ALICE.5─ALICEの穴。
「これが穴か」
「そう、ALICEの穴って名付けられて、正式採用されたみたい」
「ALICEに採用されたということか?」
「…多分、そう」
何てことないように言ってるが、目の前の穴は不自然に発生しているようで、突然盛り上がった土が口を開けるように穴が出来ていた。
「どんな仕組みだ? 中はどうなっているんだ? 入ったら出られるのか?」
「…質問ばかり」
「いや、普通の反応だろ。見ろ、周りには人が1人も居ねぇからな?」
「それは、封鎖され始めたからだと思う」
「…どういう事だ?」
「さっき、誘導されては、公園の外へと出てく人が沢山居た」
「あの、すれ違っていた奴らはそうだったのか。…そうなると、今の状況はマズイか?」
「うん。…早く入るべき」
「…ああッ! もう、なるようになれだ!」
「良い選択」
ああ、そうなると良いな─! ッと、内面で叫びながらも、イノリの手を繋いではALICEの穴へと飛び込んだ。
「ん─?」
飛び込んでみたは良いが、一瞬の浮遊感の後に足は地面を踏み締めている感覚がする。
「落ちた、のか?」
「飛ばされた、が正しいかも」
「見て─」と、イノリが指差す方向を見ると、一方通行になっているらしく、朧気に─外の景色が見えていたが、穴から外へは容易には出られなくなっていた。
「─ッたく、どうなってるんだ?」
…周りを見渡す限りは洞窟だ。
まさしく、穴の中という様相だ。
「なぁ。今、思ったんだが…」
「ん?」
「戦うって言うのなら、武器はどうするんだ? 俺は自慢じゃないが、こんな身なりだが、善良な一般市民として、武器なんて持ち合わせて無いぞ?」
「大丈夫、素手がある」
「…マジで、言ってるのか?」
「…本気」
─おいおい、勘弁してくれ。
そう思っていると、穴の奥─その向こう側から、ガシャガシャと、何かが近付いてくる音が聞こえて来た。
「来た。あれが、トランプ兵」
「─おい。一言、言っていいか? トランプ要素、いったいあいつらの、どこにある?」
「…柄と数字がどこかに描かれてる」
「ああ…。そうかい、そうかい! おいッ! 相手は剣を持ってるぞ!?」
「大丈夫、経験値が無くならない限りは死なない…はず」
「…はず、なのかよッ!」
「ほら、来た!」
「ったく! クソッ! ─やってやらァ!」
トランプ兵? ─なんて、クソ食らえだ。
ただの、甲冑人形。
そうだ、ただの甲冑人形じゃねぇかッ!
振り下ろされた剣の軌道を避けるように身体を潜り込ませては、首元へと掌底を叩き込むと、ガクン─と身体を落としては、トランプ兵は息絶えたようだった。
「舐めるんじゃねぇぞ…はぁはぁ」
「流石、カズキ」
「あ? って、これ倒したら─どうなるんだ?」
「さぁ?」
キョトンとしてるイノリを見ていたら、パァァァ─ッと、トランプ兵は消えていく。
「…あれが数字の1の力」
「トランプをモチーフにしてるんだろ? そうなると、一番大きくなると、数字は13になるのか?」
…って、なると。
おいおい─今は一体だったから良かったが。
数とは単純な力だ。
…何体も相手取るとしたら大変だぞ?
「そうなるはず? でも、それに合わせて、経験値も多く入るはずだから、もっと成長出来るはず? …配慮はされてるはず」
「…配慮?」
いやいや、今斬られる所だったぞ?
配慮っていうのは、全く別物だろ?
「そう、配慮。経験値、入ってない?」
「いや、別に─入ってるな?」
確かに経験値表示が増えている。
「とりあえず、ランクアップがオススメのはず」
「武器も買えるみたいだが?」
「トランプ兵が落とすかも知れない」
「…ゲームじみてるな」
「…かも知れない」
「お前は、戦わないのか?」
「お前じゃない、イノリ」
「…はぁ。イノリも、戦わないのか?」
「これから一緒に戦う」
「そうか─」ッと、最後まで言い終える前に、やっこさんが再び、現れたみたいだ。
「トランプ兵。敵2、数字1」
「りょーかい。片方は、イノリのお手並みを拝見か?」
「…分かった」
そして、俺達を認識したトランプ兵は、俺達へと襲い掛かって来る、それを俺達は迎え討つのだった。
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