ALICE.14─普通。
「カズキ、そっちに3体」
「ああ、分かった─」
動作を確認するように片手剣を振って、斬り結んでは─弾き返して、その手を返しては─更に斬り裂いて、そして丁寧にトランプ兵達を倒していく。
「ふぅ…」ッと、倒し終えたら少しだけ深めの息を俺は吐く。
トランプ兵達は良く言えば、模範的な動きをして攻撃を仕掛けてくる。
パターンを掴めば─確かに、以前イノリが言っていたように攻撃とはリズムの様なものと同じだと俺も感じていた。
感覚的に例えるならば、相手に合わせて攻撃を当てて行きつつ─ポン、ポン、ポンと相手の呼吸に、リズムに乗っては合わせて倒していくという具合だろうか?
「…慣れた?」
「まぁ、こんなに戦ってればな」
俺とイノリは既に最初の層では充分に探索を終えては諸事情も有り、現在活動する階層は下に一階層降りていた。
だが、階層が変わったからといって、何かが大きく変わる訳でもなく、相も変わらずにトランプ兵は出て来ているが─意識をそちらに重点的に向ければ、トランプ兵達の出現に際して相対する、その頻度が増えたと肌感でも俺は思っていた。
…こう、なんだ?
─ゲーム的には敵? モブ? の湧きが早いと言うんだったか?
こんな所で、少しだけ知識の疎さが俺自身で自覚してしまうが、今現在の状況では、その知識の必要性は低いので、直ぐに思考の外に俺は追いやった。
「─あいつらは、今も上の階に居ると思うか?」
「…たぶん」
先程のあった─諸事情だが、今現在、更に階層を降りて二階層と言える場所に、俺達が下に降りる事情の元になったのは、警察だと思われる連中が、その時、俺達が活動域としていた一階層に潜り込んで来たからだった。
警察だと思われる連中は、それはもう、本当に驚く位にトランプ兵達に盛大に銃をぶっ放して攻撃していたが、その余波を確認に来ていた、俺に流れ弾が当たったのには驚いては肝を冷やしたが、そんな事は些細な事だと思える位に、更に驚いたのは、警察だと思われる連中の使う、銃の流れ弾では俺の身体に傷が一つも付かなった事だった。
「今日は疲れたな」
「…うん、私も」
「とりあえず、休むとするか」
俺達のすぐ近場に、丁度良い感じの腰掛けに合った岩があったので、そこに腰を降ろしては─ポケットをまさぐり、俺はお目当ての煙草を取り出しては、おもむろに火を点けて、ゆっくりと味わうように吸い始める。
「はぁ~…」─ッと、綺麗な形で、煙は俺の口から戯れのように、吹かれては出ていくのを見るに限ると、ジンクス的には、これより先の俺達の幸先は良いのだろう。
「…そろそろ、他の武器も試す?」
「あー、スキルだけ取ってるだけだからな? だけれども、武器だけ増やしても、増えた武器はどうするんだ? 単純に持っては運べないし、無駄にかさばるだけだと思うぞ?」
「収納スキルが経験値ショップで増えてる」
「─はぁ? どんな仕掛けだよ」
「でも、取り出すのはもう目の前で当たり前にしてる」
「…確かに、な」
そうだった。
今の俺の腰に携えてる、この片手剣はショップで購入したもので、購入した際に、どこからともなく、俺の手元に現れた代物だった。
「…なんか、釈然としないな。言われて気付いたが、違和感が凄いぞ、これ?」
「うん、それが普通の反応」
「普通の反応じゃないやつも居るって、言いたいのか?」
「…むしろ、普通じゃないのが普通なんだと思う」
「…どういう事だ?」
「私も、カズキも、少なからず脳内に埋め込まれているマイクロチップから、ALICEの影響を受けてる」
「─ああ、皆そうだよな? それに脳内へのマイクロチップの挿入、要は─埋め込みは国民の義務だからな」
「…でも、私とカズキはその影響を─取捨選択して受け取る事が出来ている」
「…俺のエラーの原因は、その一連の処理が出来ているからなのか?」
「─そう」
「お前は、一体なんなんだ?」
「…話せない」
「また、それか。あー、まぁ、いい。それで? だから、普通じゃないのが普通っていうのは、詰まる所はどういう事なんだ?」
「ALICEからの影響を常に受けてるのが普通って言う事。思考がどういう風に書き換わってるかは、私も分からない」
「…急にゾッとするような、ホラーな話を展開させてないでくれ」
「でも、事実」
「はぁ…」
先程までの美味しい、味わい深い煙草がなんだか─段々と普段は美味しいのに、どうも不味く感じて来てしまっていた。
「とりあえず、色々と分かった。それで話の本筋は収納の話だろ? 俺には違和感があるが、その違和感は他の連中には薄いって事で認識は間違えてないか?」
「…たぶん、大丈夫」
「…はぁ、多分ばかりだな? だが、影響を受けてない俺らには分からないって事か。まぁ、ご丁寧に用意してくれてるんだ。─購入して使うとするか。これもスキルレベルが有るって事は、レベルが上がるとやれる幅が広がるって認識で正しいか?」
「分からない。…けれど、沢山の武器が、これを使う事で使えるようなるはず」
「そうだな。情報どうも。そうなると─上のやっこさんが降りてくる前に、粗方、ここでやれる事は全部やらないと行けなくなったな」
「ん、付き合う」
「─ああ、背中は任せたイノリ」
「─私も背中は任せた、カズキ」
そして、また、再び上の階層に居る警察が降りてくる迄の間─俺とイノリは様々な武器を扱っては、コツを掴み、身体へと覚えさせていく作業へと没頭していくのだった。
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