ALICE.47─重盛未来【ALICE教】⇔朝霧翔平【ピースメーカー】
「まだ、です! …諦めないで─下さい!!」
─強い!
やはり、三層はまた一段と強さが─数字が3にトランプ兵達が成り変わるだけで、こんなにも密度─そして、練度が変わるとは想定以上だと、私は思考の片隅で考えざるを得なかった。
「聖女様!! …押されて、いま、─すッ!!」
「耐えなさい! …今、今─今です! 交代ッ!
─攻勢に出ます!!」
セーフゾーンを利用して、トランプ兵達を誘き出しては─守勢と攻勢を緻密に織り交ぜて、出来る限り速やかに殲滅していく。
それが、今の私達─ALICE教のスタイルとなっている。
─セーフゾーンはALICE様の恵みだと、それがとても分かる戦術になっていると私自身、自負していた。
「お、落ちました!! ─お、思し召しです! ─★3の武器です!」
「「…おおお!!」」
そして、私達─ALICE教が狙っているのは各層で落ちるレアドロップ品となっていた。
これは武器としても、防具としても─経験値ショップで買える物とは別格の代物と言える実情があった。
そう、単純に強いのが使っていても分かってしまうのだ。
─打ち負けていた所を、弾き返せるように。
─何度も切る必要がある箇所を、まるでバターナイフで撫でるように一振りで斬れる。
★1武器や防具は三層での運用は難しいが、二層では破格の効果で使える。
★2は、その法則のままで三層で。
★3は、同上で四層で。
★4は…そうなると、五層となると私は見込んでいる。
─五層という表現で良いのか、未だに私の中では正解は出ていなく分からないが、ラキア戦で観た庭園は確かにボス部屋だと私は判断している。
きっと、ボスとの戦闘で重要なのは─如何にレアドロップ品を確保しては、ギルド特典を上げ切れるか─要は、集団戦の強みこそが、勝利条件の分かれ目だと私は予想している。
ギルド特典に関しては既に防具防御補正★4にする事は出来た。
けれど、武器威力補正★1の為─今は可及的速やかに★4を目指している状況となっている。
防具防御補正★4に関しては当初から、こちらを上げる事は私の中では決定していた。
その判断は正しかったと見るべきだろう。
補正の影響は目に見えて出ており─私達の生存率が格段に上がる事に成功していた。
確かに、大怪我を負った者も居たが─ALICE様からの恵みのポーションと包帯のお陰で、負傷者の方は死から免れて、今現在は戦線に復帰してはその手を振るって戦えるようになっていた。
「これで、私達は更に戦えるようになったはずです」
「ええ─そのとおりです。聖女様」
「…信弥? ─皆のランクはどんな状況ですか?」
「今現在の所は、ほぼ全員がランク20に届きそうな状況です」
「…分かりました。─とりあえず、ランク25までは三層にて引き続き、この状態を維持してはランクアップを目指しましょう。皆がランク25に到達した時点で、その際にレアドロップ数を確認しては─数量次第で四層を目指すか、その時に改めて決めましょう」
「─御意に」
信弥はそう、深々と私に対して礼をして下がっていく。
─私はそれを目で追いつつ、頭の中でこれからの算段を考え始める。
「次のボス戦は─私のギルドが、ALICE様へ捧げなければ…」
これ以上の遅れは私でさえ─看過は出来ない。
これはALICE様への信仰心の、踏み絵でもあるのだ。
私達こそが、次こそは─このボスの討伐という功績を持って、ALICE様へとその信仰心を見せては捧げないといけないでしょう。
私は覚悟を新たにして─私、いえ…私達は私達の聖戦の意味をその胸に宿して─東京都庁のALICEの穴を邁進していくのだった。
「翔平さん、やっぱり─レアドロップは強いッスね!」
「─ああ。これは…打開策として、俺達に有効かも知れないな」
「掲示板の方にも、レアドロップに関しての有効性を考察している人達が居ますね」
「あー、陽太さん。その人達って…考察厨って、言われてる人達ッスよね? なんか、トランプ兵で最近は色々と検証してるみたいで、個人個人の技量も自然と上がってってるとかって…聞いてるッスけど。─で、確か…ギルドランクに関しても高ランクギルドとして、ギルド管理庁でもランキングに入ったッスもんね?」
「あそこのリーダーの真名さんとは話す機会があったけれど─まぁ、良い人なんだろうけれども…中々癖が強かった人だったよ」
「─へぇ。翔平さん、【真理の探究者】の真名さんと会って話した事あったんスね」
「まぁ、何と言えば良いか悩むけれど─ギルド管理庁の食事処でね。─バッタリと、ね」
「翔平さんに、癖が強いなんて言われるって…中々に気になるッスねぇ」
「まぁ、いつか会えると思うよ。彼女達もギルド管理庁のギルドルームを使っているみたいだし」
「それは─楽しみですね」
「そッスよね、陽太さん! そうなると、俺も楽しみッスね!」
「とりあえず、そろそろ休憩を終わりにしようか? 皆も、体力や気力は回復したかな? ─もう少し、三層を粘ろう。目標は★3武器の入手とその数の確保だな。なるべく無理をしないでやるけれど、それでも精一杯やって行こう」
「了解ッス!」
「皆さんー! 行きますよー!」
「さて、直感スキル的になのかな? あっちが良い気がするな。さぁ、皆─行こうか」
「「─はいッ!」」
そして、セーフゾーンでの休憩を終えて─俺達は探索を再開していくのだった。
上野公園のALICEの穴では、三層を利用する探索者は俺達【ピースメーカー】が主だった存在だと実際に潜っていても実感している。
一層、二層に関しては会社帰りの会社員や、小遣い稼ぎの若者、時には老人までも見えていた。
そう言えば、都内では浮浪者が全く見えなくなった気がする。
─浮浪者か。
ALICEの適性を得られても、何故か馴染めなかったりした者─もしくは、適性の結果が芳しくなく─けれども、裏の世界には馴染めなかった者が辿り着いてるのは、俺自身もたまに目撃していた。
そういう救いの無い人達の為にも、ALICEは教会を設立しては運営していたはずだ。
しかし、今となっては─その人達はその手に武器を携えては戦うようになって、ALICE教として存在しているのが今現在の実情だった。
「…だからと言って、良いものでも無いんだよな」
「─どうしたんスか? …翔平さん?」
「いや、ごめん。独り言だから、気にしないでくれ。─大丈夫だ」
「そッス、か?」
決して─良いものでは無いんだ。
それは決して、救いではない。
確かに己の足で立っては、己の手で道を切り開いてはいるだろう。
けれども、その切り開いた先の未来が余りにも無数に拡がっているとは俺には思えない。
本来の救いとは自分の手足で立てるようなサポートは必要だろうが、その後は武器を携える事は無く─武器と言っても、己自身の知識や情報等、暴力とは違う手段で掴み得られる─平和的な無限の可能性の事なのだと俺は信じている。
だが、今は世界そのものの可能性が潰えようとしているのも実情だ。
世界のカウントダウンは確かに、今現在もその時を刻んでいる。
決して、カウントダウンと軽い言葉で片付けて良いものでは無いだろう。
─これはただの…体裁の良い、時限爆弾なだけなのだから。
俺は身を引き締めて、また─覚悟を改めては三層のトランプ兵達へと向かい合っていくのだった。
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