ALICE.50─仕上げ。
「ハッ─!」
スッ、スッ、スッ─と、紗奈さんが刀を綺麗に凪いでいくと同時に─トランプ兵が細切れに斬り刻まれては崩れ落ちていく。
「おー。凄いな…」
「─心身が1つになった感じに見える」
「─紗奈さん。1つの限界を超えたんですね」
「あら。─誠一郎くんも超えたんじゃなくて?」
「いえいえ。私はまだまだ…ですよ」
「はぁ…。2人して、そこまで謙遜しなくても良いだろ?」
俺がそう言うと、同じ所作で頭を搔いてるあたり─本当にお似合いなんだろう。
誠一郎さんも紗奈さんと同じ同門との事で、今は腰に紗奈さんと同じく刀を差している。
所作も見た目も似通って来ている辺り、まぁ─色々と、その…仲も深まっているのだと俺自身でも察せられるものだった。
「これで、私達の準備は大丈夫そうかしら?」
「まー…良いとは言いたいが、本音はもう少し─狩り尽くしたい所だな。スキルを成長させるとか、身体を馴染ませたいとか、そう言う理由ではなく─単純に経験値のストックが欲しい所だ」
「…カズキさん、それはどういう事でしょうか?」
「あー、誠一郎さん。これは戦ってないと分からない感覚だよな。そうだな…単純に切り傷とかでも、経験値は漏れ出ているのを知ってるよな? だから、ラキア戦の時は、俺達も相当な…結構馬鹿にできない程のダメージを負いながら、ラキアと向かい合って─お互いに命のやり取りをしていたんだ。まぁ、それが出来たのも…大量の経験値でカバー出来ていたからって、感じな訳だが─そういう事情もあって、経験値を大量に確保するのは必須と言えるな。それにラキア自身も言ってたが、基本的にボス戦は集団戦闘を視野に入れてるとしたら、今回も俺達は少人数だから─激戦になると容易に俺でも想像出来る」
「…常に死んでしまう可能性が、そこにはあったと言う訳ですね」
「─経験値はすべからく全てに直結している」
「そうなりますと、確かに…私達の経験値総量は心許ないですね」
「ああ、誠一郎さん。─そういう事になる。だから、俺達4人のそれぞれの保有する経験値総量が、ここを狩り尽くしても微々たる量しか増えない位にまでになったら─その時こそ、挑むべき時のタイミングかも知れないな」
「…カズキ。後は、今だから稼げるというのも有る」
「あー。確かに、そうだな」
「…どういう事ですか?」
「いや、紗奈さんも感じてるとは思うが─三層に比べて四層は俺達が、今は独占して狩れてるだろ? 多分、今後はそういったアドバンテージが─どんどん失われていくと思っていた方が良い。これは単純な予感とかではなく、今現在も起こっている事実だな。きっと…最終的にはクイーンとやらの下へ、あいつらは行かせたいのだと俺は読んでいる。だからこそ、今現在を通しても─何者かは俺達へと、狩り場を狩りやすいように…今後も展開していくのだと俺は睨んでいる」
「─なるほど。確かに今現在、上澄みという私達の居る上澄み部分が、時間が経過する程に狭まっていくというのは─道理と言うことですね」
「ああ、誠一郎さん。その考えで俺も良いと思う。だから、今狩れるなら狩り取るべきだと…そういう事だとイノリは多分、言いたいんだと思う」
「…」
なるほど、流石に反応を返せる域を突破していたらしい。
だが、その位はもう俺達は分かり合っていた。
「なら、私も─気持ちを改めて、頑張りますね」
「─補佐はお任せを、紗奈さん」
「─イノリ。俺達も行くか」
「うん」
休憩と称して、紗奈さん達の戦闘を俺達は見ていたが─煙草も丁度吸い終わった所だ。
休憩を終えるタイミングとしても、丁度良いだろう。
「─さて、狩りの時間だな」
そこからの俺達は、縦横無尽に移動しつつ─トランプ兵達を掻き集めて、大立ち回りをしては…次々と撃破して経験値を稼いでいく作業へと移っていったのだった。
そして、数日後─。
既に俺達は、次の庭園へと続く大扉の場所は把握していた。
セーフゾーンを利用しては小まめに休みを挟みつつ、狩っては狩り尽くして─本当に経験値の入りが少なく感じたと俺達が思える日が来るのは必然だった。
その時こそ、挑む時だと既に決めていた俺達は─その日はセーフゾーンにて1日を休息に充てて、充分に英気を養った。
そして、次の日には皇居外苑のALICEの穴─四層の大扉の前にて、俺達はボスへと挑む為に…揃っていたのだった。
御一読頂き、誠に有難う御座います。
宜しければ応援、ブックマーク頂けると嬉しいです。
応援は下の☆☆☆☆☆になります。




