ALICE.17─折崎京也。
「─おぅらぁぁ!!」
ガシャン─! と、トランプ兵の首が、俺の拳で吹き飛んでいく。
「─チィ! やらせるか、よッ!」
ガキン─! と、短刀で迫りくる、もう一方から襲い掛かって来たトランプ兵の片手剣を防いでは、俺はトランプ兵の懐に潜り込んでは胸元を、もう片方の手をもって手刀で貫く。
─ガシャッと、俺が胸元に食い込んだ手を引き抜くと、最期の1体であろう、トランプ兵も俺の前に倒れ伏した。
「はぁはぁ─終わった、かぁ?」
俺が、ALICEの穴に入り込んでからというもの、嫌に戦闘が続いているような違和感が、俺に押し寄せて来ている気がする。
とりあえず、ランクアップはしとくべきだと今は確信を持って、俺は言える。
経験値を得て、直ぐにランクアップをしたからこそ、公安を退けられた経緯から、その気付きを得た俺は、経験値を獲得次第、ランクアップを小まめにするようにしていた。
まぁ、それだけだと味気無い訳では無く、単純にランクアップが取得経験値量に応じて、支払う為の経験値量が見合わなくなったと体感でも感じたら、他へと有効活用の意味合いも含めて、スキルを経験値ショップで漁っては買ったりも、俺は小まめにしていた。
「なんとか、俺は逃げ切れたのかぁ?」
─あの最後に聞こえた警察か、公安なのかは分からないが、奴らは追っては来てなさそうだ。
あれから既に数日は経過している。
それに、このALICEの穴の中はマズい。
もやしが生えた様な奴らじゃ、逆に良い鴨だ。
─そうだ、だからこそ、現れて来るとしたらトランプ兵だ。
まぁ、俺に関しては奴らを鴨にしていたが、そう、何度も戦える訳じゃない。
俺は一人で、何よりも人間だ。
空腹も睡眠も精神的な疲れもある。
残念だが、すこぶる認めたくは無いが、俺だって、ずっとは戦えないのだ。
「…だが、アレには救われたなぁ」
意識がやはり、流石の俺でも、連戦ブッ通しだと飛びそうになった─その時にセーフゾーンという、変な場所を見つけた時は、俺も頭が遂に逝っちまったかと思ったが、そんな事は無かった。
あの時の俺はどうせ死ぬなら、試す価値はあるだろうと、セーフゾーンという名前に一縷の希望を持って、身体を投げ出しては飛び込んだが、先程まで戦っていたトランプ兵は近付いても来ないし、あんなに俺を執拗に追いかけては戦っていた奴らが、まるで俺への興味が冷めたのか、はたまた失ったのか、俺を追い詰めて来るのを辞めやがった。
何よりも、俺の目に飛び込んで来ては、最初は信じられなかったが、ご丁寧に小屋もありやがった。
─あそこで英気を養えたのはデカかった。
あれが無ければ、俺はきっと、今ここに立っては存在してはいないだろう。
安心出来る拠点というのは、それだけで大事なのだ。
その日は経験値ショップで、俺は食料を食べれるだけ食べては、しっかりと身体を久し振りに熟睡させて休ませる事が出来た。
そして、心身共に癒せた俺はトランプ兵共を、いとも簡単に、何よりも今までより冷静にブチ殺せるようになったという寸法だ。
─それ以降はセーフゾーンを目指すように進んでは、片っ端からトランプ兵を俺は殺し尽くしてる。
「…地上? 外はどうなってやがるんだろうなぁ」
─ふと、たまに上の事を考えちまうが今の俺には関係ない事だと思い改めた。
良くも悪くも、ここ、ALICEの穴の中は俺にとって、すこぶる居心地が良かった。
俺を縛る者も、疎むような者の目も無いから、穴の中だというのに、閉塞感を感じる事は俺には無く、存外開放的だったと言えるだろう。
「─ったく、今さら考えても仕方ねぇか。それにあいつらは、あいつらで上手くやるだろぅ? あいつらだって、バカじゃねぇんだ。俺が居なくても、ある程度は上手くやって貰わなきゃ、やってらんねぇよなぁ?」
ふと、地上のアングラ連中にも意識を割いてしまうが、俺の耳が最初に音を拾っては、暫くしたら俺の目に見えてくる現状に思考をシフトする為に戻していく。
─ガシャン、ガシャンと音が聞こえてくる。
「あれは、俺の獲物だぁ。誰にも、決して譲らない。ここは、今はもう既に、俺の縄張りだぁ!」
舌なめずりなんて、いつ以来だろうか。
欲望が止まらいなんて、いつ以来だろうか。
ここは、俺は─今は自由だ。
俺を縛る者も、蔑む目も、何も無い。
ただただ、そこに有るのは己自身だ。
「よお、トランプ兵? 悪りぃが、俺の経験値になってくれや?」
俺を見つけたトランプ兵は、それはまるで最初から決められたかのように、俺へと殺到してくる。
それらを躱して、最初の挨拶で急所へ一突き。
そして、挨拶を終えては俺はトランプ兵達と本格的な戦闘へと突入する。
時には正面から打ち合っては、蹈鞴を踏んでる所へ─急所へと手刀を突き入れる。
それだけで大抵のトランプ兵は崩れ落ちては倒れ伏していく。
「─はははは! 愉快だなぁ! 愉快だぁ! 実にいい!!」
ククク、可笑しくなってきちまう。
誰が俺を見下す?
誰が俺を縛り付ける?
─俺は俺だ。
俺にとって障害があると言うならば、そんな立ち塞がる障害など、俺はこの拳でぶっ壊して先へと進むだけだ。
「おらッ! 京也様のお通りだぁ─! ッて、な!」
ところ構わず蹴りを入れると、ランクアップの影響か首へと蹴り当たった─トランプ兵の首がスポーンと抜けてはぶっ飛んで行く。
「まだまだ、俺は終わらないぞ! そうだ、終わらせてたまるかぁ! 俺は終わらないぞ!! 俺はもう、立ち止まらないぞ─!!」
俺は再び現れたトランプ兵共を見据えては、一気に駆け抜けて─拳をぶち当ててはトランプ兵共を蹴散らしていく、その勢いに乗って、俺は次のセーフゾーンを目指しながら、前進を本格的に開始していくのだった。
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