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【ALICE】─全てが経験値で賄われる世界に落ちた世界。  作者: 御伽ノRe:アル


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ALICE.15─渡会 護。

「諸君、この忙しい中、良くぞ集まってくれた。これは我々の、警視庁としてのプライドも掛かっている。これから通達される任務に心して挑むように。諸君らの働きが我々の、警視庁の動き、今後の我らの存在を左右していくと肝に命じたまえ─」


警視庁総監からの指示だ。


所詮、署員の俺達はその指示に対して、何を思おうが決して、否とは言えない。


だが、確かにこれから指示されるだろう任務は、人を守る為に繋がるはずだ。


俺は、いや、俺達の立場だからこそ、そう信じては突き進まないとやっていけないのだ。




─警視庁刑事部捜査一課 渡会 護。


それが俺の警視庁の中でも、俺自身の社会の中でも、俺としての存在の肩書きだ。


そして、俺以外にも署員は既に、数多く集められては物々しい雰囲気に現場はなっている。


そう、俺達は確かな指示を持っては招集させられ、この観光スポットにもなっている代々木公園に集まっていた。




「公安は先んじて、既に我々よりも早く動いている。私は、その先んじた行為の必要性、その必要性は確かに分かるが、警察に対してのお上の対応が杜撰なのが許しがたい。我々は市民の平和の為に今までやって来た。それはこれからも決して変わらん。変わってはいけないのだ。だからこそ、私達の島の領分を公安なんかに、楽々と我が物顔で先に踏み荒らされるな! 我々の平和は我々が築くのだ!」


確かに、多少は違うが、こうも似通った組織内でさえ、俺達は足を引っ張り合うのか。


俺にはその必要性とやらが、さっぱりと分からないが。


協力関係は築けなかったのか?


いや、それも土台無理な話か。


ALICEによって、適性が振り分けられた時点で、向こうはエリートという印象が拭えないのだろう。


だから、プライド等という言葉が使われていたのだ。


所詮は平和という大きな目標を掲げる中で、俺達自身の小さなプライドがそれを掲げているのかも知れない。


全く、お笑い草にも程がある。


確かに向こうは対テロとしてのエリート、こちらは平和維持としてのエリート。領分は違うが、同じ安全を、平和を守り合う中のエリート同士だと認識すれば、まだしも、その溜飲は下がりそうなものなのに可笑しな事だ。




「護! おい、護!」


「─ッ! 申し訳有りません」


「大丈夫か? 緊張してるのか?」


「いえ、そんな事は」


「大丈夫だ。色んな噂が飛び交ってはいるが、銃の使用も我々は許可された」


「…それはALICEから?」


「いや、総監の方の認可で使用の許可を出したはずだ」


「…」


「そんな訝しげな顔をするなって、誰に見られているかも分からん。だが、多少は俺にだって、分かってるさ。だがな、ALICEが全てではない。俺達は俺達で平和を守りたいって、心から思ってるだろ? 総監もきっと我々と同じ気持ちさ」


「…はい」


本当に、そうだろうか?


この俺の上司のように総監は、そのように果たして考えているのだろうか?


この上司は確かに人が良い。


人が良い故に読み間違えていないだろうか?


この、決定的な危険の前でさえ、その人の良さで、その眼を曇らせていないだろうか?


俺の疑問が未だに続いている、この作戦は本当に必要性があるのだろうか、と。


いや、そもそも指示に、俺達署員が断れるはずも無いのだが─。


「ほら。護、行くぞ!」


俺の上司はそう言って、先にALICEの穴へと潜って行った。


いや、これは正式な指示であり、任務だ。


俺も慌てて、上司を追うようにALICEの穴へと潜ったが─これが俺達の二度と戻る事は出来ない、決定的に甘い考えだったとは、この時の俺はまだ知る由もなかった。




「お、おい! 銃が効かねぇぞ!」


「いや、怯んでる! 怯ん、で、る…はずだ!」


「撃て! 撃ち続けろ!」


「く、来るな! うわぁぁぁあ─!!」


俺達は今まさに、ALICEの穴に潜っては最初に洗礼を受けたと言っても良いだろう。


トランプ兵達が俺達の発する銃撃音に引き寄せられたのか、どんどんと大量に穴の奥から現れたのだ。


そして、俺達にとって最悪だったのは、後ろに未だにポッカリと空いている、穴の入り口からは決して外に出られない事だった。


それが俺達へと残酷な程に拍車を掛けては地獄へと俺達を叩き落していた。


─確実に死神という存在が居るのなら、その鎌を携えては俺達に近寄っては、その鎌を今か、今かと首筋に当てては笑っているとさえ錯覚してしまう。


逃げ道が既に失われていて、俺達の武器は主に銃しか無く、兎に角、俺達は混乱の果てに撃ち尽くしてしまった。


きっと死神は盛大に笑っているだろう。


そして俺達の─俺の最悪は、地獄は一歩先を歩いた。


「くっ! ばっかやろ! 下がれ──ぐはっ」


上司が1人の警察官を庇って、トランプ兵の剣に斬り裂かれては、簡単に経験値を全損したのかは分からないが、本当にプッツリと生命という糸が切れたように事切れてしまった。


そして、トランプ兵にも経験値のシステムは適用されてるのかトランプ兵の数字が2に書き変わっていた。




「─ッ! 皆! 経験値ショップで武器を購入するんだ! 急げ!!」


─Aちゃんねるを信用してた訳では、決して無い。


ただ、武器が有用だと書かれてた。


ただ、この絶望的な状況で、ふと思い出した。


…証拠などは無い。


ただ、俺にはそれが地獄に吊るされてきた一本の生命への糸に見えた。


ただ、それに縋るしかない状況だっただけだ。


「…剣くらいなら、剣道と同じか?」


とりあえず、経験値ショップで剣を購入したら、俺の手には剣がどこからともなく現れては確かな重みを持って現れた。


その剣を自然と構えては、トランプ兵の攻撃を潜り抜けるように動き、胴に1本入れる感覚で切り裂くと、しっかりとダメージを与えられたようだ。


そのまま、正面から面を上から叩き斬ると、あんなに苦戦していたトランプ兵は呆気なく横たわっていた。


「─いける! いけるぞ! お前ら! 武器だ! 経験値ショップの武器を使え!」


「あ、ああ─!!」


俺の今の一連の勇姿を見たのもあるのだろう。


生き残った者達の目には、確かに光が戻って来ては、それぞれ手にした銃を放り投げ、俺達署員全員が武器を購入し─所持した武器を構えて、今まさに再び襲い掛かろうとしてくるトランプ兵達と向き合う。


「行くぞ─! 先陣は俺が斬り込む! 続け!」


「うおおお─!!!」


そこには正義、平和等の志は既に存在し得なかった。


【生きる】


俺達のすぐ傍では未だに死神が笑っては今か今かと、その俺達の命を刈り取る為の鎌を構えている。


─既に俺達は地獄に片足を突っ込んでしまったのかも知れない。


だが、俺達はそれでも生きる。


ただ、その目的の為に獣の如く、俺達は目の前のトランプ兵へと突き進んで行くのだった。

御一読頂き、誠に有難う御座います。

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