ALICE.19─3。
「─ッ! 少し速くなったか?」
「数字の3だから─」
「1つ数字が違うだけで、体感でも、こんなに変わるのか!」
「それが数字の違い!」
「これ、13とかどうなるんだ?」
「分からな─い!」
イノリの刀が一閃の下、閃いてはトランプ兵を斬り裂いて戦闘は終わる。
あれから、警察の部隊が二層に降りてきたのを肌で感じた俺達は、更にもう一層降りては三層に来た形だ。
「─それにしても、この階層は数字の3みたいだな」
「─1と2の数字は見えない」
「だな」
甲冑のどこかには刻んだように描かれているが、ある程度、描かれている箇所の目星は効くようになったのは良いが、ALICEのシステムが更新されたのか、相手の情報が軽く出るようにもなったので、ある意味、不毛な努力になってしまっていた。
「どのくらい、潜るんだろうな?」
「─分からない。それに人口に対して、潜ってる人の割合が少ないと思う」
「あー、警察が降りて来てるからな? もしかしたら、公安と警察辺りが独占してるのかも知れないな」
「…ALICEの目的は分からない。ただ、少なくとも、潜ってる人を少なくする行為は求められてはいないと思う。…だからきっと、これから先、今の状況が公安や警察が独占してるというなら、その展開を壊すような何かがあるか、そういう風になる様に仕向けて来る可能性があると思う」
「イノリ? …やけに知ったような口調で言うな? 何か、知ってるのか?」
「─秘密」
「出た。また、それかよ」
「うん。…ごめんなさい」
「まぁ、良いさ。煙草吸わせてくれないか? 敵、来ないだろ?」
「…たぶん。私の方でも敵の気配は感じない」
脳の拡張の効果か、気配察知とか、危険察知みたいな第六感みたいな感覚もスキルとして売られている状況だ。
有り難く購入したけれども、やけに最初は違和感と、何とも言えないムズムズ感が凄かった。
直感スキルの方は戦闘中に閃きというか、敵の攻撃パターンが冴え渡るように見える感じになった事がある。
その他、細部のスキル効果では、筋力強化とかも有るから、戦闘中に一時的に身体の使用率を跳ね上げる形等も取れる。
まぁ、イノリの説明を聞いた後だと色々とスキルに関して思う事は複雑だ。
色々と言うのは主に、ランクアップをしては基礎体力の向上が伴わない状態で発動するというか、無理矢理身体を動かしたら、パーン! なのは、想像に難くない事などだ。
そんな事を一瞬でも脳内で想像したら、ブルっと震えては美味しい煙草も不味くなって来てしまう。
「それにしてもセーフゾーンとか─増えたよな?」
「向こうが、多分…要望に応えてるんだと思う」
「…要望ね」
「うん、前に話した通り。配慮されてるはずだから」
「配慮。…配慮ね」
あー、そんな事。
ALICEの穴に潜った時に、イノリが言ってた気がするな。
もう、潜ってから? 随分と日数は経った気がする。
「…シャワーと風呂、入りてぇな」
「私もそれは同意」
「一緒に入るか?」
「─カズキがそれで良いなら」
「!? ゲホッゲホッ。おい、大人をからかうのはヤメロ」
「そっちから、からかってきた」
「そうだけどな…」
ったく、不意打ちは止めて貰いてぇ。
むせてしまったら、煙草を吸う気力が幾ばくか消えた気がする。
でも、後少しで吸える箇所も無くなってしまう。
大事に俺は煙草をギリギリまで吸いきっては、重い腰を上げる。
「とりあえず、行くか?」
「うん。多分─あっちの方が良い感じ」
「分かるのか?」
「…分からない。けれども、直感スキルはカズキより、私の方が上」
「…へいへい」
正直に直感なんて、宛になるかは俺には分からないが。
まぁ、イノリに従ってみるのも、俺は吝かではない。
イノリの指差した方向へと進んでいくと、数回のトランプ兵達との戦闘があったが、無事にセーフゾーンを見つけられては俺達は束の間の休息を、改めて味わう事が出来るのだった。
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