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「近くの喫茶店行こうか。そこオムライスが美味しいんだよ」

小さい声で囁くように彼女は言った。

「読み途中だったけど言いの?」

負けじと僕も最大限に声のボリュームを下げるようにして囁く。

 「平気。ちょっと待ってね」

彼女は静かに席を立ち、ワンピースのしわを取るようにお尻を撫で、小説と手帳をリュックにしまい、背負った。

 「準備完了っ」

「うん。行こうかっ」

涼香がお勧めした喫茶店は、図書館前の斜めな道を少し下り、小道に入った所にあった。

外見は少しレトロな感じで、喫茶店の入り口の周りには、小さな向日葵が幾つか謙虚に花を咲かせていた。中に入ると暖かいオレンジ色の蛍光灯をつけたシャンデリア風の照明器具が天井に吊るされており、中世ヨーロッパな感じを漂わせていた。(勝手な僕の想像上だが。)お店は、50くらいであろうダンディズムな店主が一人でやっているらしく、何だか凄い落ち着いた雰囲気を漂わせていた。恐らく涼香はこうゆう雰囲気が好きで、この喫茶店が気に入ったんだろう。

僕らは自然と奥のテーブルに腰掛け、涼香はメロンソーダ。僕はミルクティーを注文した。コーヒーを飲めないというのを、お互い感じ取ったのか、僕らは顔を合わせてクスクスと笑った。

飲み物が来たので少し飲み、一息ついてから些細な話題を振ってみた。

「そういえば、さっき何の小説読んでたの?」

「んーん。ちょっとした小説家のエッセイ集」

「エッセイか。あんまりエッセイとか読まないなあ。なんだか、その人のエゴみたいなものに影響されそうでさ」

「それは私も思ったりするよ。だから人として何か魅力のある人のエッセイしか読まないもの」

「今読んでた本の作者は魅力的な感じの人?」

「この人の書いた小説ってね、大体最後がバッドエンドなの。でも嫌な気分には全くならな いの。読み終わって少し虚無感に襲われていると、絶望の中にも希望があるような、本能的に気付かされるような、そんな不思議な気持ちが出てくる。活字だけで人をこんな 気持ちにさせる人のエゴって凄い魅力的じゃない?」

「確かにそれは魅力的かもしれないな。他人を良い意味で変える力を持っている人って人間として凄い偉大だと思うもん。少し嫉妬するなあ」

「嫉妬って。真くんは真くんで、十分魅力的だと思うのは…私だけ?」

「あんまり褒められてないからどんな反応すればいいか分からないよ…」

「んぐっって言えば?ふふっ」

彼女はメロンソーダを飲みながら、返す言葉に困っている僕を興味津々な目で見つめていた。僕は苦笑しながらも「ぐふっ」なんて言って、彼女を笑わせてみたりしてみる。

 涼香にとって、その作者が魅力的なように、僕にとって涼香は、恐らく現代の国語辞典には載っていないであろう、不思議な感情をもたらしてくれる。そうゆう面で魅力的な女性だった。

 その後も、最近会った他愛も無い話に花を咲かせたり、ある事に対する価値観について議論したりと、お互いの中にある取扱説明書を見せ合いっこするように、僕らは会話を楽しんだ。時計の針が6時を回り、周りにポツポツ座っていた客も、気付いた頃にはすっかりいなくなっていた。涼香はこの後バイトがあるらしく、図書館の前まで一緒に帰る事にした。

 「なんだか…凄いいっぱい話したね。」

 「うん。涼香の価値観って僕からしてみると凄い新鮮で全然聞いてて飽きないよ。」

 「飽きてアクビなんかしたら思いっきりイス蹴ってやるんだから!」

「男勝りな性格の女性も今までに会った事無かったからなあ…」

「ん。蹴るよ?」

「…発言を撤回しよう。僕が女々しいだけだ…よね?」

「そうゆう事」

「口で女性には勝てないなあ」

「あら。もしかしたら腕相撲でも勝っちゃうかもよ?あたし強いんだから!」

 涼香は突如前に走り出すと、僕の前に立ち、満面の笑みを浮かべ力こぶを見せる仕草をしてみた。大人っぽい容姿の反面、子供のような事をする。その彼女のギャップも、僕にとっては十分すぎるくらい魅力的だった。

図書館の前に着いて、ソワソワしながら僕が別れの言葉を探していると、涼香は僕の顔を覗き込むように「ねえ真くん。明日は?」と、聞いてきた。

「夕方からバイトだけど…基本いつもと変わらない毎日ですな。」

「ふふ。変に安心した。じゃあ…会えたらまたね?」

「うん。じゃあ」


帰り道、僕ははっきりと確信した。


僕は…彼女に、涼香に恋をしている。


その感情は、一目惚れなどという言葉よりもずっと深く、大きく、苦しいものだった。今までこんな気持ちを味わった事が無かった分、言葉に表すのも難しかった。

(涼香に自分の気持ちをどう伝えたらいいのだろう。いや…涼香なら、おそらく僕の反応やらで察してくれるはずだ。とにかく今は彼女といっぱい会って、いっぱい話したい。色んな所にいって色んな涼香を見てみたい。それで今は十分だ)



この自分本位な考え方が原因で、結果、彼女を傷つけてしまう事になろうとは、この時点で想像してもみなかった。

この物語は去年書いたもので、途中で挫折してしまったものです・・・(汗)続き読みたい方は是非感想にて…もしかしたらまだ立ち上がれるかも知れませんw

なので一応これにてという事で…なにかの参考にでもできるのでしたら是非参考にしてください^^

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