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【ALICE】─全てが経験値で賄われる世界に落ちた世界。  作者: 御伽ノRe:アル


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ALICE.67─新たな狩り場。

「…少し、違うか? こう─か?」


シュッ─バッ!


俺はとりあえず、あれこれと手探りの中で考えつつ─手元の双剣を振るっては、軌道の修正と思考を重ねていく。


「─抜刀術、これは…難しいな」


だが、使えたとしたら凄く便利な事は─既に、この身で味わっている。


今も目を閉じれば、あの時の戦闘での抜刀術の有用さが記憶に浮かんで来る。




─今現在、俺達は時間を見付けてはシュピーゲルから教わったスキルを育てている最中だった。


とりあえずの目標という訳でも無いが、ラキアの双剣術にマッチングさせているであろう…シュピーゲルから教えられた糸口の抜刀術を、擬似的だろうが…必要最低限でも再現出来るようになるのを目指し、まずは─スキルを鍛えている所だった。







「─カズキ? 向こうにセーフゾーン、あったよ」


「…ああ。分かった、ありがとう。とりあえず、着き次第─煙草を吸いたいところだな」


「…煙は嫌だから」


「…善処する」


俺達は今現在、ALICEの穴の中に潜っていた。


まぁ、幾つか理由はあるのだが…記憶を遡ると、俺達はあの後ギルド管理庁に戻り次第─時間を忘れてしまうくらい、とは言い過ぎだが…とても深く睡眠を取ってしまっていた。


深く睡眠を取って目覚めた後は、俺達は腹の空腹に誘われるように─フラフラとギルド管理庁内のギルドルーム持ち専用の食事処に顔を出してしまった。


そしたら、なんてことはない…という、事は無かった。


あれよこれよと─人が集まって来ては少しだけ騒がれたのもあって、今現在は…あの日を境に、ギルド管理庁から自然と距離を置くようになってしまっていた。




まぁ、端的に言うと─人と距離を取るように、井の頭公園のALICEの穴へ来ていると言う訳だ。



戻ろうと思えば、いつだって横穴の機能を使えばギルド管理庁まで直ぐに戻る事も出来る。


ただ、逆にギルド管理庁近くになる皇居外苑のALICEの穴を利用してる探索者に関しては、双方に行ったことが無いと─こちらへと来れないだろうと踏んでの判断だ。


重要なのは横穴は一度来たことがある場所へと─穴が双方に通じる事なのだ。


そういう事情というか、背景もあって─ギルド管理庁からも遠い、且つ─探索者の少ないだろう、この井の頭公園のALICEの穴は…俺の目論み通りと言ってもよいのだろうか?


基本的に都内からも少し離れている面も有るのだろう。


探索者が少ないというか、先程から─見当たる気配や、その機会すら無かった。







「─まぁ、ここに来るメリットも無いからな」


「…メリット?」


「いや、悪い。─独り言だ」


とりあえず、俺はイノリに案内して貰い─セーフゾーンに辿り着く。


早速、落ち着ける場所に─俺は腰を下ろし、胸ポケットをまさぐっては…煙草を自然な動作で取り出す。


─やっとだ。


俺はやっと、待ち焦がれていた─一本目へと火を点けては、美味しく吸うことが出来た。


─はぁ、落ち着く。




「…」


まぁ、だが美味しく吸えてはいるのだが─横からのイノリの圧が中々凄い。


とりあえず、イノリの方に煙が行かないように吐き出してから─俺はイノリの方へと顔を向ける。


「─ああ、いや。悪い、そんなに俺を─見て来こられても困るぞ? 大した事じゃないからな。ただ、人が…探索者が少ない理由、まぁ─端的に言うと、井の頭公園のALICEの穴に…探索者が来ない理由を考えてただけだ」


「─うん。確かに、全然─居ない」


俺が説明を丁寧にすると、やっと納得いったのか─圧が弱まった気がする。


─これは会話しないと拗ねちゃう流れだろう。


俺にだって、そのくらいの機微は分かる。




「まぁ、理由はある程度は分かるんだけどな。ほら、あれだろ? ギルド管理庁の近くとか、皇居外苑に関しては─比較的、アクセスも一番楽だろうしな。人の多さに輪をかけて─ALICEの穴の規模自体が拡がっているし、その影響か…セーフゾーンも今は、色々と豪華仕様にもなっているようだぞ? 要らないドロップした装備類は、簡単に売り買いをギルド管理庁で委託も出来るし、お得感じゃないだろうが…色々と、深層心理的にも─便利な近場へと、人は集まりがちなんだろうな」


「─そう。だから、私達はその深層心理に逆らって─ここに居るって事?」


「─って、言えたら良いんだがな? 正直なところは、ただ人避けと…ボスがまだ、未踏破だからだな。─分かってるだろうに、そう…おちょくるなよ?」


「…ふふ」


─はぁ、全く。


機嫌が良くなったと、安心したら良いのか?


それとも、少しは付き合いやすい関係に深まったと思って…安心するのも有りか?


─だけどなぁ。


結構、今みたいに…割りかし、おちょくってくる感じにイノリはなっちまったと思う。


─いや、別にそれが悪いとかではないのだ。


どちらかと言えば、距離が近くなって嬉しくもある。


─好ましいのだろうか?


…いやいや、その思考回路は行き着くところは─アレなので一旦ストップだ。


とりあえず、俺は煙草を吹かして色々と精神を落ち着かせる事にする。







そう言えば─。


もう一方の葛西臨海公園に関しては、紗奈さん曰く─真理の探究者が探索に邁進しているらしい。


まぁ、らしいというのも正確なソースが無いからとの事だが…そんな情報のリークも井戸端会議的な会話の中からの話らしい。


正確性は確かに薄いように感じるのだが─話していた層が、毎回…色んな物事を言い当ててるという、変わった層の集まりみたいで─その信憑性は比較的高いという話だった。




まぁ、そんな話を聞いた上で…敢えて、ALICEの穴の場所を─重ねて潜るような、愚行な真似はしないのが普通というやつだ。


─それが、賢明な判断だろう。


重なった所で面倒さが増えるのは、容易に想像が付くというやつだ。


─質問攻めに合う光景が、目に浮かんで来る。


…ゾワゾワっと、その光景を想像しただけで─身の毛がよだったが、気のせいだろう。


─気の所為に違いないはずだ。


今の所、井の頭公園のALICEの穴内は─余っ程の事が無い限りは、俺とイノリでの二人きりだろう。


─だから、色々と安全なのだ。


そうでなければ、色々と困るというやつだ。




─まぁ、話は置いておきつつ…。


俺は色々と考え悩み抜いた結果、井の頭公園に来る事にした─と、いう事だ。


確認ついでだからと、改めて─身体の感覚を取り戻すよう意識しつつ、本格的に一層から…しっかりと攻略に取り組んで進めて来ていた。


休むという選択肢は元から、俺の中に存在はしていなかった。


─まぁ、隣りに居るイノリにも多分…無いだろう。


そもそもが、隣のイノリから最下層を目指して欲しいと言われ、俺がそれを了承した結果─今ここに居るのだ。


了承した俺も休む気は毛頭無いのと、イノリ自身も当人の目的の事もあるので─滅多な事が無い限り、休む事は恐らく無いだろう。




─そう言えば、考え事ついでに話が独りでに広がって行ってしまうが…改めて庭園を見回した時、王城に入るのなら登るのでは? と、俺は思ってしまったのだ。


その後、つい口をついては…最下層と言う割には登っていくんだな? と、イノリに言ってしまったのは不覚だったと今でも思う。


言ってしまった手前、それを聞いたイノリは見事にむくれてしまったのだ。


結局、それはニュアンスの問題─と、言われたのを思い出してしまった。


─今にして思っても、げせない。


降りるのに、登るとは…これいかに?


本当に俺がいけないのか?


いや、蒸し返すような真似はしない。


したとしても、不毛な争いと言うよりは─最後は俺が謝るのだと、自然と分かってしまっているからだ。


争う必要が無いのならば、争わないのが賢明な判断のはずだ。







「はぁ…」


─とりあえず、思考が色々と飛んで行ってしまっているので…俺は煙草を最期に深く吸って、吐き出し終えては立ち上がる事にする。




「どうする、カズキ? もう少し、先に行ってみる?」


「─いや、このセーフゾーンは当たりっぽいから。今日は、ここで泊まりたい気分だな。腹も…イノリも空いただろ? 飯にしないか?」


「─確かに、お腹…空いたかも。うん、そうする」


くぅー─と、可愛らしいお腹の虫の音がイノリから鳴っていた。


─まぁ、空腹を自覚したら鳴るものだ。


俺の腹の虫も気付いたら鳴っていた。


─セーフゾーンについても、やはり色々と配慮? されたのか…随分とリニューアルが進んでいた。


最初の頃はただの何もない空間という雰囲気だったが、今や小屋も併設されている位だ。


中は不思議な事で、常に綺麗にされていては─整ってもいる。


もう、ここまで来てしまうと─小屋というよりは、家と言っても過言では無いだろう。







─そう言えば最近、やけに穴倉生活という言葉を耳にする気がする。


いや、聞くと言うよりは掲示板で見掛けるが─正確には、正しいのだろう。


まぁ、要はALICEの穴の中で生活をする人が増えたという話だ。


─理由? まぁ、分からなくも無いと言うよりは─メリットが多いから、どれかには該当するのだろうという感じだ。


メリットというのは、今は既に経験値が生活する上で─全てなのだ。


外へと食べに出掛けなくとも、経験値ショップから食品も購入出来ると来てる。


今なら、なんと─ご意見・ご要望フォームみたいな物も出来ている。


しいて駄目な所を挙げるとすれば、陽射しが無い事位だろうか?


─だが、俺達は知っている。


いや、観戦機能があるのならば─皆、薄っすらとは知ってるだろう。


─庭園空間には空があった。


要は、陽射しもあったのだ。


地下生活と謳っているようだが、いつかはその概念が崩れるのでは無いかと─俺は思って仕方なかったりする。




まぁ、後は俗物的な視点で言うとならば─。


特に、俺の場合は─路地裏の一角のハリボテに住んでいた身からするとだ、目の前の小綺麗な小屋なんて─あの頃の俺の住処と比べるとグレードが雲泥の差なのだ。


─まぁ、分かるだろ?


小屋の方がグレードが高過ぎるって事だ。


露頭に迷いそうな者ほど、潜っている傾向が強いのかも知れない。


それは単純に欲とかでは無く、生きる為にだろう。




「なに、食べる?」


「んー、そうだな…」


まぁ、とりあえずは飯だ。


先程も言ったように経験値ショップのグルメの幅は凄いことになっている。


俺達は思い思いに好きなのを食べては、設備として導入されていたお風呂を済ませ─そのまま、眠りに就く事にするのだった。







そう言えば、いつの間にか─小屋のドアにはロック機能というものまで搭載されていた。


─壊そうと思えば、壊せるのだろうか?


まぁ、そんな事言ったら…今や、外も─地上も似たようなものか。


─心理的な面が大きいのだろうな。


小屋もロックを掛ければ、それなりに安全に感じてしまうものだ。


まぁ、ここでいう安全というのは、人からの脅威に関してだが。


まさか、地下では共通の敵はトランプ兵だけだと認識するものかと思われたが─それは虫が良すぎたらしい。


─人というのは、根本的には汚いものなのだ。


少し前までは、軽犯罪から重犯罪も横行していたらしい。


特に女性1人は危険だ。


ペアだとしても危険だろう。


それなりにランクが高く、戦い慣れているのなら別なんだろうが。


とりあえず、どう危険で─どんな犯罪だったかは、安易に口にするものでもないだろう。


ただ、同じ人としては虫酸が走る程度の事だ。




とりあえず、厳重な小屋も現れたという事だ。


今はそれだけを覚えて入ればよいだろう。


人の汚さ等は底が知れないからな。


そこら辺は色々と鑑みては対応─いや、所詮は配慮というのがされたのだろう。


俺からしたら、もう少し予見されるのならば対処して貰いたいとも思えたが─未だに更新待ちが多かったり等が散見されてるので、単純にキャパオーバー気味なのだろう。




─段々と眠気を感じて来ている気がするな。


とりあえず、俺はこの下層で待ち構えているであろうポーンの事も考えつつ─イノリを隣にしては、深い眠りへと落ちていくのだった。

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