ALICE.60─折崎京也【Amber】
「ほぅ─」
丁度、俺はアストラ戦を観終わって─椅子へと腰深く座っては息をつく。
そして、少しだけ姿勢を崩しては─先程のアストラ戦の内容を冷静に分析していく。
─確かに、大多数での戦闘は有りなんだろうな。
今まで、俺の観てきた分析対象は限られており─ホワイト、公安局、渡会護となっていた。
どれもこれも、全てが少数精鋭で構成されては─渡会護に限っては完全に個人だ。
いくら分析をしようとしても限界を、俺は感じていた。
必要なピースは大多数での戦闘情報だ。
後は、ポーンという担当者の役割みたいな物を掴めたら上々と言ったところか?
その中での、渡りに船と言ってはなんだが─聖女の道標の観戦と来たもんだ。
セーフゾーンで休息を取っていた俺は、脳内が一気に覚醒しては─食い入るように視聴していたと言う訳だ。
「後は有るとしたら、ピースメーカー位か?」
とりあえず、残りの大多数のギルドで…大手となるとピースメーカーが、俺の脳裏によぎる。
大手ギルドが遂に討伐を果たしたと、喜んでいるスレッドも…Aちゃんねる上では垣間見えていた。
俺達Amberも候補に挙がっているのは、光栄な事になるもんなのか?
─全く分からないやつだな。
その前にやるべき事があるだろうとは俺は思ってしまうが、まぁ─別にどうでもいい事だろう。
─所詮は他人事でしかない事だ。
とりあえず今は、そんな事はどうでもいい。
─関係ねぇとも言える。
後は、ホワイトや公安局の事も─今は思考の隅に捨て置いて良いだろう。
あいつらに対しての感情面など、今更の話だ。
問題が有るとするならば、渡会護に関してだろうか。
─俺達は奴に感化されちまってる節が、今の所だが大いに…あちこちと見受けられていた。
まぁ、感情面というよりは─戦闘面の方なんだがな。
俺自身は元々、拳を主体にしていたせいか─そもそも、その影響か拳で戦う奴が多かったが…まぁ、それを加味しても…拳で殴り合う輩が、より一層増えちまっていた。
─感情面?
そんなのは今更の話だろう。
濃さの違いに関しては明確なものはあるかも知れねぇが、俺達は生まれてこの方─決して、自身が清廉潔白に身綺麗で生きて来れた訳じゃねぇ。
皆が皆、どこかしらにはスネに傷を持っている奴が大半だ。
そんな選ばれたお利口さんは、そもそも…こんな、どうしようもねぇ場所になんて容易には落ちてなんて来る筈が無ぇ。
まぁ、だが─その恩恵とは言い切れねぇが、全体的により一層経験値稼ぎに力が入るようになったのは…否定出来ないがな。
まぁ─だが、それにしても…試練か。
アストラ戦の事も含めて、今までの傾向を振り返っては…色々と思い出しちまう。
ホワイト達、公安局、そして─渡会護に続いて、聖女の道標と来たもんだ。
今までの傾向を鑑みるに、ポーン担当が納得する理由ってぇのを、揃えるのが勝利条件になりそうだとは推測がついた。
ホワイト達と公安局に関しては、参考になるかは甚だ疑問が残るが─少なくとも、渡会護と聖女の道標に関しては各ポーン担当の思惑が俺でさえ垣間見えたのがデカかった。
奴らは何を狙っているのかまでは分からないが、少なくともクイーンとやらに会う必要はあるだろう事。
そして、キングを手に入れなければならない事は共通していそうだな。
さて、どうしたもんか─。
「─京也さん! 準備、終わりましたっス!」
「ああ、お疲れさん」
「…いつ、行きやすか?」
「…ああ。そうだなぁ、アイツらが目ぇ覚まして─庭園を出たタイミングだな」
「あー、かち合うと…ヤバいっスもんね」
「最悪かち合って、お守りしながら戦うなんてぇ事は─俺は勘弁だからなぁ」
「…確かに、それは言えてるっスね!」
─そうだな。
肇からの話はその通りだ。
やはり、俺には会話相手が必要らしいな。
脳内の整理がスムーズに付いていきやがる。
これが、また俺一人だったら─雁字搦めになっちまうんだろうな。
まぁ、それはそれで癪ではあるのだが─致し方ねぇって、やつか。
人には得意、不得意があるのを受け入れるのも必要な工程だ。
─俺だって、万能では無いのだ。
足りない部分があるのならば補えば良いだけだ。
その段階の途中で、俺自身のプライドで成長を阻害するのは俺自身が許せねぇ事だ。
─まぁ、とりあえずは多少の変更だな。
「─おい、おメェら! 少しだけ、変更だ。アイツらが目ぇ覚まして、庭園から抜けたのを確認次第─俺達も殺るぞぉ。お前ら、気合い入れろよぉ?」
「「─うす!」」
「─よし! とりあえず、今日は無しだ! お前らも自由にしろ! 俺は、身体でも動かしてくっかな…」
「─あ! 京也さん、俺も行くっス!」
「おう! ★4武器でも探すかぁ?」
「─それは、有りっスね!」
「「─京也さん! 俺達もお供しますッ!」」
「…ばっきゃろ! お前等はさっきまで、トランプ兵100回試合やってただろ! すっこんで、寝て休んでろ! 休むのも戦いの内だって、何度も俺は言ってんだろぉ!?」
「「─うすっ!」」
「─ったく。いつから、俺は─お前らのお守り担当みたいになったんだぁ?」
「…京也さんは、ボスの中のボス! 俺達のビッグファーザーっスもんね!」
「─あああんんん??」
「─おっと! 京也さん! こっちっスよぉ! さぁて、トランプ兵ー! コッチに来るっスよー!」
─ったく、肇の野郎は…どんどん馬鹿になってやがる。
いや、肇だけじゃねえ。
周囲の奴らも何かと感化されちまってるのか、本当に言う事を聞かねぇ奴らが増えちまった。
結局はAmberに来たい連中は全員、この新宿御苑のALICEの穴に来ちまった。
そして、俺も馬鹿みたいに拾っちまった。
─あ?
俺もそうなると馬鹿ってぇ事になるのかぁ?
…ざまぁねぇな。
ったく、気付きたくない事に気付いちまった気分だ。
はぁ─。
ギルドって、いうが…これはもう、言うならば巨大な一大ファミリーの様相だな。
─肇の言葉は笑えねぇ…なぁ。
確かに、そう見立てると俺は…確かに、見事なビッグファーザーだな。
…本当に、笑えねぇ冗談だ。
「─京也さん」
「おう、眞人か? どうした?」
「─いえ。最終調整、私もお供します」
「…勝手にしろ」
「ありがとうございます!」
─ったく、眞人も馬鹿になっちまったようだ。
俺の回った焼きが眞人にも移ったか?
─いや、こいつは俺を見付ける前も後も変わらないか。
ああ…、俺の頬が吊り上がってるのを─俺自身でも分かっちまいやがる。
─笑ってるんだな、俺は。
…ったく、悪くねぇな!
ああ、悪くねぇ気分だ。
これがあれか?
筒袖の間柄って、奴なのか?
ファミリー…家族…ああ、悪くねぇな。
本当に、そろそろ俺達も─一発どデカい花火、打ち上げねぇとなぁ?
「京也さん〜! 一杯、連れてきたっすよー!」
「肇ぇ! そのまま走って来い─! よしよし…よしッ! おらぁッ─!!」
「─ヒィ!? おお!! 流石ッス!」
走って来た肇の横を過ぎるように、俺は思いっ切り拳を振りかぶって─そのまま、一息に拳を振り切る。
生じた拳風と共に─一気に衝撃波と拳をトランプ兵へと叩き付けると─綺麗にトランプ兵達はぶっ飛んでいき、軒並みトランプ兵は死んだようだった。
「ふぅー。…よし、良い感じだ」
「─冷や汗かいたっスよ」
「…ばっか、お前がそんな肝っ玉なはずねぇだろぉ?」
「あっ? バレやした?」
「…全く、肇は期待のルーキーですね」
「あっ! 眞人さんに褒められると鼻が高くなるっスね」
そう言って、照れ笑いを隠さずに肇は頭を掻いては嬉しそうに反応しやがる。
ああ、気分が乗ってきたな。
─もう少し、やるか。
だが、俺と同じような心境の男が既に居たらしい─。
「─さて、私も行きますよッ!」
「あっ! 置いてくのはずるいっスよ、眞人さん!」
「ったく、アイツらじゃれ合いやがって。子供みたいなのは、そろそろ卒業しやがれって…」
俺はガシガシと頭を搔いては─ぶっ飛ばしたトランプ兵達の方を見やると、キラリと…何かが輝き落ちているのを発見した。
「─ほう、ガントレット★4か! これは使えるなぁ? 最高じゃねぇか!」
─ガハハハ! と、俺は笑って、そのまま気分が更に高揚した俺は─肇と眞人達を追い掛けていき、トランプ兵達とのじゃれ合いに参加するのだった。
─そして、数日後。
掲示板経由だったが、聖女の道標が地上に戻ったのを俺達は確認し─俺達はその日、丸一日を休息に充て、次の日にはボスへと挑みに─新宿御苑のALICEの穴、その大扉へと向かうのだった。
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