ALICE.1─Prologue。
この度はお目に留めて頂き、誠に有難う御座います。
良ければ、お付き合い頂けましたら、幸いで御座います。
「世界は愚かにも一度破滅の危機に陥りました。諸外国は貧富と富の格差が膨れ上がり、その結果、内乱と戦争が勃発しては、その戦果は収まることを知らず。世界は大戦の火蓋が落とされたのです」
カッカッカッ──と、黒板に教師がチョークで言葉を書き込んでいく。
「チェッ、今時。直接的な書き込みなんて古いってーの」
「こら! そこ、私語を慎みなさい! えー、そして、我が日本もその影響を受けようとしていましたが、我が日本の誇るALICEプロジェクトが決行され、私達はその厳正なる管理の下で、戦火を免れる事が出来ました」
「ALICE様様だな」
「こら、そこALICEを悪く言うと捕まりますよ!」
「はーい」と、やる気無しの学生の声が鳴り響く。
「えー、ALICEとは我が国が誇る最高峰の人工知能で有り、彼女が世界から日本を鎖国へと導き、その周囲では今も、オート化された兵器達が私たちを守っています。そして、食料も改善され、人はこの東京にて生活し、周辺環境は全て、私達の糧の為の場所として存在しています」
「ねぇ、ねぇ。今日は終わったらどこ行くー?」
「そこ! 私語は…って、ALICEから減点されますよ? 全く、最近の若い子らは。えっと、食料問題はこれもALICEのプログラムから品種改良にて、改善。そして、元から推し進められていた国民のマイクロチップの義務化は推進され、今は国民は全てがマイクロチップが脳に移植されてはALICEの管理化の下、平和に生き延びています」
「先生! 外はどうなってんすか?」
「それに関してはALICEに直接、聞くのが良いでしょう。ALICE、お願い出来ますか?」
「現在の外の様子は非公開となっております。但し、それは世界の維持が著しく厳しい状況下の為に、皆様の精神衛生上の処置と捉えてください」
「このように、諸外国は大戦の影響が今も色濃く残っていると思われています。そして、そこ! 私語は慎みなさい。ALICEの採点方式にてレッドラインを越えると矯正プログラムが発動しますからね?」
「は、はい」
「よろしい」
そして、教師はまた、黒板へと文字を書き連ねていく。
人によっては電子上でもその行いは可能で、やはり最近は電子で全てを解決するのが一般的だ。
そして、健全なる絶対的なものとしてALICEの庇護下で人は生活をしている。
ある程度は寛容で許容されているが、犯罪等を行った際は即座にALICEが反応をしては公安局が動いて、取り締まりに遭う。
その後は矯正プログラムの発動だ。
人によってはそのまま帰って来なかったり、廃人になるなど、噂は絶えないのが現状だが。
「えー、それが現在の歴史です。君たちもそろそろ卒業間近、適性試験もそろそろですね? 希望はALICEへと提出するように、後はそれぞれの適性と希望を鑑みてALICEが進路を決めるでしょう。それでは、本日の講義は終わりますよ。皆様、お疲れ様でした」
「「起立! 礼〜」」
そして、学生達は帰っていく。
それが今の、この東京の日常。
そして、いつかの近未来の東京の姿。
日本という部分は東京以外は電力施設や食料施設、エネルギー施設などになり、そして、戦争の影響か温暖化が一気に進み海面の上昇。
人の住む場所も奪われては、その環境も過酷になっていると言われている。
だが、このALICEの絶対的な管理の下の東京は、日本は違う。
唯一の平和を築いてる国家として独立して存在している。
「そんな世界…なんだよな?」
ぼんやりと浴槽に浸かっていた俺は天井を見上げる。
まぁ、そこには湯気が昇っているだけなのだが─?
ピシッ─と、一瞬視界がボヤけた気がした。
いや、ALICEの見る電子情報が書き換わっていた。
「カウントダウン…?」
右上には世界のカウントダウン。
その下には現在の攻略状況。
そして、ステータス? 所持経験値? なんだこれは?
その他、経験値ショップが開かれては色んな戦闘の動きの補助等のツールも開かれている。
購入したら、直接脳内にインストール出来るみたいだ?
そして、ニュースサイトはこの情報が早速トレンド入りしては流れていっている。
「買い物できない!」
「支払いは経験値?」
「待って! 生命が経験値になってる!」
「はっ? 生命が経験値ってウケる」
「日々の生活の貢献値が経験値として精算される?」
「おいおい、詳しく見ようとしたらアップデート待ちとか出てるし、なんだコレ?」
「なんか、穴が発生してる!」
情報が錯綜しているようだ。
ニュースサイトから、Aちゃんねるを立ち上げて見ていると、そんな声に掲示板内は溢れ返っている。
世界の変革が確かに、この瞬間に始まったのだと俺は思った。
「っと、言っても学校に通う習慣というか。両親もALICEの指示に従って生活してるみたいだし、変わらないのかね?」
家の状況はそんなに変わらなかった。
俺もそうだと思った。
ただ、お金が経験値に。
生命が経験値に変わった、だけ? いや、おかしいか。
可笑しすぎて一周回って冷静になろうとしていたのかと、気付いて笑ってしまった。
「アヒャヒャヒャヒャ! 世界は終わりだぁ! なんだコレー! なんだコレー! あはは! ALICEなんて、クソ喰らえだ! あはは!」
そんな声が頭上から聞こえて来た。
ザワザワと周囲が慌てているが、その声は頭上から聞こえていて、俺が見上げた時は男は脳を掻っ捌いてはマイクロチップを取り出したようで、そのまま屋上から俺へと落ちて来ていた。
それを俺はボンヤリと見ている事しか出来なく─。
そして、狂った男は俺へと衝突して─全損した俺の生命、いや経験値が見えた。
そして、俺の視界は真っ暗になったのが俺の覚える限りの最期だった。
御一読頂き、誠に有難う御座います。
宜しければ応援、ブックマーク頂けると嬉しいです。
応援は下の☆☆☆☆☆になります。




