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自転の基準は

 先の動画では、太陽を目印とした1日について説明しました。


 太陽が南中してから1回自転しただけでは再び太陽が南中できないこと。

 もう4分ほど回れば太陽は南中すること。

 1日は地球からみた太陽の動きが元になっているので、自転1回分+約4分の長さになるということ。


 で、よく考えると自転の目印は何なのでしょうね。何を目印にして1回自転したとしているんでしょう。


 解説動画では、最初地球に付いている印(あれは観測者だと思ってください)が図の真上を向いています。ぐるっと回って印が再び図の真上にくるまでが1回の自転になっています。

 でも現実には「図の真上」なんてものはありません。宇宙に何か目印になるものがあるんでしょうか。動かない目印がないと、1回転したかどうかわからないですよね。


 目印は恒星、いわゆる「星」です。恒星は太陽や月と同じく空の上を東から西へとぐるぐる回っています。昼間も、太陽の光に隠れて見えませんが空に出ていてぐるぐる回っています。


 先の動画、地球にいる観測者と反対側にも観測者がいるとします。動画を180度回転して夜空が上になるようにしてみましょう。

 自転が始まる最初の絵で、夜の側の観測者の真上に明るい恒星であるシリウスが見えているとしたら、自転が1回転したときの絵でも真上にはシリウスが見えているはずです。


 しかし解説画を見ると、とても同じ星が真上に見えるとは思えません。横に移動しているのですから、その分太陽のときと同じく角度がつくように思ってしまいます。


挿絵(By みてみん)


 例えば電柱の前に立っているとします。右へ1歩動くと、目の前から電柱が消えます。電柱をみるには頭を左にひねらないといけません。

 電柱が遠くにあったらどうでしょう。10メートル離れた程度では1歩横に動くと、電柱を見るのに少し目線を動かす程度で済みそうです。300メートルも離れたら頭や目をあまり動かさなくても良さそうな感じになると思います。


 地球にとって太陽は遠くにあります。が、それでも自転1回分動くと、もう少し回らないと太陽は真正面にきません。

 恒星はどうでしょう。恒星は太陽とは比べものにならないほど遙か遠くにあります。


 太陽と地球は1億5千万キロメートル離れています。

 恒星はというと、先ほど名前を出した「シリウス」で考えてみましょう。シリウスは太陽から8.6光年離れています。1光年は9兆4600億キロメートルなので、81兆3560億キロメートル離れています。太陽と地球の間の距離の54万2千倍もあります。


 と書いたものの、このままでは正直ピンときません。


 太陽と地球が1.5センチメートル離れているとします。コンパスで1.5センチ広げて円を描くと直径3センチの円ができます。これが地球の公転軌道だと思ってください。この縮尺だと一日に地球が進む距離は0.26ミリメートルになります。定規では測れませんね。普通のノギスなら…… 0.25ミリなら測れますか。


 シリウスはどの辺になるでしょう。8.14キロメートルほど離れたところの点になります。

 地球の公転軌道がメモ帳に描ける程度に小さくしても、シリウスは歩いて2時間くらいかかるところになります。


 8.14キロメートル離れたところにある点を確認した後、頭を0.26ミリ横に動かしてみます。ズレて見えるでしょうか。

 逆に、8.14キロメートル離れたところにある点を0.26ミリ横に動かしてみてもいいでしょう。動いたことがわかるでしょうか。

 

 ズレるとか動くとか以前の問題として見える訳ないやろ! と言われそうですが、その辺は根性でなんとかしてみましょう。実験を真っ暗な夜中に行って、強力な明かりをシリウスとして使えばなんとか見えるかもしれません。

 とはいえ、見えたとしても0.26ミリのズレや動きはわからないと思います。見えるほどの明るさにすると、その光点の大きさで紛れてわからなくなるような気がします。


 0.26ミリの動きじゃ無理なので10センチにしてみると、シリウスまでの距離が3131キロメートルになります。日本最西端の島である与那国島から北方領土の択捉島に達する距離です。どうしましょう、これ。


 ところで、シリウスは太陽に近い恒星なので、この程度の距離ですんでいます。目に見える星は大体近い星が多いですが、それでも太陽から数十~数百光年とか離れています。

 シリウスより10倍も100倍も離れた星――80キロメートルとか800キロメートル離れたところにある点を、0.26ミリ頭を動かしたり、逆に点を横に動かしたりしたところを想像してみましょう。ズレて見えるでしょうか。動いて見えるでしょうか。


挿絵(By みてみん)


 星ではなく、銀河系の外にある電波源を目印にしてもいいですね。数百万光年とか数億光年離れているところを目印にすれば、ズレとか一切問題なくなるでしょう。


 ということで、自転の目印に恒星が使えることはなんとなくわかったかなと思います。夜中に何らかの星が南中してから再び南中するまでの時間が1回の自転にかかる時間、自転周期になります。

 このように恒星の動きを元にした1日を恒星日(こうせいじつ)といいます。


 「ズレて見えるでしょうか。動いて見えるでしょうか。」と書きましたが、シリウスのような近いところにある恒星なら、非常に精密な観測ができればズレがわかります。とはいえ1日や2日程度の公転移動距離ではなく、地球の公転直径(3億キロメートルほど)離れた箇所からのズレを1年~数年観測してやっとわかるというものでした。これも地上からの観測では大気の影響などでどうしても難しく、遠くても100光年や300光年程度までになるようです。


 現在では大気の影響がなくなる宇宙空間からの観測が可能です。そういった観測をする人工衛星が打ち上げられていました。興味があれば「ヒッパルコス衛星」「ガイア衛星」で検索してみてください。


 ズレがわかると、三角測量の要領でその星までの距離がわかります。ズレがわからないほど遠くの星までの距離を知るには別の方法を使いますが、その辺も興味もたれたら調べてみてください。「セファイド変光星」あたりから調べるといいかもしれません。


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