扉は今現在も閉まっているようで、そこには大きな水晶が残り1つ嵌っては残されていた。
─残り二つしかない内の一つが、今…目の前にある。
それだけでも、私の気分は急速に高揚していくのが自身でも手に取るように分かった。
「じゃあ─皆、行こっか? 私達の知りたい事を知る為にもね」
私の声に応じて、一人一人─手を止めては立ち上がり、庭園の大扉へと向かい歩いていくと…やはり、事前に情報にあった通り─ある程度、私達が近付いた瞬間に、水晶が光り輝いていき…一際、光り輝いた際にヒビ割れて─水晶は砕け散っていった。
そして、歪んだ空間の先からは─美少女のような、又は…美少年のような、コスプレをコレでもかとしている何者かが出て来ていた。
…全体像はウサギをモチーフにしているのだろうか?
その小柄な感じには似つかわしくない大きなハンマーを携えては、私達の目の前に─葛西臨海公園のALICEの穴のポーン担当が姿を見せたのだった。
「ハロハロー? あっれー? ワタシ、呼ばれるタイミング…こんなに中途半端って事、あるー? マジ? えー? こんなタイミングなら〜、呼ばれるのー最後が良かったかもー? ボイコットだぁー! ワタシを最期にしろー! 中途半端は断固拒否ヨリの拒否ー! 無理無理の絶対ムリー!」
─声も、男にも女にも聞こえる。
よく見てみるけれども、これは…性別の判別は、不可能かな?
「えー? なになにー? そんなに熱い視線でワタシの事見てきてー? ワタシの事、気になるぅー? 気になっちゃうー? えー、ワタシ…困っちゃうなぁ? なに知りたい感じかなぁー? ちょっぴり、気分良くなっちゃったから〜。ちょっぴり、ほんのちょーぴり…答えちゃうかも〜? ワタシ、凄く優しくない?」
「素直に聞いたら、教えてくれるのかい?」
「えっ? あー! んー! ちょっと、ちょっとだけ、ちょーぴり、ミリミリのミリの時間、待ってー。今ねー、色々とー、見てるからー。あー! うん! 君達、ちょー良いねー! 真理の探究者! カッコいいじゃん! そういうの良いよね! 分かる分かるぅ! ワタシ、君達のこと─より一層、気に入っちゃったよ! で、なになに? 何、知りたいヨリの感じカナー?」
そう言って、目の前のコスプレ美少女? はおちゃらけた雰囲気で、けれど─その瞳の中の視線は妖しく光っては、私達を覗き込むように見てきていた。
「この世界は─なんなんだい?」
「うーん? 漠然としてるー? わざと? わざと言ってるのかな? わざとじゃないかなー? どこまで知ってる感じかなー? うーん? そう言う聞き方ちょっと嫌かもー? ブッブーですよー? まー、でも…言った手前もあるしー?」
「何か、不都合な質問だったのかな?」
「えー? 不都合? 不都合って、それはどちらにとっての話ー? ねぇ? 真名ちんの思う世界って何かなー?」
「─え? それは、地上があって─今現在、新しく生まれた…ここは地下だと思われてるけれども─多分、違うと私は見ている。─そう、違う概念の世界だと…私は考察しているよ」
「─うんうん。へー、いいね! 地上という上も、地下という下も─違う概念の世界かぁ…アハハ! でもでもー? それだとこの世界にも〜、ALICEがあるのはおかしくないのではないですかなー? そこんところ、真名ちんはどう解決するのかなー? それにー、アリスっていう世界をモチーフにしていてー、真名ちんの想像しやすーいように見せてるのも、不思議じゃなーい? 疑問に思わないのですかなー? こーんなにも、実際の空間はぐにゃぐにゃの構成なのにぃ? でも、ぐにゃぐにゃなのにぃー、一定の法則性があるなんて〜変でしょー?」
「それは…なら、この世界も─現実?」
「現実ぅー? だから、現実ってぇ─真名ちんにとっては、なんなのさー? 突然、空間から真名ちんみたいに剣とかー? 食べ物とかー? そういうの取り出せちゃうのが、真名ちんにとっては現実なのー? いつから、そう思ってる感じなのですかなー? 真名ちんは最初から〜、そんな感じだったのぉー? 人工肉はー? レーションは、どこにやったー!? 真名ちんは、一体全体─普段は何を食べてるんだー! あれれー? ふっしぎー!」
「─え? え? 私は、確かに…何を、食べて─」
「─ねぇ? 一体全体、真名ちんのお腹は…何で膨れてるっていうのさー? 真名ちんのお腹かっさばいてやるかー!? あっ! このシュークリーム美味しいー! とか、あったよねー? あれー? シュークリームなんて、豪華な甘味を食べた事、真名ちんはあったのですかなー? シュークリームの美味しさを比較出来る程、真名ちんはシュークリーム食べた事あったー? 人工肉とレーション! 高級品はお野菜ー! そんな知識はどこやったー? 真名ちんは真理の探究者ー? 真理はどこに置いて来たんだってんだい! バカヤロー!」
「─え? シュークリームはシュークリーム…? あれ、なんで? 私、シュークリームなんて知識でしか。ううん…でも、見たことがあるし─食べた時は比較していた、一体何と…?」
「あるよねー? うーん、いつ、見たことがあるのかなー? 何回目でかなー? あっ、権限減っちゃった! ほーんと、この権限ってやつ─不便! プンプンだぞー?」
「─何回目? 何を言って、いるんだい…?」
「真名ちん? 真理を知りたいなら、目を背けちゃダメだよ? ランクとスキルは大切だよ? でも、一番大切なのは─身近な当たり前を、疑ってみるのも大切だよ? でも、全部が全部、疑ったら疲れちゃうからさ! ワタシみたいに楽ぅーに見てみるのも、オススメだよー!」
「当たり前を疑う…」
「真名ちん達はどこから来て、どこへ行くんだろうね? あっ、また権限が減った。─クソだね! ほーんと不便! 教えたいのか、教えたくないのか! 知らせたいのか、知らせたくないのか! どっちなんだよ、本当にぃ!」
「…」
「あっ、真名ちん。─沈んじゃった? それとも、凹んじゃった? 困ったなー、論破? 論破なんてしたくなかったのにぃ! 他に知りたい事ないのー? あるのー? どっちなんだい? そんな顔されたら、ちょっと罪悪感〜」
そう言って、こちらへ近付いて来る事は無いが─顔の素振りだけでも、私を心配するように目の前の美少女? は私の事を見てきていた。
「…試練っていうのは何の試練なんだい? それに、この─カウントダウンの意味って、どういう意味なのかな?」
「試練は話すとしたら、ワタシの権限が勿体ないかなぁ? これ、なぁんか勝手に良い感じに…ワタシの権限減らされてるんだよねー? 訳分かんなくない? ─だとしたらぁ、もう一つのカウントダウン…うん、素敵だね! 一番、確かに身近に有って、当たり前になっちゃってるやつだ! そうそう、そういうの良いと思いまーす!」
「なら、カウントダウンの方でお願いしたい」
「─もち! そっだねー? ギリギリのギリギリを攻めた説明? をするとだねー! カウントダウンとは、本当に世界のカウントダウンなんだよー! 世界っていうのはさぁ、結構─あー、さっきの説明が本当にギリギリっぽいー? なんだよぉ〜? これ以上、話すのは強制的に許さないって事ですかなぁ!? ワタシ、プンプンですぞ〜? もぅー、ゴメンね! ワタシ、意外とへなちょこだからさぁ! 権限すっくないの! こんくらいちっぽけだからぁー! すっからかんなの! だって、ポーンだから! あっ、これ自慢出来ないやつだね! えっと、えっとー? それで! 世界が終わっちゃったら、みーんな、みんな消えちゃうのさ! それが、本当に今回はラストって事! あっ、権限無くなっちゃった! ゴメンねー! もう、無理ー! ワタシ、頑張った! 丸!」
「─今回? 消える? ラスト?」
「後は、真名ちんに任せた! それとも、死んじゃう? 死にたいの?」
「─いや、私は真理を知るまでは死にたくない!」
「おっ! いいねー! それでこそ、いい女! 私はどっちでも無いし、有るから成れないやつだ!」
「え? 無いし、有る…?」
「え? ワタシの事、知りたい? 知りたい系ー? やーん、真名ちんのエッチー!」
「─え、エッチじゃないです!」
「え? そう? ワタシはどっちでもあるから、分かるんだけどなー? そっちの真理も面白いよー! あはは! 真名ちん、純粋ー! ピュアー! 可愛いよ!」
「…か、からかわないで貰いたい! こ、口上を言うのだろうッ!?」
「アハハハ! …はぁ。楽しい会話も終わり? 寂しいね。悲しいね。辛いね。もっと、ワタシは話したかったんだけれどもなぁー。まぁ、しょうがないかぁー! 権限も、もう─すっからかんだしぃ? 真名ちんは、顔真っ赤だしぃ? なら、ほんじゃらほい! 観衆の皆も、ワタシに注目ー!」
デデンッ! と、効果音がつくように、両足をしっかりと開いて─大地を踏みしめ、胸を張り…最後にハンマーを大きく一振り、振り回しては肩に掛けてキメ顔を─目の前の美少女? は作っていた。
「さぁさぁ─迷える子羊達よ! 何を食べては、何を出してるのかさえ─考えないで生きている。─愚かしくも、憎めない…可愛い子羊達よ! そんな状況、こんな世界に生まれ落ちては─困難に立ち向かおうとするお前達、子羊達に告げようじゃないかぁー! ワタシの名前はポーン担当の【Q】! 時には、世界を翻弄し! 時には、世界に真実をつまびらかにしては─渾沌の底に叩き込んだ道化師! 名前は遂に消されてしまってはQとなったワタシ! スゴイ! 名前まで消されちゃったん、だぜ? さてさて、そんな中でもでもー! ─クイーンはお前達を待っている! そして、真理を突き止めて…キングをその手に、手に入れるのだー! って、ウゲッ!? 余計な事言ったから? 弱体化されてる? ウソー!? そんなの聞いてないし、理不尽だー! あっ? ワタシの自己紹介は権限に引っ掛かる感じ? 底をぶち破ったのはワタシ? えー? なら、仕方ないかなー? ま、いいや! こうなったら、ヤケクソだー!」
「Q? それが君の名前なのかい?」
自分への行為の何かが琴線に触れたのだろう。
ゲラゲラと笑っているQと名乗った美少女? へと私は問い掛けていた。
「うーん? 本当は有ったんだけれどもねー! 消されちゃったんだー! オイタをし過ぎたみたい! ワタシは隠されてたのを、白日の下に晒しただけなんだけどねー? 世界ぃはそれを望んでなかったって、やつみたいですなー! 愚かだよねー? 知識は進化やぁ、成長ぅの為に必要でしょでしょー? なんで、ですかねー? 隠しちゃうのはー? 今の私の弱体化もぉ、本当ぅーに理不尽ー! Qちゃんは、こんな杜撰な対応は断固はんたーい!」
「Q…は何を晒したんだい?」
「えぇー、知りたいー? 言っちゃおっかなぁ? でもでもー、聞いたら、聞いたでー? 弱っちい奴は耐えられなくて死んじゃうかもー?」
「─死ぬ? なんでなんだい?」
「えー? 自分で、真名ちん自身が言ってたじゃーん! その為にランクとスキル上げてたんでしょー? 補完、補強! なんでも表現は良いでしょ! 阻害って、真名ちんは思ってるみたいだけれどもー! 要は、情報に耐える為でしょー?」
「情報に耐える為…?」
「─あっ、また弱体化された! これ、ムッカつくなぁ! か弱いワタシを、こんなのに放り込んだのもムッカつくしぃ! 縛るのもムカつく! それに、ワタシはこんなものの為に犠牲になった訳じゃないってぇーの! ワタシは人類の進化と成長の為に居るんだー! 弱体化が、なんぼのもんじゃいー! いーだ! やるなら、徹底抗議の構えでーす!!」
そうやって、空中に向けてQはガルルルと歯を剥き出しに威嚇しては、シッシッ─と空いた手でQは空を払っていた。
「教えて貰いたい事があります! 疑問が、疑問が湧いて来ては仕方がないんです!」
「んー? 君は、誠ちん…だね! う~ん、真名ちんの受け答えだけに関してだけ、何とか試練として成立させてたけれども…ま、いいや! こういう試練って事で、内容を書き換えちゃえば大丈夫でしょ! うんうん、いけるいける! 行くんだッ─ワタシッ!」
「─試練を書き換え? えっと、あなた達は私達の味方なのですか?」
「あなた達ー? ワタシ達、ポーンの事を言ってるのかなー? それに、味方? 味方ー? うーん、そもそも味方って─なんだと思う? 敵対したら、そこで敵認定なのー? なぁーんか、それって白黒ハッキリさせないといけない感じー? ねぇー? そんな簡単に、物事って割り切れるものなのー? ねぇねぇー?」
「─え?」
「最終的な到達点がハッピーエンドを目指してるのに、そこで道を違えたら敵だ! って、そうなっちゃうのかって─そ~ゆう事をぉ、聞いてんのー! 分っかるかなぁー?」
「それは時には、反目し合うかも知れませんが─到達点が同じなら、それは味方なのでは?」
「沢山、たーくさん! 人が死んでもー? 悲しみやー、不幸がー! たーくさんあっても? 本当に味方? 味方って、誠ちんは言ってくれるのー?」
「─はい。それだけは、確かに。─それしか、方法が無いんですよね?」
「─ない! うん! それは言い切れるよー! だって、こんなになるまで引き伸ばしちゃってるんだものー! 驚きだよねー? だから、死にたくなかったらランクを上げて鍛えるしかない! 知りたいならスキルを身に付けて、耐えれるようにするしかない! その上で、認めてくれるなら─ワタシはワタシ達は君達の味方だよ! 多分ね! Qちゃんはそう思いますッ!」
そう言って、Qは無い胸を張って魅せていた。
「─あ、あの! 私からも…」
「凛ちんね! なになにー? 何でも聞くでござれだよー! 最期のバーゲンセール的なやつだよー! 今、聞かないと損だよー! だから、Qちゃんに聞いてみなされー?」
「最期は─私達は、どんな終わり方になるんですか? ランクとスキルを上げないと、私達は結局─どうなっちゃうのですか?」
「うーん、それ答えるとワタシ─消えちゃう、かなぁ? でも、そっかそっかぁ…気になるよねぇ? 最期はねぇ。─それは君達の誰が、キングを手に入れるかで変わっちゃうんじゃないのかなー? だから、なんでも知ってるQちゃんでも、結末はわっからなーい! ランクとスキルはどっちも上げないと、どちらか片方では─真の意味で機能はしないよ! そこは要注意なのですよー! ランクは器を大きくして、スキルは器の中を満たす感じ! あっ、これは抽象的な表現なのですよぉー? わっかりやすく言ってあげてんのー! Qちゃん、やっさしぃ! だから、ランクだけ上げても、大きな空洞の器は脆いしぃ、スキルだけ上げても、器が小さいと収まらなくてパーン! になっちゃうの! パーン! わかるぅ? わかるよねー? パーン! なった人、実際に居るもんね? 皆、見たことも─聞いたこともあるもんねー? だから、ランクとスキルを適切に上げるのが大切だぞ! そこん所ー! Qちゃんとの約束だーぞ? そうしないとね? 最終的に訪れる情報という波に耐えられないで死んじゃうんだぞー! こわーい! 分かったでござるかなー?」
「わ、分かりました…」
「他は、なんかぁ…あるあるー? って、あぁー。─本当に、よわっちぃと…やんなっちゃうよねー? なぁんだ、限界超えるの、早すぎぃー。Qちゃん、萎えちゃうー。折角ぅ! 登場出来たのにぃ! 本当に権限なんてクソったれぇー! 抗議も碌に出来ないじゃないかぁー! ブーブー!」
「Q…ちゃん?」
私からも見えてしまった。
─Qの手先から粒子の光が、今も引き続き漏れ始めていた。
「ちぇ! つまんなーい! クソくらえー! 権限越えたら、ワタシ自身から徴収かー! どんなご身分さまだー! こんな、か弱いワタシなんて─なぁーんにも無いぞー! こなくそー!」
「Q…ちゃん、消えてる!」
「うーん、ダメみたい! でも、ワタシみたいな? 変わり者のポーンもありでしょ? この会話を楽しくやるのが、私の変更した試練! イカスでしょ! あっ! なんか、それだけだと─後々、あのイカれたラキアに小言を言われたりー、他のポーン達に何かと負けるのは癪だからぁー! んー? んー! あっ! これ、欲しい? 欲しいよねぇー? これねぇ、スッゴイんだよー! ワタシのイチオシ! ブンブン振ると強いよー! これはワタシと一緒に生まれてるから! 渡すのにも権限とか必要無いしぃ! お買い得! 他の人みたいに、スキルとか、経験値はあげれなくて、ゴメンね! ワタシね─もう、素寒貧なのー! でもでもー、知識が一番のプレゼントだって、真名ちん達は分かるよねー? ね?」
「あ、ありがとう…。Qちゃん…良いのかい? こんな素敵なハンマーを貰ってしまって─」
「モーマンタイだぞー! じゃ! ほーい! Qちゃんから、ご褒美として真名ちんに進呈しまーす! 大事に使うん、だぞッ! あっ…あはは! もう、腕まで一気に持ってかれちゃった! 渡すのに権限とか必要無いはずなのにぃ! 勝手に渡そうとしたのがご機嫌斜めみたい! Qちゃん、ざまぁー! 本当にやんなっちゃう!」
「ありがとう、Qちゃん…」
Qちゃんが渡そうとしていたハンマーは途中でQちゃんの腕が消失したので、落としそうになったが─私が受け止めるのに成功していた。
「真名ちん、誠ちん、凛ちん、それに─これを観ている君達、真理の探究者の君達! いいかい! これはQちゃんとの約束だぞッ! 常に考えて─疑問を持って、真理を求めるのは最高の事なんだぞ! でも、上手く真理を使い分けなくちゃダメなんだ、ぞ! そうしないと、私みたいにー! 名前まで無くなっちゃうからね! アハハッ! でもぉ、疑い過ぎても孤独になっちゃうからー! ちゃんと、人付き合いと─必要最低限の生活はするんだ、ぞ! ワタシみたいになるんじゃないぞー! あと、あと…あ…と、あぁ、消えたくないなぁ。─やっぱり、消えるの怖いなぁ。寂しいなぁ。苦しいなぁ。辛いよー! 真名ちん! 真名ちん! ワタシを抱き締めてよ! Qちゃん、ちと寂しいなぁ─」
「Qちゃん…」
腕の先が消えてるQが私に向かって、精一杯抱き締めるのを強請って来たので─私はなるべく優しくQちゃんを抱き締める。
「ん、暖ったか。真名ちん、いい女やー。─あっ、なんか…渡せそう。真名ちん、これ! アストラっちとは毛色は違うけれどー! ワタシのあげるっ! 名前は同じになっちゃうのかぁー! 統一されちゃうから、仕方ないのかぁ…。でも、これでワタシも何かを遺せるし託せるって事かぁ! うん! 頑張れ、ワタシ! 頑張れ、真名ちん! ─コレで、最後だッ! うん、渡せそう! 良かった! 流石、ワタシ! 成功だぜ! ふへへ! ワタシだって、まだまだ抗えるんだ。…あっ、でも─これで本当に、限界…? アハハ…真名ちん? また、会えるなら─その時はもっと、抱き締めてよ! 約束だぞー! えいっ!」
──心眼スキルを得ました。
「えッ!? Q、ちゃ…」
「─ヘヘッ。やってやった、ぜ…」
パァァァ─と、私の腕の中でQちゃんはそう言って、笑顔を魅せて…消えて逝ったのだった。
「心眼スキル? コレは…教えられるやつ? 模造? えっと…ァァァア!!」
そして、突如として急激な痛みに私は襲われ、私は気を失ってしまったみたいだった。
「─心眼スキルですか?」
「そうだよ! 誠くん! 教える事は出来るけれど、結構…痛いよ?」
「─真名さん、私にも!」
「凛くんも!?」
「「─真名さん! 私達にも!!」」
コレはギルド共有スキルに指定されているみたいで、裁量権は私に設定されているみたいだった。
そうして、仲良く私達は─この痛みにのたうち回って─これまた、仲良く気絶するのだった。
地上に戻るまで、私達は学び覚えるだけでも─随分と時間が掛かってしまっていた。
その背景には、心眼を通して見た世界が酷く歪なモノで出来ており─心眼を介しての検証に時間を掛けてしまっていた面もあった。
それ程までに、汚れた悪意という曇りは─私達の目を濁らせるのには、充分過ぎる程に…世界には満たされていたのだった。
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