ALICE.66─八重森紗奈【公安局刑事課一係】
「八重森紗奈─及び、泉誠一郎…失礼致します!」
今現在─私達がオフィスで内勤していた所、局長からの呼び出しが有り…私達は局長室へと赴いていた。
「─ご苦労。とりあえず、ポーンの撃破を労おう」
「─いえ。私達の力だけではなく、民間人の協力も有りましたので」
「カズキくんと、イノリくんの事だね。確かに、彼らには注意をするように言っていたとは思うが─まさか、接触し…よもや、ポーン打倒まで成すとは─思いもよらなかったよ」
「…えっと、不味い状況─なのでしょうか?」
「─ふっ。そんな事は無いさ。お上の方も、近頃はむしろ忌避しているのか…安易にこちらへと接触して来ない位だ。どうやら、政府は─この一連の事件や騒動を、完全にALICEへと投げる事にしたようだな」
「それはまた…」
「─局長、横からすみません。それは政府としては許されるような姿なのでしょうか? 渡会護の記憶と感情から、政府の下した─最後の指令とやらを私は見ました。…政府はそれさえも、無かった事にしようとしているのですか?」
「誠一郎くん…」
「…すまないな。─それが政府、ひいてはALICEの下した決断というやつだ」
「ALICE…」
「誠一郎くん。─紗奈くんも。…ALICEの批判はよしたまえ。そして、同じくらいに気をつけたまえ?」
「─局長。それは、どういう…」
「言葉のままの意味だと受け取って貰って結構だ。この会話も、きっと─把握されている。だから、気をつけたまえと言ったのだよ。…それだけに過ぎない。特に、おかしな事は言っては─いないだろう?」
「局長、あなたっていう人は…」
「─誠一郎くんも落ち着きたまえ。気持ちは、甚く分かってはいる」
「…はい」
「二人には─新たに指示を下そうと思い、ここへ呼んだのだよ。出来れば暫くの間、叶くんのランクアップを手伝ってあげてくれないか? 最終目標はランク30、及び─スキルもそれなりに取れることを目標に設定しようではないか。今の君達ならば…出来るだろう?」
「─は、はい!」
「…分かりました」
私達の言葉を聞いて、局長は満足したように頷いていた。
「…それで、話しは少し変わりますが─局長のランクアップはどうなのですか?」
「…紗奈さん。それは多分、大丈夫ですよ」
「─えっ? 何故?」
「掲示板を見ていないのですか? 最近、話題になっていましたよ。…ALICEの穴の各所で、ハンマーを片手に振り回し─暴れ回っては、無双しているという…局長に似た方が居るというのが。─ほら、このスレとかもですね」
「…局長?」
「…息抜きみたいなものだよ」
「はぁ…」
「─なるほど、合点が行きました。だから、局長は疑問を持ててるのですね」
「…さて、何のことかな? とりあえず、叶くんの件は任せたよ」
「分かりました」
「─では、頑張ってくれたまえ。私も色々と、調整に動くとしよう」
「─局長も、お気をつけて」
「…ああ、君達もね」
「「─失礼致しました!」」
そして、私と誠一郎くんは局長室を退室して、自分達のオフィスへと戻って行くのだった。
「─あっ! 帰ってきましたね! どうでした? 何か指示が有りましたか?」
「…叶ちゃん。私達二人が、貴女を─鍛える事になったわ」
「…うえ!? 紗奈ちゃん? それ、本当? 本当に本気? だって、私─情報畑のか弱い女の子だよ?」
「それでも、よ。─絶対に、貴女の為になるから! 今の叶ちゃんのランクは? スキル数は?」
「…え? えー?! な、なんか…スリーサイズ教えるみたいで、恥ずかしいんですけど!? 本気です? 本当? 本当なんです、ね…」
そう言って、私の目の前で叶ちゃんはしおしおと─しおれていってしまう。
「本当に大丈夫だから…ね? 安心して…ほら、叶ちゃん?」
「─し、信じて良いんですかぁ…? 本当に? 本当?」
「─ええ。これから、叶ちゃんのランクとスキル数を聞いて─どうやって、ランク30へするのか。それと同じく、スキル数を詰め込むのか─考えるわ。ランクとスキルの関係については、私たちもレクチャーを受けているから大丈夫…安心して、全部私達に─任せてみて?」
「─いえいえ!? 紗奈ちゃん!? ねぇ、紗奈ちゃん…? 私、生まれて…この方。─運動なんて、禄にしたことも無いのですが!? ちょ、ちょっと、紗奈ちゃん! やっぱり、私─て、聞いてない!? 誠一郎さん! 助け、て…って、誠一郎さんもそっち側なの─!?」
「─ええ。堪忍してしてください」
「あ─あ、あばばばば…」
…そうして、何とか私は抵抗を試みる叶ちゃんの全てを剥ぎ取って、その全部を丸裸にする事に成功していた。
「─ランクは12。スキル数は…全く、無いわね」
「シクシク…も、もう─お嫁にいけません」
「…叶さん」
「─大丈夫よ、誠一郎くん。叶ちゃんは、我慢強い子よ。…タブン」
「…」
何とも言えない目で叶ちゃんが私を見てきていたけれど─スススと、視線を横にズラす事でやり過ごす事が出来た。
後で気付いた事だが、ギルドの機能を利用して把握する事も考えたが─結局はそれでも、個人の方での公開設定を変える必要があったのだ。
だから、これは止むを得ない尊き犠牲だったのだ。
いや、私は叶ちゃんから…何も、奪ってはいないのだけれども。
叶ちゃんの避難する目が、私をそういう思考に掻き立てているだけなのだ。
─そうに違いないのだった。
「─紗奈さん。とりあえずは、アレ─ですね。あの、地獄の特訓キャンプを…再び、ですよね?」
「─ああ。カズキさんと、イノリさん達とでやった…アレの事ね。─そうよね? それが一番よね? レポートとか、まだ残ってはいるけれども…まとめるのは後ででも、大丈夫よね? だって、局長指示だものね。─先に、叶ちゃんの対応の方が急務よね?」
「─ええ、間違いなく」
「…わ、私、どうなっちゃうのですか!? わ、私、情報専門の情報畑なのに、武器とか─ちゃんと振れるかも、分からないのですよ…?」
「…大丈夫よ、叶ちゃん。─ちゃんと、手取り足取り教えてあげるから」
「─心構えも私に任せてください。…補佐の極意、みっちりと─その身に、叩き込んで差し上げましょう」
「…あ、あ─あ…。あばばばば─」
私達はニッコリしながら、小さく震える叶ちゃんをエスコートして─早速、懐かしの皇居外苑へと向かうのだった。
─それから、三森叶の生死を賭けた地獄のキャンプは決行され、終わる頃には無事にランク30と…それなりのスキル数を詰め込む事に成功し、そこには…見違えた三森叶が、確かに─そこに、存在していのだった。
「─あばば…」
─いや、嘘だ。
人はそう安々とは変わらないし、変えられない。
常に、気絶と生死を賭けた戦いの果て─ランクとスキルは幾分か得られたが、魂が抜け切った三森叶が…そこに、居るのだった。
御一読頂き、誠に有難う御座います。
宜しければ応援、ブックマーク頂けると嬉しいです。
応援は下の☆☆☆☆☆になります。




