ALICE.64─ポーン担当【ルシア】
「─よし。皆、行こうか」
「了解ッスよ! 準備は出来てるッス!」
「ええ、行きましょう。私達の未来の為にも」
─俺は大扉に手を掛け、押してみる。
すると、大扉は予想に反し─軽い力でも反応したかのように、独りでに開いていく。
そして俺達は、ギィィィ─ッと開かれた、大扉の先に拡がる真っ暗な闇の中へと─身体を潜り込ませていった。
俺達が全員入ったのを確認したのか、情報通りに白く濃い霧が真っ暗な闇の中を─どこからともなく溢れて来ては、俺達を包み込んでいく。
長く、その状態が続くかと思われたが…やはり、そこも情報通りに…バタン─ッと扉が閉まっていく音がした後に、白く濃い霧が晴れていき視界が良くなっていった。
晴れた視界の正面には、広大な庭園と奥には王城。
そして、背後には森林がいつの間にか現れていた。
「─抜けたッスね」
「これが、庭園ですか…」
「水晶は二つだな─」
庭園へ向かう大扉には二つの水晶が嵌め込まれており、俺達の視界の前に─その威容を誇るように聳え立っていた。
そして、俺達が近付いていくと─情報通りに嵌め込まれていた水晶の一つが、光り輝き始める。
「これはッ─! 予想以上に─眩しいッスね!」
すぐ傍から、哲男の声が聞こえてくる。
哲男の言う通りで、水晶の眩しさは俺達の予想していた以上で─今にでも、視界が眩しさで塞がれそうに…俺達はなってしまう。
そして、水晶が一際輝いた瞬間─ビキッというヒビ割れた音が聞こえると共に、水晶が俺達の目の前で砕け散っていったのだった。
水晶が砕け散った後─俺達の目の前に、歪んだ空間が現れた。
そして、その歪んだ空間から─一人の女性が出て来る。
その女性を視界に捉えた瞬間─俺の思考は一瞬にして、だいぶ思考が停止してしまっていたらしい。
そう俺自身が結論付けたのは、目の前の女性が言葉を発する─その時まで、俺は身動きを一切取る事も出来ず…思考さえもままならない状態になってしまっていたからだった。
その理由は至って単純で、俺は目の前に現われた女性を一目見た瞬間から─目を、そして…何よりも心を、奪われていたからに過ぎなかった。
「…ん。─動ける、ようだね」
パタパタと軽く手を握ったり…振るったり、又は端正な…その顔を確認するようにペタペタと、自身で自分の顔に触れては─その感触や身体の具合を、目の前の女性は確認しているようだった。
そんな女性の姿を俺は惚けるように見てしまっていた。
目の前の女性の姿は着飾っている男装の麗人の如く美しく─腰に何かを下げるのだろうか?
腰にあるベルト部分も、併せて確認していっている。
「─うん、大丈夫みたいだね。…すまない。待たせてしまったかな?」
その上、その声は凛としていて─心弾むように心地良く、より一層─彼女の魅力に磨きが掛かっては、更に…美しくなっていた。
「い、いや! そんな事は…ない。─だ、大丈夫だ」
「─うん? どうしたのかな? 何か変な所が…私にあるのかな? パッと、見た感じだと─違和感は無いとは思うのだけれども…」
「…み、見惚れていただけだ!」
つい、馬鹿正直に答えてしまっていた。
いや、俺はバカなのか?
…アホなのか?
─どうした、俺?
どうやら、俺はこの場に来てポンコツになってしまったようだと─自身でも決定的に思い至ってしまった。
一目惚れとか聞いたことがあったが、それは都市伝説みたいなものだと俺は思っていた。
その都市伝説が今、目の前に起こっているのだから、人生─本当に何が起こるか分からないと、俺は漠然と思い始めていた。
─だが、何故今なんだ?
いや、彼女は美しい。
今この時以上に、惚れるような瞬間などは無いだろう。
いや、彼女には何度だって惚れてしまうだろう。
彼女に限っては常に、この時以上が継続してしまうだろう。
─いや、落ち着くんだ俺。
「─え? …プッ、なんだいそれは? 私に対して言ってるのかな?」
「─そ、そうだ! もっと、こう…違う感じなのが、いや─現れると俺は、か…考えていたから! 今、俺は…いや、俺達はきっと混乱しているはずだ!」
「翔平さん…?」
「陽太さん…これって─一目惚れってやつッスか?」
「「翔平さん…マジですか─」」
いや、俺の後ろから─ギルドメンバーの何とも言えない声と感情が届いて来てるように思えるが、今の俺は鋼の精神で…その声や感情を受け止める事しか出来なかった。
─いや、単純に恥ずかしい感情がほぼ100%だった。
─頼む! お前達、俺の事を察してくれ。
「と、とりあえず─俺は少し、いや…普通に驚いただけだ。どんな人が出てくるか分からなかったからな」
何とか、誤魔化すように言葉が咄嗟について出たが─ギルドメンバーに対しては余り誤魔化しは効いていなさそうだった。
でも、それは良いだろう。
彼女の思考を逸らす事が出来たのだから。
─あのままだったら、俺が恥ずかしくて…どうにかなりそうだったとは、決して言えない。
「そうか、確かにそれもそうだね…。あー、最初はラキア君だったのか。─それにシュピおじさんに、バルトさんは堅物だものね。…アストラちゃんは、あー、あの子に気に入られるって─凄い子も居たもんだね。あの子は気に入った子には、全部を捧げようとしちゃうから…本当に相性が凄く良かったんだろうね。─シックスの方も…あれ? 本当に懐かしい姿というか、感じになっちゃってるみたいだね? 確かに、不思議だね? 相性の良さで、まるで…選ばれているみたいだ」
「─な、なら…俺と、貴女も相性が良いと?」
「それは…えっと、ど─どうなんだろう、ね? 私には測りかねない事かな? 君の、君達を形作るであろう想いはどういうものなのかな? 人は、その器に熱い魂を入れて─この世界で生きては、その魂を燃やしているんだ。─その熱い魂の形を、私は知りたいかな?」
「それなら昨日─しっかりと俺は見出した。俺の、俺達の想いは…理不尽への抵抗だ」
「…なるほど。─理不尽、理不尽…ね。それは沢山、普通に生きている中でも─当たり前にある事だろうね。そんな中でも、君達の言う所の理不尽というのは─どんな理不尽になるのかな?」
「─不当な、理不尽の事だ。人は皆、平等を謳っていても─そこには確かな優劣が存在してしまっている。そして、そんな優劣は─同じカテゴリーのコミュニティ内でも、大きく差が開いているのが現状なんだ。─そして、残念な事に外側から見れば─そんな大きな差の開いている優劣も、同じカテゴリーとして扱われては平等だと処理されてしまっているんだ。─俺は、そんな隠されてしまっている中での、劣悪な環境下に置かれているのにも関わらず─平等というラッピングで処理されている、不当な扱いの理不尽が許せない。─その為の、理不尽への抵抗だ」
「─そうか、それは…結構な事だね。─なるほど、例えるならば─舞台とはスポットライトを浴びている部分だけで、勿論…出来ている訳じゃない。それを彩る為のライトを操る者も、舞台の裏方も─そして、そんな舞台を組み上げる者達も居る。だけれども、スポットライトから遠い人程、その光も─その衆目の目さえも向かないし、観ようとする者は…まず、少ない事だろうね。─基本的に、観客達は舞台という装置を一括りで観てしまっているからね。その中でも、本来…最も大切なのは、観客達の目が向かない実情が有るからこそ─その内側のコミュニティ内では、お互いを認め合う事が必要なんだと私は思っているよ。…そうだね、リスペクトと言い換えてもいい。それが大切なんだと、私は心より思っているよ。けれども、それは理想論というのも私は分かっているつもりさ。─君は、そうか…君の、名前は─翔平は、その理想論の為にも…抵抗をするというのかな?」
「─ああ、その通りだ。…貴女は、凄いな。俺はそんな風に言語化は、到底出来そうにはないよ。ただ、俺という─過去の不当な境遇から駆け出し始めた俺は、時には─俺と同じく不当な扱いで困っている他者へと手を差し伸べ、立ち上がらせては走り続けて─その先の果てに、ここまで来れただけだからな。─その走り続けた果てで、俺の中に未だに有る熱い信念─それこそが理不尽への抵抗だった。─ただ、それだけの事さ」
「それでも、結構な事だと私は思うよ。でもね、抵抗というのは悲しい事に─鎮圧されるというのが世の常なんだ。歴史の1頁にも残らない…そんな、ささやかなものを人は抵抗という。歴史という、多くの人からなる集合体の人生という記憶の中で─ただの一括りとして、埋もれては覆い隠されてしまう。まるで、そこにある信念等は興味が無いというように、ね」
「…」
「─もし、埋もれない為に。覆い隠されない為に─歴史の1頁だとしても、刻み付ける為には。…そこには何が必要か、翔平? 君には、分かるかい?」
「信念を貫き、組織や民衆の意志を一つにまとめる…そんな象徴的な旗頭とかか?」
「─凄いね、翔平は。…そうだね。─うん、その通りだと私も思うよ。…それに旗頭、その表現は良いね。そうだね…しっかりと、組織や民衆の意志を導く為の─旗頭という光が必要だね。そして、悪意を持って見えないよう─覆い隠そうとする観客さえも、観ざるを得ないくらいの強い意志の光が必要だろうね。─翔平? 君の覚悟は決まり始めて─今も、確かに歩んでいるんだね。─その志、私は本当に嬉しく思うよ。確かに、翔平─ひいては、君達と私の相性は良いみたいだね。…うん、私もかつては─この身をもって、不遇な境遇を抗い続けては突き進み─その果てに、ここまで来れた…身だからね」
「…貴女が? 不遇な境遇…?」
「─ああ。話せるとしたら、中々の語り草になると思うよ。けれども、残念。詳しく話してやりたい所だけれども、私には─もう、そこまで権限が残っていないんだ。だから、権限が勿体ない面もあって…話せないかな。─話せなくて、申し訳ないね。それに、こんな私に見惚れたと言ってくれて…ありがとう。─でもね、私は結構…傷物なんだよ。─ふふ。でも、そんな私でも…美しいと、翔平は言ってくれるかな?」
「─ああ。どんな貴女だとしても、俺は何度でも─美しいと言うよ」
「…そっか、ありがとう。─翔平? もし、君達の進む道の果てに─私と再び邂逅する機会があるというのならば、その時は…もっと沢山お話をしようじゃないか。…約束だよ?」
「…ああ! 俺で良ければ、そんな約束一つでも二つでも叶えてやるよ」
「─ありがとう。その、約束と言葉─どうか、忘れないでおくれよ? だから、私を打ち破って欲しい。そして、何よりも…死なないで、ね?」
「…口上を、宣言するのか?」
「─そうなってしまうね。ここから先は、そういう場となってしまうかな。─悲しいけれども、それが今の私と翔平との間で…運命として定まってしまっている現状だからね。─もし、この運命を越えた先で…また出会えるならば、その時は─そうだね、沢山話すのと…追加で私を抱き締めても、いいよ?」
「─そうか。それは、絶対に叶えたい目標が─更に、新しく追加で増えたな」
「…ふふっ」
スチャ─ッ。
どこからともなく、異空間からだろう。
目の前の彼女はレイピアを取り出し、それを帯剣し─姿勢や表情を男装の麗人としてだろう、ピシッと引き締め…そこには改めて、更に─魅力的となった彼女が存在していた。
シャランッ─と、レイピアを彼女は抜いて─そのレイピアを天へと掲げる。
まるで、その場面を切り取っただけでも─彼女の美しさは、俺から見て奇跡という…一枚の絵画のようだった。
「困難に立ち向かおうとする翔平達、そして人類に私は告げる! 私はポーン担当ルシア!! かつて…不遇、不当、腐敗、劣悪な環境の中をただ─信じては導き歩きし者! 同じ志を今、胸に抱きし翔平達─そして人類に告げよう! クイーンは君達を待っている! そして、私が望んでも良いのなら、翔平? 君がキングを手に入れて見せてくれないか!」
「…キング? そして、貴女の名前はルシア?」
「─そう、私の名前はルシア。…傷だらけのルシア。そして、キングとは─話せないんだ。…ゴメンね。そして、私の願望を織り交ぜて宣言してしまったせいで─幾ばくかの私の権限が減ってしまったようだね。けれども、私は甚く君を気に入ったよ─翔平。本当に─どうかこんな私を、現実に受け入れてくれたらと思うと…夢だとしても、嬉しくて幸せな気持ちになってしまうよ」
「─傷だらけ…って、いうのは─どういう事なんだ?」
「…戦えば、分かってしまうよ。─だから、どうか…引かないで貰えたら、嬉しいかな? これは私の人生、その歩いて来た道の証しだから。─その上で、まだ…私を綺麗と言ってくれるのなら、その時は─本当に、嬉しいかな」
「─本当に、戦うしか無いのか?」
「…うん、それは変えられない運命さ。─全力で向かって来ないと、危険だからね? 私はこれでも選ばれた…ポーン担当だからさ」
「勝利条件は…どうなるんだ?」
「…これは権限が、話しても─減らなさそうだね? 配慮されたというのかな? そうだね、私を殺すまで…と、設定されていたけれども、それを上書きして─うん、私の全てを晒すまでにしようかな? その剣、その意志で、私から衣服を奪ってみせてはくれないか? 女だからと言って、手を抜くのは無しだよ? 見えてくる傷も気にしなくて、いい。─戦っていれば、色々と分かってしまうはずだから…ね」
「貴女に刃なんて…」
「─甘えないでくれ! 翔平! 君の歩む道には色んな障害がきっと、この先─数多く立ちはだかるはずだよ。なら、今この時も─君は迷わずに、突き進むべきなんだ。─もし、その決断の果てに後悔があったと言うならば…その時は、より多くを救って行って欲しい。─そう、その果てにいつか…いつか、私を救ってくれたら嬉しいかな。だから、今は死なないで欲しい。─私なんかに、負けたら…駄目だよ?」
「…分かっ、た。─皆、戦闘準備! 目標は─ルシア! 彼女の衣服を全て奪い、そして─彼女の全てを晒すこと! 後悔は…後で、呑み込む! 今はただ、彼女の願いを叶える為にも…俺に続いて、皆─進めぇ!!」
「─ああ。それでいい、それでいいよ─翔平! さぁ、君達の全力を! 翔平! 君の意志を私に魅せてくれ!」
一気に俺達はルシアへと殺到するが、ヒラリとルシアは俺達の攻撃を蝶のように避け、ピシッ─と音を鳴らして、レイピアを突き入れて来ていた。
「─グハッ」
「捉え…切れませんッ─!」
「交代だッ─!」
ルシアの放つ─レイピアの突きの精度は驚くほど正確無比で、何名かは既に後退し─回復を終え次第、前線に復帰しては再度…ルシアへと挑むのを繰り返す様相になっていた。
しかし、何度挑もうともルシアへの攻撃は蝶のように舞っては避けられ─鋭い突きが襲い掛かって来ていた。
だが、ジリ貧になりながらも─こちらは何名も脱落していたが、着実に彼女の服を奪う事に成功していっていた。
「翔平さん! ルシアの動きがクルクル、クルクル─目に追えないッス!」
「─哲男、それでもやるんです! 少しずつですが、確かに衣服は─着実に剥がれて行っています。しかし、アレは…」
「…陽太、分かってる。─それ以上は、言わないでくれ。それでも、ルシアは俺から見たら美しいんだ」
「「─翔平さん…」」
ルシアの剥がれゆく衣服の下には─夥しい数の裂傷が切り刻まれており、痛々しい位にその痕が強調されていた。
肌の変色も随所に見られていたが、唯一─顔だけはその影響を避けられているように見える。
いや、顔以外は傷痕が数え切れない程あると言えていた。
「…男装は傷痕を隠す為…なんす、か─ねッ!」
「…いいや。決してそれは、違う─よッ!」
「─なッ!?」
「確かに傷痕は隠したいと思っていた時期もあった! けれども、この傷痕は私の歩んで─生きてきた証明だ! それと、男装は私の…趣味だッ!」
「グエッ─」
哲男の言葉に反応したのか、俺と陽太─哲男でルシアへと攻めていた所で、ルシアは哲男へと容赦の無い一突きを浴びせていた。
「哲男ッ! 余計な事を言うから! ルシアさん、私も居ますよッ!」
「─ああ、見えているよ! 君達二人が翔平の側近かな? その、残りの一人…君の実力を魅させて貰うよッ!」
「─ええ! この命、この身、翔平さんの為に尽くしますッ! 彼は、私達の光だッ─!!」
「─やるねッ! 良い、気迫だよ! けれど、まだまだッ!」
「早い─ッ! グハッ…」
陽太の一撃を華麗にルシアは避けて、素早く攻撃に翻っては─レイピアの切っ先を陽太の急所に向けて突き放っていた。
「─陽太ッ!」
「…翔平! 余所見はいけない、よッ!」
「─ふッ! 余所見なんてするものかッ! 美しいお前の前では、なッ!」
「─えッ!?」
ルシアの迫り来るレイピアの突きを受け止めては─俺達は鍔迫り合いの状態になる。
─だが、力は俺の方があったのだろう。
ルシアのレイピアを俺は押し返し、ルシアの身体をそのまま無防備に─宙に晒す事に成功していた。
「─すまない、ルシアッ! 今から俺は、お前へと─トドメを刺す! お前の全てを奪い─晒させて貰うッ!! だが、安心してくれ! 大丈夫だ!! お前の全部、一切合切─その責任は全て、俺が…一生背負って行ってやるッ─!!」
「─ッ!?」
ルシアの動きが、何故か完全に宙で止まったように見えた。
俺は一拍を入れ、その手に握る剣を一息に踊らせ─宙に浮かぶルシアの全てを奪ってみせた。
そうして、戦場の中でルシアの全てを奪い晒し終える事を達成した俺は─この戦いの終止符を打てたのだった。
「俺の…勝ち、だな─?」
「…ああ。─その通り、だね。…そ、それで、私を貰ってくれる話は─ほ、本当なのか…な?」
「─ああ。俺で良ければ…ルシアが欲しい」
「─そうか。それは、嬉しい…な?」
「─泣いてる、のか?」
「ポーン担当の…私が? ははっ。翔平は、冗談が…上手い、な。こんな私が、人並みの幸せを…得られる、なんて…」
─確かに、そこには顔以外は傷だらけの天使が泣いて、泣いて…、泣いては─俺の目の前に存在していた。
「はッ─!」
─そうだ!
見惚れてる場合なんかじゃなかった。
俺は慌てて、自分の衣服を脱ぎ去っては─その服をルシアへと被せる。
「あ、ありがとう…」
「いや、ルシアの素肌は─俺以外には見せたくない」
「えっ…う、うん─」
─俺以外に彼女の素肌を見せるなんて、俺の中の矜持が許せなかった。
ルシアは顔を赤くしていたが、俺も似たような物だろう。
一瞬だが、何とも言えない空気が流れてしまったが─御愛嬌だろう。
「─俺の、勝ちだ」
「─うん、翔平の…勝ちだね。きっと、この先の─翔平の道に光が、ううん…君こそが、光だ。だから、その手助けを私が─翔平の為にしてあげよう。─いや、少し違うかな。私は翔平の助けに…なりたいんだ。─翔平、私を見てくれないかな?」
「─ん? ん!?」
チュッ─と、ルシアの柔らかい唇が…俺の唇に触れられる。
「私のあげられる全てを─翔平に、全部あげよう。…私を貰ってくれるんだろう?」
唇には─今も、ルシアの熱が残っている。
そして、同時に俺に新たなスキルが生えて来ていた。
「翔平と一緒に─共に運命という理不尽に抵抗しようとする君達にも、幾らかあげようじゃないか。─ほら、近くに来てくれないか? 早くしないと、私の権限が…尽きてしまうから、ね」
「大丈夫、なの…か?」
「─心配、ありがとう。…心配、はいら、ないよ。ははっ、皆─翔平のお気に入りに、なってる…から─翔平は、随分と無茶を─してる、みたいだから、ね。私も、そんな翔平の、一助になり…たいん、だ─」
「ルシア…」
「─皆、集まっ、てく、れたね。…じゃあ、私の残りを君達に、託そう。…頑張って、ね? 私は─先に、逝って…る、よ…。また、ね…翔平─」
「─ルシアッ!」
パァァァ─と、腕の中の温もりが消えていくのと同時に─キラキラと光の粒子に変わったルシアは、俺達を抱くように…周囲を覆っていき、役目を果たしたのか…次第に消えて逝ってしまった。
「…ルシ、ア─」
「─はっ! 翔平さん! 翔平さん! しっかり、するッス!!」
「哲男! 翔平さんを安静に寝かせてやって下さい! 他の皆は、回復ポーションと…包帯の用意を!」
哲男と、陽太の慌てた声がやけに…遠くに感じる。
─俺は次第に意識が朦朧とし始め、そこで意識が途絶えてしまうのだった。
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