ALICE.23─八重森 紗奈【公安局刑事課一係統括】
「シッ─！」
私の一刀の下で、スパッと綺麗に斜めへ斬り裂かれてはトランプ兵が床に崩れ落ちて行く。
私の渾身の抜き身の一振りだ。
ランクアップと戦闘補助ツールの影響か、随分と冴え渡った一閃だった気がする。
「紗奈さん、そちらは─って、流石ですね」
「誠一郎くんも─お疲れ様」
彼の方も短剣で、その首を掻き切ったのだろう。
トランプ兵がズルリと床へと崩れ落ちていた。
スルリと気配を感じさせずに、相手に接近しては首へと短刀を突き付ける光景は探索を始めてから、幾度か私は見ている。
「ですが、やはり2ですね。少し─体感ですが強くなった気がします」
「誠一郎くんも？ 私も刀の入り具合がまた変わった気がするわ」
トランプ兵は2になってから、確かに感触が変わった。
些細な違和感だけれども、それで命を掬われる可能性は決して無いことは無い。
「とりあえず、慎重に行くしかないでしょう」
「そうね、誠一郎くん。お互いにお互いを助けられる範囲で動きましょう」
「それにしても、結構日数が経った気がしますが地上は大丈夫でしょうか？」
「どうかしら？ でも、１つ言えるのは良くなってると言うことは無いと言うことでしょうね」
「─それは同感ですね」
そして、時たまトランプ兵と私達は邂逅を果たすが、戦闘は必要最低限に留めてはセーフゾーンを探し、見つけた私達はやっと、ゆっくりと腰を降ろすことが出来ていた。
「これ─そろそろ。経験値の割り振り方を考えないとダメかしら？」
「私もそれは思っていました。紗奈さんはどうしますか？」
「─え？」
「私は紗奈さんのサポートですので、紗奈さんの足りない面を補える構成にしてみようかと」
「な、なるほど…。でも、良いの？ それで─」
「私が紗奈さんから離れる事は一生無いですから、その時が来るとしたら─私と紗奈さんの絆を死が分つその時だけです」
「誠一郎くん…。ううん、死んじゃダメよ。私には貴方が必要なんだから、ね」
「はい、分かっています。そう安々と、この命を投げ売ってなるものですか。その時は貴女を守る時だけですよ」
「もう…」
「…」
「ここをもし、抜けられたら…」
「─え？」
「少しは、私と誠一郎くんの関係も─進んでも良いよ、ね？」
「…はい」
「言質取ったから、ね？」
「…生き残りましょう、絶対に」
「ええ。最初は調査の一環で入ったけれども。ここは地上とは違い、まるで別世界だと思うわ」
「トランプ兵達も無限に湧いているようです」
「とりあえず、今日はこのセーフゾーンで休んで、明日は3層を見てみましょう？」
「そうですね」
そして、セーフゾーンで私達は休んで、次の日に3層に挑んだは良いものの、3のトランプ兵は2とはまた強さが変わっていては、身の危険を感じた私達は撤退を余儀なくされるのだった。
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