ALICE.53─渡会護【刑事部捜査一課】
「…」
─ボーと、俺はその光景を観ていた。
…だが、途中からは食い入るように観ていた。
「ホワイト、カズキ、イノリ─」
それが俺の逆恨みに近いのは知っていた。
─代々木公園から全ては始まった。
…そうだ、ラキアだ。
俺達はあの地獄の中で下層を目指しては生きていたんだ。
「あの時、俺が─俺達が、ラキアを倒していたら…変わって、いた?」
そんな事は土台無理だったのは俺にだって分かる。
分かるが、今の俺の中にはドス黒い─いや、だが…明らかにドス黒いが、今まで俺が抱えていたものとは違った何かが─ドロっと心に零れ落ちて来ていた。
「─嫉妬だ」
…ああ、声に出せば幾分か、冷静になれた気がした。
─これは嫉妬だ。
華麗で華々しい功績を携えては、周囲から認められている。
─そんなアイツらが、俺は羨ましいんだ。
今現在も掲示板を見たら、沢山の人から─俺に対しての中傷、罵詈雑言が溢れ返っている。
用意周到に俺専用の…死ねというスレッドまである。
「─はっ! 俺も有名になったもんだな!」
そして、視界を戻しては電子上─そこに今現在も配信されているシュピーゲル戦を食い入るように俺の視線は戻っていく。
─ああ、凄い。
公安局って言うのは聞いたことがあった。
…凄く、格好良く戦っている。
抜刀術!
─っと、掲示板では盛り上がりを見せている。
…抜刀術か。
シュンッ─シュンッ─と、手を軽く振るうと…俺の眼前の空気が揺れ動いていく。
「─俺にも出来るか?」
…ま、出来た所で何も変わらないけれどもな─と、改めて俺は自重する。
そして、そのままホワイトと公安局は華々しい勝利を納めては掲示板も盛り上がり─同じように俺への中傷と罵詈雑言も盛り上がっていく。
ギルド情報を開くと、ギルドの申請フォームを利用してでも送りたいのだろう。
散々な量の中傷や罵詈雑言のメッセージが殺到している。
「はぁ─」
今は受付も拒否してはメッセージも拒否しているが、捌ききれない量のメッセージの通知の表示はそのままだ。
「…俺が信じられるのは、俺達のみだ」
そうだ、俺の中で、アイツらは今も生きている。
─早く死んじゃえよ!
と、掲示板の書き込みが流れていくように見える。
「俺は死なない。─いや、死ねない」
ランクとスキル、脳の拡張の話を─シュピーゲルの話を俺は思い出す。
俺の持っている大量の経験値はドス黒い仲間の炎を譲り受けて得た物だ。
─そして、大量の殺人という介錯をしては…夥しい数の屍の上で得られた物でもある。
俺は覚悟を決めて─決心し、スキルを有りったけ得る為に…その大量の経験値を燃やし尽くしていく。
そして、言葉にならない程の膨大な量の情報が脳に流れ込んで来ては─身体中に激痛が駆け巡り、そこで俺の意識が途絶えたのだった。
「─生きてる」
暫くの間、元居たセーフゾーン内で気絶していたようだった。
だが、時間の経過で─空腹から経験値が少しずつ減っているようだが、確かに俺は生きていた。
「ははッ! 俺は生きてるぞ。─そうだ、俺は…生きるんだ!」
ショップから適当な安いレーションを購入しては、俺はそれらを適当に腹に詰め込んでは空腹を止める。
「─やるか。…生きる為に」
─昭和記念公園、そのALICEの穴は俺以外潜ってる話も聞く事はない。
俺は背を伸ばしては屈伸をし─身体の節々の関節を、筋肉の動きを…つぶさに確認していく。
─膨大なスキルを得られた事から、全能感に近い何かを感じてしまう。
並列思考のスキルの影響か─俺の中にはアイツらが沢山現れては、俺を導いてくれている。
─生きろ! と、言ってくれている。
「─そうだ、俺は生きるんだ。…お前達の分も生きてやらないといけない」
─大量の人を殺した。
人殺し─殺人鬼と恐れられている京也は可愛いもんだ。
ここには矯正施設の人間─そして、職員という仲間達…その全ての仲間を手に掛けた大量殺人鬼が居ると言うのに。
「─だが、俺はお前らの為にも生きる。…生きないと、いけないんだッ!」
そして、セーフゾーンから助走をつけて飛び出しては─スキルを確認するように、身体と思考が溶け合うよう…チューニングするように、身体を震わせては眼前のトランプ兵達を俺は蹴散らしていく。
─この時だけは俺は、俺達は生を感じられた。
いつだって、仲間が一緒に考えては─俺を動かして、生かさせてくれている。
「まだだ、─まだだ! まだまだ、だ!!」
蹴散らす! ─蹴散らす! ─蹴散らす!!
「うおおおおおー!!」
生きる! ─生きる! ─生きる!!
身体と思考のチューニングが終わった時は─俺は、果たして俺だったのだろうか?
─それとも俺達だったのだろうか?
「…行くか」
一番安いレーションを購入しては腹に詰め込んで、俺は空腹を満たしていく。
そのまま俺は昭和記念公園のALICEの穴のボス部屋へと通じる大扉へ─ただ、ひたすら真っ直ぐに向かうのだった。
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