ALICE.68─樋口真名【真理の探究者】
「─ああ、ああ! 深く、深く考えられるッ! 凛くん! 凛くんは…どうだい!? 誠くんは!? 疑問が…疑問が沢山、湧いてくるんだ! そして、私達の間には情報という─意思疎通の曖昧さが無い! 格別と言える位の周囲との差が─今、ここにあるんだ! 分かるかい!? 真理が、真理が直ぐ…そこにッ!」
「─真名さん、落ち着いて下さい。ちょっと、メンバー達が引いてますよ? いえ、引いてますよね? あなた達…」
「誠さん、ダメです。皆さんも、真名さんの話を聞いて、考察を─既に、始めてしまっています」
「凛さん…まだ、無事なようなのは─君と僕だけのようだ。いや、僕も正直、考察を始めたい。なんだ、この感覚は…? 思考が阻害されている感じがしない? いや、阻害? 阻害って、何だ? 思考がクリアだ…。─ああ、考察したい…セーフゾーンを探さないと─」
「ええ、私も探さないと…」
そして、竜胆誠と林凛─二人もやはり、同じ穴の狢と言えるのだろう。
既に、触発されてしまっていたのだ。
二人は直ぐ様にも、周りと同化するように考察したいが為の行動を─早速、取り始めてしまっていた。
【真理の探究者】
考察厨が集っては出来たギルド。
─リーダーの樋口真名。
─サブリーダーの竜胆誠。
メンバーで一番小間使いを…何故か自然としてしまっている林凛。
─何よりも重要なのは考察。
生活より考察─考察の為の思考の拡大、その崇高な願いの為に…ランクとスキルの獲得へと、邁進している狂った集団。
─それが今現在の彼ら、彼女らの姿だった。
「─あっ、有りました! 有りましたよ! 誠さん」
「でかした、凛さん! 皆さん! ほら! こっちにセーフゾーンですよ! 早く! 早く、動いて! 動けってッ!」
「誠さん…」
まぁ、このギルドの中で一番の気苦労を負担しているのは…誰が何と言おうとも、このサブリーダーの誠だろう。
考察厨達は何者よりも、誰よりも、如何にもな…生活破綻者が集った集団だ。
─食うより、考える。
─風呂より、考える。
考える為に、彼らは色んな物を削ぎ過ぎていた。
但し、彼らにも削ぐとは別のベクトルで─追加されたものがあった。
それこそが経験値稼ぎであり、彼らは思考の拡大の為にも─ランクとスキルの双方を上げることへと魅了されてしまっていた。
戦う考察厨─いや、戦う生活破綻者集団…まぁ、一言で言えば─歴とした、ろくでなし集団だった。
「─いや! いやだ! 止めてくれ! このままが良いんだ! 頼む! 頼むよ!! 今、今! 閃きそうなんだ! 君は私を移動させた事で、閃きが無くなってしまったら─責任を取ってくれるというのかい!? あぁー、引っ張らないでくれたまえ! 頼むよ、誠くん! 誠くん!? 聞こえているのかい!? ああああぁ─!!」
「…誠さん、そこ。真名さんの胸ですけど─」
「─凛さん、そんな事を…この女は気にしません! むしろ、早く─どこでも良いから、押さえられたら…運ばないといけません! こうしている間にも、真名さんや他の人達の叫び声に触発されて─トランプ兵も来ます! ─って、ああああ!! あいつら、また来やがった! クソッ! 凛さん、ここは任せましたよ! 僕が行ってきますので!!」
「え? え? えぇ!?」
「トランプ兵かい!? 経験値じゃないか!! 更に、更に─思考が鮮明になると言う事じゃないか!」
「「─トランプ兵!!」」
「…あ、無理だこれ」
私から見ても、誠さんの背後から─経験値というトランプ兵達が殺到して来ているように見えてしまっている。
真理の探究者のギルドメンバーは揃いも揃って、思考をよりクリアにする為─貪欲に経験値を求めている。
トランプ兵は彼らの糧であり、つまり─御馳走だ。
彼らにとって、それは鴨で有り…今も見境も無く襲い掛かいに行っている。
これだと果たして、どちらが襲い掛かって来ては─迎え討っているのかが分からなくなってしまうのでは?
…と、考えている暇は─私には無さそうだ。
既に、先頭に躍り出たマスターの真名さんが接敵しては─一体を打ち滅ぼしている。
「ああ…! 私の取り分が無くなっちゃう! 無くなっちゃうッ─!」
そして、その様な発想をしてしまう私は─歴とした真理の探究者のメンバーの一員ということだろう。
経験値の損得に気付いた時点で─私は駆け出し始めていた。
そして、新たに私の正面に現れてくれたトランプ兵を─一刀の下に斬り捨てていた。
「経験値! 経験値!! お祭りだぁぁぁ─!!」
真名さんの声が高らかに、葛西臨海公園のALICEの穴─四層に響き渡る。
葛西臨海公園の四層には、私達以外の人は見たことがない。
─いや、本当の所はどうだろう?
私達が見えていないだけで、相手が居り─私達を見ては逃げてしまっている可能性もない訳では、無いのかも知れない。
─ただ、まぁ…逃げ出してしまいそうにはなるだろう。
私達は端から見たら、それはもう見事な知識の獣に成り下がっているように見えるだろう。
獣という私達は知識を更に求めては、その為に周囲のトランプ兵達を食らい尽くしているのだ。
悍ましくも見える事だろう。
─それにしても、獣が知識を求めるとは笑える話だ。
だけども、初めて─物事を自分の尺度で考えられるようになって、気が付いた気がする。
この知的欲求が満たされていっては、速やかに疑問が湧いては枯渇していく─まるで、生きているかのような…この感覚は、本当に中毒になってしまいそうだ。
でも、何で今までは…何も考えられなかったのだろう?
まるで霧が晴れたかのように、今現在の─私達の心は晴れやかだ。
疑問を疑問として持てることが純粋に幸福であって、何よりも満たされては─嬉しい。
─この気持ちを止める術を、私達は持ち得なかった。
だからだろうか?
私達は満たされない知識を求め欲しては─赴くままに駆け続けて、駆け続けた先の果てに…ここ、葛西臨海公園のALICEの穴─四層まで辿り着いてしまっていた。
「─皆! 聞いて欲しい! 私達は、この葛西臨海公園のALICEの穴─四層でのトランプ兵達を狩り尽くし、可能な限りの経験値は得られたと見るべきだと─私は思う! そして、次に私達のやるべき事は確証を得る事じゃないだろうか!? これは、もう…抑えられない、私達の知識欲の結実の結果の願いとも─私は言えると思っている! その為にも、残っているポーンは今現在、ここ葛西臨海公園を入れても─残り二つになってしまっている! 私達が接触して、今まで考え抜いてきた考察を実証─いや、検証出来る機会がもう…それしか無いと実質言えようじゃないか! これは、そう─大変由々しき事態であると私は思う! だからこそ─そう、私達はだから! だから─!! 今こそ! この時こそ! 行かなければ行けないんじゃないだろうか!? 私達の抱き持っている─留め処無く溢れて来ては、今も欲している知識の果て…その先の真実を知り得る為にも、皆─心の準備は出来ているかい!?」
「「「─おおおおお!!!!」」」
私は、私達は…真名の言葉を聞いて、自然と叫んでいた。
─先程までのトランプ兵?
もう、四層のトランプ兵達は─暫く出て来ないだろう。
私達が次のトランプ兵達が来るまでの時間内には、全て目につくトランプ兵達は狩り尽くしてしまっていたのだから─計算上でも、どう考えてもトランプ兵達は暫くは出て来れないだろう。
そうして私の見つけたセーフゾーンで、皆─初めてでは決して無いだろうに、初めてといった様相で、身支度とご飯を済ませていく。
そう、初めてでは無いのだが…寝る間を惜しんでは考察する事が、生きる為には息をするのと同じように─まるで、当たり前と思っている私達が…規則正しいと言う、非現実的な行いをしっかりと行い─各自、睡眠をとっていた。
それにはやはり相応の理由があり、私達は翌日のお昼前には─例の庭園へと降りると表現して良いのだろうか?
その為にも、葛西臨海公園のALICEの穴─四層の大扉の前に私達は立っていたのだった。
そう、相応の理由とは一つだ。
─真実を、真理を…確かめに、行くのだ。
私達はポーンと呼ばれる担当へと会いに、今─現時点をもって、行こうとしていたのだった。
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