ALICE.41─渡会護【刑事部捜査一課】
「行くか…地獄の三丁目に、な。お前等、死にに行くぞー!」
「「…」」
俺達はあの指示があった日から、場所を移し変えさせられて─今現在は昭和記念公園のALICEの穴へと連れて来られていた。
想定される理由は幾つかあるが─まぁ、碌でも無い理由だというのは確定している。
…ん?
ああ、どんな理由だって?
─一番目?
それは近くに旧陸上自衛隊の立川駐屯地があるからに決まっている。
そこで、俺達は管理されるっていう寸法だ。
まぁ、脱走者や自殺者を出さないようにだな。
っと、言っても自殺者は既にあの指示を受けてからの地獄の選別の日に大抵は死んでいる。
脱走者? そんな余力のある奴なんて居ない。
どいつもこいつも、目が死んでいては─ただ抜け出せない地獄を生き残ろうと足掻いてる連中しか生き残っていない。
いや、脱走者の候補は俺たちじゃないな。
それは新たに召集された警察署員の方か。
…警察?
ああ。
俺達が確かに、その警察だ。
今や、全体に召集令が掛けられたのか─都内の警察署員が揃い踏みと言っても良いだろう。
…都内の治安?
ああ、そのお鉢は既にギルド管理庁に回されてるっていう奴だ。
俺達はもう用済みって、事だな?
なら、地上に残されていた警察は今どうなっているのかだって?
…ああ、確かに。
もう、そんな現実を受け入れられない、そんな警察の署員に限っては─なりふり構わなくなってしまったのだろう。
彼らにとって、地上は見事な地獄の三丁目になったというのはお笑い草だな。
まぁ、そんな奴らが脱走者の括りなんだろう。
そうなると、ここの立地は管理にはとても最適だ。
笑える位に嵌っていると言っても良いだろう。
─二番目?
それも、やはり立川駐屯地から近いからだ。
まぁ─言い換えると、主に外部の探索者が少ないからだ。
一般市民含めて、大抵の者はギルド管理庁近くのALICEの穴を拠点にして活動するギルドが多いからと言えた。
個人の探索者に関しても同じ理由でギルド管理庁近くのALICEの穴を拠点にしている者が多数だ。
俺達は、まぁ…なんだ?
狂った警察署員に、俺達は成り果てているからな。
ALICEの穴に先行して潜っていた奴らは間違いなく狂っているし、ここに最重要司令として召集された地上に居た署員達も今や立派に気狂いを起こしてやがる。
どうもこいつも、辛気臭い顔や絶望の顔を表情に彩っている。
後は、死相を浮かべては狂ったようにケタケタと笑ってる奴も居る。
まぁ、今や俺達は世間の良いスケープゴート的な扱いでもあるのだろう。
今の現状は尚更─外聞的にも上層部は見せたくはないだろうし、何よりもシナリオに影響するであろう無駄な情報を出させない為にも、外部に接触させたくは無いんだろうさ。
…総監?
ああ、俺達の狂い具合を遠巻きに見て─歯を噛み締めては何とも言えない顔をしていたな。
そう、ただ遠巻きに見ているだけだ。
まぁ、総監はお察しの通り─上層部側と言う訳だ。
俺達は体裁の良い政府のモルモット兼、本当にスケープゴート役って、訳だ。
本当に笑えない、碌でも無いシナリオだな。
─三番目?
それこそ、本当にくだらねぇ理由だ。
公安は見事に世間様に許されたって言うのが、この地獄の現状を更に加速させている。
まぁ、その背景には─公安は市民の暴動事件に関しては一切関与していないのが公表されたからな。
むしろ、犯罪者を追い詰める過程で重傷者が出てのお涙頂戴の話が、痛烈に市民には刺さったみたいだ。
彼らは許されたし、むしろ、彼らの後ろ盾の追い風にもなった。
…警察?
この現状の通り、まさしく地獄へと直行コースを辿っている最中だ。
公安とは真逆の道、その道を突っ切っていると言っても過言では無いだろう。
市民への多大なる犠牲を出しては、更に捕縛した市民に対して、警察署員の私怨か怨恨ゆえに、捕縛者達をまとめて廃人にしたと、何処からか情報が流出したらしい。
警視庁へのバッシングはそれはもう止むことは無く、それは本当に酷いもんらしい。
─だから、上層部は苦肉の救済策を考えた。
まぁ、その救済策が誰に対しての救済策なのかは俺達─集められた署員の顔を見渡せば一瞬で正解に辿り着けるだろう。
『私達は反省しています。─見て下さい。こんなに凄惨で酷い状況になっても、あなた達市民へ尽くしています。だから、私達を許してください。むしろ、これ以上、責めるならば彼らは…我々は本当に死んでしまいます』
─あぁ、コレもお涙頂戴っていうやつだな。
そして、その上層部の苦肉の救済策のシナリオを運ぶ為に選ばれた犠牲というのが、まさしく俺達と言うわけだ。
だから、指示されたのは【礎になってくれ】だ。
─な?
…笑えるだろ?
俺達には生命があっても、生命は無い。
世間が突拍子も無く俺達を許すか、または─上層部がシナリオを書き換えるか。
もう、既に何かが大きく変わらないと、その大きな運命からは逃れられない無い場所に─俺達は居る。
─正義?
─平和?
─秩序?
─法?
俺は俺の道の先で正義が行えるのなら良いと思っていたが、それさえも既に甘過ぎだったらしい。
…ああ。
最初にALICEの穴に潜った時にだって、思っただろ?
【俺はなんて甘い考えで居たんだ!】って、な。
─今現在でさえも、俺は何度だって言える。
【俺はなんて甘い考えで居るんだ!】って、な。
…クソ、クソ、クソがッ!
─正義なんてない!
─平和なんてない!
─秩序なんてない!
─法なんてない!
俺達は生きた社会のモルモットだ!
ただの謂れのない罪や責任を被せるのに丁度良い、愚かな集団思考の行き着く先の到達点─それらを逸らす為に用意された、贄のヤギにしか過ぎないんだ!
「お前等ー? 俺達は死にに行くが、簡単には死なないぞー? …もし、生き残れたら─」
その先は言わないさ。
どいつもこいつも─もし、今ここで─見れるのならば、生き残ってるやつの目ん玉の中を見てみやがれ。
暗い暗い、そしてドス黒い炎がそこに燃えているのが見えるだろ?
俺達はそのドス黒い炎で生きているんだ。
そうだ、今は飼われてるモルモットに過ぎないだろう。
この管理から外れたら…覚えていろ。
─決して、許さない。
─決して、赦さない。
ユルサナイ、ユルサナイ、ユルサナイ。
「…ユルサナイからな?」
そして、俺達は昭和記念公園のALICEの穴へと入り込む。
─横穴?
─それを使っての逃亡?
そんなもの、使わないさ。
そんな事をしてもバレたら、直ぐさま殺されるだけだ。
今は世間様の全てが俺達の─敵だ。
味方だと思わせた時が、まさにその時が─俺達のドス黒い炎で、全てを燃やし尽くす最大の好機だ。
ああ─その時が今は、ただただ待ち遠しいと俺は思う。
そして、俺達は地獄の探索を再び開始するのだった。
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