ALICE.46─折崎京也【Amber】
「─京也さん! そっちに3体行ったッスよ!」
「うるせぇ! ─見えてる!! この、クソ喰らえ!」
「流石ッ─京也さんッス!」
肇が自分の事のように喜んでは俺を称えてくれるが─まぁ、悪い気はしねぇ。
「ああ。─まぁ…こんくらい、朝飯前だ」
「あー、もう─朝ッスもんね」
照れ隠しに近い誤魔化しのセリフだったが、肇に言われて時間を確認したら─確かに朝になっていやがった。
気付かない内に、俺はブッ通しで戦っていたみてぇだった。
まぁ、俺達以外に探索者が見えないのも時間感覚が狂う原因でもあるのか?
どうも、世間という比較対象が無ぇと─没頭しちまうと時間が流れるのは存外、早ぇらしい。
確かに、新宿御苑のALICEの穴は─俺達以外の探索者が見当たる事は無ぇ。
その原因と言っちまえば、原因になるのか?
─俺が居ると見るや、ほとんどの探索者が震えて逃げちまったってぇのが背景にありやがる。
逆に残ったのは、俺に変な憧れを持つ馬鹿な奴らか─アングラでも、俺を一方的に慕う阿呆な奴らだけだ。
まぁ、要するに俺のAmberのギルドに加入したい奴らという訳だ。
だから、この遊び場は、総じて言うと俺達Amberの狩り場になっちまっていた。
「─そう言えば、眞人の奴はどうしたぁ?」
「眞人さんッスか? …確か、数名連れて─離れた場所で鍛え上げに行ってるッスね?」
「なら、向こうは眞人に任せるかぁ」
「…信用、出来るんスか?」
「─ああ。眞人はな、俺が一から育て上げた奴だからなぁ」
「へぇ…、一番の古株って事ッスね」
「そうなるなぁ。…まぁ、俺を探して他のALICEの穴に潜っては─鍛え上げてたとは、本当に面白ぇ奴だがな」
「あー! 掲示板見てたら─場所も特定出来て、ここまで、すっ飛んで来たって、言ってたッスもんね」
「…眞人もお前と同じで面白えやつだぞ?」
「─え? …俺も、面白いんスか?」
「…ああ。─充分過ぎる程、な」
コイツはコイツの良さが分かってないのが、尚一層─面白くて俺には好ましい。
眞人に関しては、俺と同じで闇の底で打ち捨てられてたのを俺が拾っては─一から育て上げた男だ。
俺の事を親父だと思っては、一方的に慕って来るが─俺からしたら、甚だ迷惑な考えなだけだ。
ったく、俺から言わせると─そんな恩義を感じるなら、その恩義へ報いる分とやらを、テメェの幸せの分に使いやがれと思っては─言ってやっても聞きやしねぇんだから、本当に困った奴だ。
「ったく、なぁにが─私が京也さんを支える為にアンダーボスになりますって、だぁ? 変な事を言いやがって。…アイツはアイツの道があるってぇいうのに、アイツ含めて─どいつもこいつも俺の話を碌に聞きやしねぇ」
「─え? 俺の事もッスか?」
「オメェも大概だぞ、肇ぇ? 俺に付き合ってると、散々言ってるが死ぬぞ? どっかでイチから出直すのがお利口さんだぞ?」
「イヤっスよ! 俺はボスの下が今も昔も、これからも幸せなんスよ! それが俺の中のお利口さんなんで! ─とりあえず、飯食べましょーよ、ボス!」
「はぁ…」
─てんで、駄目だ。
本当に俺の周りは言うことを聞きやしねぇ。
─どうして、こうなった?
そして、そんな馬鹿野郎共がどんどん─今現在も集まって来やがる。
ったく、食べたら今度は階層をまた降りるか。
─次は三層だな。
とりあえずはランクアップをしてランクを底上げして、重点的にその後はスキルを磨き育てあげねぇとなぁ。
─力は、暴力は、一番単純な平和の装置だ。
何かを守りてぇなら、ただ─ぶん殴ればいい。
一番シンプルで、どんなお利口さんでも、馬鹿野郎でも分かる方法だ。
「ったく、面倒クセェ。─俺に教えられることは全て教えてやるしかねぇかぁ?」
とりあえず、俺が得た知識は共有しねぇといけねぇよなぁ?
後は掲示板の情報も、俺の体験と経験から情報を取捨選択してまとめねぇとなぁ─それも必要な事かぁ?
「─眞人が来てくれたのは幸運だったなぁ」
アイツは泣き叫びながら、現れては一目散に俺へと目掛けて飛びついて来やがった。
ったく、アイツはいつになったら…大人になるんだ?
─いや、それは俺もか?
ま、気張ってやろうじゃねぇか。
─待ってろよ、ボスさんよぉ?
そして、俺達を見ては震え上がって─小石を投げてくる奴らも観ていやがれ?
─俺達は強ぇんだぞ?
「─京也さーん!」
「チッ、分かってる! 大声で叫ぶな! トランプ野郎共が来るだろうが…いや、叫べ! ─もう一戦するかぁ!」
「あっ、また京也さんの悪い癖が! ─ま、そこも痺れるんスけどね! 一緒に戦いますよ!」
「はっ! 生意気な野郎だなぁ…肇ぇ! お前は右2体だ!」
「へい!」
「おらぁ! ─行くぞ!!」
俺の遊び場は俺が遊び尽くしてやる。
そして、俺のファミリーは俺が護ってみせる。
ああ─。
そうだ、新宿御苑は…今は─俺達Amberの狩り場だ!
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