ALICE.6─倒す。倒す。倒す。
「─ッ!」
剣に、槍に、ハンマーに近接武器のオンパレードだ。
けれども、ランクアップというのは確かにオススメの解決法の1つなのだろう。
そこは確かに、非現実的な光景が、俺の前には繰り広げられていた。
「そこ─ッ!」
イノリは華麗に捌いては、拳手でも十分に渡り合っていた。
…問題は俺だ。
剣で斬り裂かれたと思ったら、刃が俺の身体を通さないで切り傷で済んだのだ。
「身体能力の向上って、こういう事かよッ!」
「そっ。…そういう事ッ!」
最後にトランプ兵をイノリが倒して、トランプ兵のラッシュは終わった。
最初の2体と相対し戦っていたら、戦っている最中の音に誘われたのか、どんどんとトランプ兵が現れた時は、流石の俺も肝が冷えた。
「勘弁してくれっ─て」
「でも、経験値は得られた。そうでしょ?」
「確かに、そうだが。…俺は腑に落ちないぞ」
「それはそれ、これはこれ」
「はぁ…」ッと、溜め息を吐いては周囲を警戒するが、これ以上はトランプ兵が来る事は無さそうだった。
とりあえず、ランクアップだ。
俺とイノリはランクアップ作業を済ませては、経験値ショップから食べ物と寝泊まりに必要な道具を買い揃え、ALICEの穴にて1泊を過ごした。
「それで、これは…どこまで続いていくんだ?」
「それは、分からない」
「だよな。ずっと、穴の中だから、時間感覚が狂いそうだが、ALICEのお陰で時間だけは…分かるが」
電子情報では時間と各種ステータスや経験値ショップは使えるみたいだ。
連絡手段は制限されているのか、外との連絡が途絶されてる感じだ。
「きっと、そこら辺も…いつかは配慮されるはず」
「配慮? また、それは希望的観測な事で。流石にご都合主義も良いとこだぞ?」
「そんな事は無い。きっと、最下層へ到達するのを望んでるはずだから」
「…で、最下層には何があるんだ?」
「…私からは、何も言えない」
本当に…話す気は無いそうだ。
ポケットをまさぐると、手に馴染む感触が、そこにはあった。
「はぁ~」と、火を点けては吐き出す煙は良い形をしている。
…多分、幸先は良いのだろう。
…配慮、ね。
確かに、煙草や酒も経験値ショップには追加されていた。
これは、望んだからアップデートされたと言う事なのだろうか?
要らぬ配慮とは言わないが、何とも言えない気持ちになりながらも、今はこの煙草の美味しさを、深く味わう事にする─。
ガシャ、ガシャ─。
「カズキ、来てる」
「ったく、人が気持ちよく吸ってる所だってのに…」
そして、角から現れたトランプ兵を目に捉えては、俺とイノリは動き出して─戦いに興じるのであった。
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