ALICE.39─本間聖夜【テンプルナイツ】
「聖夜さん!」
「大丈夫─だッ!」
静のカバーから、トランプ兵の懐に潜り込んでは一気に剣を薙ぎ払う─良い所に入ったのだろう、何とかトランプ兵を倒す事が出来た。
「大地はん!」
「…むッ!」
「─流石やで!」
向こうは向こうで、大地の鉄壁の防御でトランプ兵の攻撃を弾き返しては、そこから生まれる隙を陽子が剣を突き入れては連携を取っていた。
あれは剣と言っても─エストックだったか?
単純に刺突に特化して強い印象を俺は抱いているが、扱いは単純に難しそうだ。
それを華麗に使い熟せてる感じが、流石だとしか言えないが─。
「─油断、大敵ッ!」
だが、多少抜けてるのも陽子の持ち味なのか?
陽子の見えない死角から、陽子へと近寄っていたトランプ兵の攻撃を、大地がその大きな盾を一息に叩き付けては圧死させていた。
─シールドバッシュで正しかっただろうか?
「た、助かったで…」
「─ああ。無事なら、良い」
「お、おおきに。─ありがとな」
尻もちをついてしまった陽子を、大地が手を差し伸べては起こし上げ、周囲のトランプ兵達を一掃した俺達は合流を果たす。
「…2層は何とか戦えそうか?」
「うーん。せやなぁ─数が多かったら、単純に危なそうやなぁ。そんな印象というか、手応えやねぇ」
「確かに、それは陽子ちゃんの言う通りだと私も思います」
「…安全に、行く、べき」
「─なら、暫くはここでしっかりと本腰を入れよう。どんなに囲まれても安全だと思える様になったら、次の階層に行こう」
「せやな!」と、陽子に続き─皆の賛同を得ては俺達は探索を再び再開していく。
─あれから。いや、あれからだと抽象的過ぎるか。
あの戦い、ラキア戦は市民全員が強制的に観ていた。
勿論、その観ていた一人に俺も居る。
そして、その影響は非常に大きかったらしい。
いや、俺から見てもその影響は目に見えて大きかったと思う。
─ラキアは俺達の尻を引っ叩くと言っていたが、確かに俺達は見事に引っ叩かれたのだろう。
あの強制配信後から、皆が皆、我先にと─まるで自分達が先駆けとも言うように、こぞってはALICEの穴への探索者が増えた。
それによって経験値は溢れに溢れては、少しした好景気のような様相を地上は垣間見せていた。
まぁ、要は攻略ではなく─生活目的の為の探索者も、良くも悪くも急増したと言う事実がそこにはあったと思う。
ただ、そんな探索者が増えた事によって、様々な括りというか、目的別での探索者が増えた事によって、皆の共通意識や、認識もだいぶ探索者自身でも分かれていた。
ライト層と、ヘビー層と言えば良いのだろうか、ゲームみたいな分別の仕方と言えば分かりやすいだろうが、その表現方法は一定層には強く批判される事だろう。
─だが、俺は実際に、この目で見ていて、その括り訳は大変分かりやすく、且つ的を得ていると捉えていた。
ライト層とは浅い階層をレアドロップ目的や、単純にその日の生活の潤いの為にトランプ兵を狩る層だ。
どちらかと言うと、お小遣い稼ぎに近いのだろう。
ヘビー層は、その逆で─まさに生活と直結して生きている者が多い。
水と油は混ざらないのと似ているのか、浅い階層をライト層が占めるならば、ヘビー層はそれを避けるように、その下の階層へと潜って行く。
そして、ライト層は今や二層にも見掛けるようになっては、それを見たヘビー層は─三層を目指して潜るようになっていた。
そして、生活スタイルや常識の違いは彼らにとって決定的な溝があったのだろう。
その影響からライト層、ヘビー層共にお互いに目には見えないが、明らかに毛嫌いをしている今があった。
まぁ、稀にだが、人気なヘビー層に限ってはライト層からの一定の好意や好感もあったが、それはそれで本当に稀だと言えた。
─そういう背景から慮ると、ヘビー層から見た俺達は常に安全マージンを意識して、今やライト層とも混じっては攻略してる滑稽な奴らとして見えてるのかも知れない。
逆にライト層からは、接しやすい?
─いや、身近に感じる有名人みたいな物だろうか?
伊達にALICEから選ばれたテンプルナイツという看板は見掛け倒しじゃないらしい。
とまぁ、色々と事情や背景を鑑みるに─ヘビー層に類する彼らは、安全という担保を浅慮に捉えてはどんどん突き進んでいるからこそ、より一層、俺達との意識の違いは溝が深まるばかりで、更に摩擦を起こしては、最近は軋轢を起こしかけているのではと俺は思えている。
逆に、俺達のやり方は単純といえば単純だが、一手一手を正確に確認していくように、丁寧と安全を心掛けて探索や戦闘をこなしている。
─命は1つだけだ。
大切にして悪い事は決して無い。
そういう背景もあってか、必然的にヘビー層の死傷者数が指数関数的にも増えていってるのも、ギルド管理庁では試算が既に出ていた。
─だから、笑い事では無いのだ。
だが、そんな一歩一歩を慎重に歩いては攻略している俺達を、嘲るよう見ては─笑って通り過ぎ去っていく彼らは、常に死神がその傍らに同居している事を意識していないといけないはずなのだ。
時には、俺達は使命を持って、そんな彼らに─如何に軽弾みな気持ちで攻略をすると危険かの警告はするが、それを聞いた彼らは、皆が皆、あからさまに嫌な顔をされたり、露骨に残念そうな奴を見るような顔で見つめ返されたり、逆に逆上されては言い詰められたりする時もあった。
─だが、それでも俺達はALICEから選ばれた責務がある。
俺達はそれでも諦めずに辛抱強く、ちゃんと警告をするのを忘れないようにし、責務を強く胸に抱いては、今現在に至る─この瞬間も、誇りを持って勤しんで探索していくのだった。
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