ALICE.21─上限。
「単体だと行けるが、複数体になると─面倒だな! これが改めて、3か─!」
「気をつけて、連携してきてる」
「ああ、分かってる。それに─既に見切っている!」
トランプ兵達のハートとダイヤが示し合わせたかのように右と左に分かれては、同時に攻撃の手を合わせては連携するように攻撃を仕掛けて来ていた。
俺はその攻撃をギリギリで躱しては、掌を翻すように手に持った短刀を一閃させてはトランプ兵達を倒していく。
─チラッと、イノリの方を見てみてはスペードとクローバーの組み合わせだ。
「色が同じく仲良しって、事か?」
「それは、分から─ない!」
とりあえず、イノリの方もやる事は同じだ。
ただ、俺達の前に立ちはだかる障害なら倒すのみだ。
少しは苦戦するかと思ったが意外と手応えはアッサリとしていたのか、危険に陥る事も無く、イノリはトランプ兵達を倒して見せた。
いや、そういう風になる様に、ランクアップと戦闘補助のツールを、俺達が買って来ただけか。
最初の気絶した時のスキル購入の時からも、俺達は小まめに、とりあえずは下地の為にも、細々と戦闘補助ツールを購入してはスキルレベル1を生やし、そこからは戦闘をこなす中で、独自に伸ばしていっている。
俺自身、気付かない内に自然と使いこなしているようで、勝手にスキルが伸びてる物も幾つか散見している。
「色々と学んで下地を広げて、バランスを整えるのが大事」とは、イノリの言葉だ。
──ランクアップ30。上限に達しました。
目の前のトランプ兵を倒しては、俺達は経験値をランクアップに割り振った際に、そのような通知が表示されていた。
イノリの方も俺と同じくランクを30にしたらしい。
「…上限?」
「そうみたい?」
「もう、伸ばせないって事なのか?」
「…分からない。けれども、上限というなら、解放もいつかはされるはず。それだったら、今は余った経験値は補助ツールになるべく注ぐべき」
「あー。まぁ、確かにそれが順当だろうな。成長はバランス良く、だろ? それにスキルレベルの要求値が高くなると経験値の必要購入量も上がるから、少ないのからか。それとも、高いけれども、スキルレベルが1なら、それから取るべきなんだろ?」
「…カズキ、分かってきた?」
「─まぁ、な。何度も言われてたら、それは分かってくるさ。そうなると、この並列処理とか思考的なのもレベル1だけれども、重要そうだな。意味も分かるし」
「取れるなら、オススメ」
「なら、スキルレベル1の高い経験値購入量のヤツを狙って取っていくか」
「多分、それが正解かも」
「正解って、不正解もあるのか?」
「…ある。だから、パーン! になる可能性も」
「おい、怖い事言うな。俺は、大丈夫だよな?」
「多分、そういうのは買えないようになってる…はず? 配慮されてるはず」
「その配慮って言葉、本当にご都合主義だよな」
「確かに、そう。でも、大丈夫。カズキには私が付いてるから」
「へーへー。それは心より有難う御座います」
「…もっと、感謝して」
「─お、おう」
否も言えない迫力にとりあえず、頷いてしまった。
とりあえずは、俺は決して圧に負けた訳では無いが、もう暫しの間、イノリに感謝の言葉を述べるのに時間を掛けてしまった。
流石に、感謝し疲れて、疲れを悟られないようにポケットから煙草を取り出しては格好良く吸ってみるが─様になってるか、俺?
「上からの移動は暫く無さそう?」
「…警察か?」
「うん」
「確かに、結構期間というか、スパンが空いてる気がするが、音沙汰が無いな。…死んだか?」
「そんなに苦しい選択はさせないと思う。…たぶん」
「─まるで、お前が苦しめてるようだな」
「…」
「わりぃ、何でもない。そんな表情すんな」
「カズキは優しいね」
「優しくなんてねぇ。ただ、気まずいだけだ。イノリの事情も知らずに発言したのが、ただ俺にとってバツが悪いだけだ」
「…ごめんね。でも、話せない」
「いつか、話してくれるんだろ?」
「─うん。約束」
「なら、今はこのままでいい」
─丁度、煙草が吸い終わる。
何となく、気分が良いと感じる。
「さて、どうするか? 下にでも降りるか?」
「ううん、ちゃんと着実に行きたい。ここで稼げる経験値はちゃんと稼いで、それで得られるものを得ては足りなくなったり、少なくなったら降りるべきだと思う」
「その考え、嫌いじゃない。俺もそれに賛成だ。命は1つしか─いや、経験値は限られてるからな」
「うん、行こう。とりあえず、あっちに沢山居そうな気がする」
「俺もそんな予感はする。危険察知のせいか、危ない気配もするけどな。まぁ、越えられる障害だとは思える」
「なら、行こう」
「─あいよ」
そして、俺とイノリは駆け出す。
とりあえず、狩り尽くす勢いで三層のトランプ兵を片っ端から片付けて行く。
どこから湧いてくるのか、トランプ兵は通路から、時間が経過すると現れてくる。
時間の許す限り、セーフゾーンを確保しながら俺達は狩りに狩り続けて、上の階から、警察が降りて来たのを察知しては、また下の階層へと降りるのだった。
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