ALICE.37─八重森紗奈【公安局刑事課一係】
「─紗奈さん! 【ホワイト】がギルド管理庁に現れたみたいです!」
「─えっ!? いつ!?」
「先程みたいです! …情報を見るに、ギルド管理庁のギルドルームに案内されたみたいです。接触者は職員のみだと推測されます」
「そう、叶ちゃん。─情報ありがとう」
「いえいえ」
…あれから、私は補佐の三森叶を新たなギルドメンバーとして迎えていた。
彼女は刑事課一係の、情報面でのエキスパートだ。
彼女の情報収集能力に何度救われたかは分からない。
今回も彼女の支えを、私は期待しての人選だった。
「…でも、変ですね?」
「どうしたの?」
「いえ、彼らがギルド管理庁に来るまでの痕跡が全く見当たらないのです。─まるで、突然そこに現れたかのような感じです。…正直、気持ちが悪いです」
「…そんな事、あり得るの?」
「─あり得ないですよ! 凄腕のハッカーだとしても、この私でさえも無理ですよ! ALICEの監視から逃れるような物です。それか、そもそもALICEの管理化から弾かれ─ん、ちょっと…待っててくださいね」
そう言って、叶ちゃんが忙しなく動き始める。
─これはいつもの光景だ。
集中モードに入ると彼女は良くこうなる。
「あー、有りました! 有りましたよ! 唯一の人間ですよ! ALICEの適性検査でエラーで弾かれた人間! 処置の仕方は対応が分からなく、当時の発見を恐れた学長が勝手に放逐して、その後は行方不明。その勝手に証拠を隠滅しようとした、学長は矯正施設行で…あー、ダメですね。精神に障害を起こしては自殺しています」
「…その、叶ちゃん?」
「なんでしょう?」
「エラーって、何なのかしら? 後は、同じイノリさん? が居るなら、唯一じゃ無くなるのではないかしら?」
「…あれ? 確かに変ですね? ─あれ? なんで私はそれが普通だって思っていたのでしょう? 紗奈さん、良く気付きましたね?」
「─いえ、私もなんだか漠然とした直感が働いた気がするだけで、この違和感は詳しくは何なのかは分からないわ」
確かに、違和感を軽く覚えた感じだ。
以前なら感じなかった小さな違和感だ。
─何故?
ランクアップの影響?
それとも直感スキルの影響?
「えーと…エラー…おっかしいですね? エラーって言う言葉の詳細も、該当の事件に関しても─詳細も何も無い? ─おかしいです。伏せられてる? ─どういう事? でも、私…なんで─さっきは堂々とエラーって、言ったんでしょうか? ─え? なんか…気持ち悪…─ゲェ」
「ちょっと、叶ちゃん!? 誠一郎くん! ─袋! あ、後はどうしたら!」
「─紗奈さん! 落ち着いて下さい。とりあえず、背中を撫でて、叶さんを落ち着かせてあげて下さい。袋は今─私が用意して来ますので!」
「…う、うん! ほら、叶ちゃん、大丈夫よ」
「す、ずみま、ぜん…。でも、今も─考えてないと、思考が逸れそうで…紗奈さん、すみません。─そのまま撫でてて下さい。考え続けます、ので…」
「大丈夫?」
「…」
私の言葉はもう既に届かない位に、叶ちゃんは思考モードに入ったようで、ずっと苦しい表情を浮かべつつも、考えるのを意地でも止めない構えのようだ。
私はとりあえず、叶ちゃんの背中を撫で続けるしか出来なかった。
「…わか、り、ま─した。その…紗奈さん、撫でるのありがとう、御座いま、す。なにか、何か─にアナログで、紗奈さん、書き殴って…下さい。電子は、絶対に、ダメ…で、す」
「え、ええ…。今─待ってて、用意出来たわ」
「…読み上、げ、ます。書いてくだ、さい。─エラー、とは、本来存在しない…存在。ALICEの、管理から外れた、異端の…存在。それは逆に、ALICEを管理出来る、可能性の…存在。過去にその存在は─確認されていて、その存在は、ALICEの組み上げに、関連した…人物で…居た、はず。データは、そこで、抹消され、てい、ます。そして、エラーの…存在は唯一で、す。2人は、おか…しい、です。イノリという、存在は、ALICE管理下の住民…コードに、は、引っ掛かりませ、んで、した─」
「叶ちゃん!? ─叶ちゃん!」
そして、私が書き切ったと同時に叶ちゃんは鼻血を吹き出しては気絶した。
「紗奈さん、袋を持って来まし…な、何が─紗奈さん?」
「誠一郎くん! 叶ちゃんが!」
「と、とりあえず! 救護室へ移送を手配します!」
「─え、ええ! お願い!」
何となく、叶ちゃんからの言葉を書き切ったメモ用紙は残しておいてはいけない気がして─私は咄嗟に胸ポケットへと仕舞い込んでは、運ばれる叶ちゃんと共に救護室へ向かうのだった。
「一命は取り留めたそうで良かったです」
「─う、うん」
「紗奈さん? …どうしました?」
─ランクが気付きの原因?
…それともスキルが何か影響を及ぼしてる?
そうなると、私と誠一郎くんは同じランクでスキルも直感スキルは保持してるし、同じくらいの構成量のはずだ。
…大丈夫かしら?
─ううん、きっと…大丈夫。
「ねぇ、誠一郎くん。これ、読める? 気分、悪くなったりはしない?」
「メモ用紙、ですよ…ね? ─そうですね。 …少し頭痛はしますが、大丈夫そうです」
「…分かった?」
「─分かりました、が。これはどんな影響なんですかね? 思考を掻き乱してくるような感じがしますが」
「叶ちゃんは私達と違って、ランクかスキルも─どちらも低いから、多分…無理を、無茶をして、ああなってしまったんだと思うの」
「…なるほど。確かに、前後関係を見るとそうなりますね。そうなると、怪しいのは…」
「「─ALICE」」
ズキッ─と、その瞬間に─私の脳が考えを拒絶しようとするかのように、同時に強烈な痛みが走る。
「これ、なんなのかしら…?」
「とりあえず、この見解は─私達の中で伏せておきましょう」
「そうね。多分…叶ちゃんもあの様子だと、目覚めた時には忘れてそうな気がするから」
「…それか、これは今思った可能性の一つですが、私達みたいにランクやスキルを上げれば、違和感に抗う事が出来るのかも知れません」
「そう…だと、良いわね」
「ですが、目下の所は─確かめる為にも、会うべきでしょう」
「カズキさんと、イノリさんに…ですね」
「ええ。きっと─それで何かが変われる気がすると、私は期待したいですね」
「…分かったわ。そうなると、明日は早速─会いに行ってみましょう。きっと、会えると信じて」
「─ええ。まぁ、その為にもレポートと情報をまとめ上げるのを頑張りましょう。私も手伝いますから」
「うっ─誠一郎くん…。頼りにしてるからね」
「ええ、私も期待してますよ。紗奈さんの頑張りに」
私は心なしか、少しだけ遠い目をしつつ─しかし、心の片隅では明日に向けての決意を固めていくのだった。
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