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ところで、今の僕といえば、その彼女と5年振りの再会の為、初夏の蒸し暑い中、急ぎ足で駅のホームまで向かっている。
昨日雨が降っていたからか、いつもよりも空気は水気を帯びていて、所々には水溜りの後のような黒いポツポツが残っている。
…脇の下が、これでもかと言うくらいビショビショになって気持ちが悪い。
所々で蝉が応援のエールを送ってくれている中、僕は熱気でモウロウとした頭の中で今から会う彼女の行動パターンを予想していた。
彼女は恐らく、15分前にはいつも待ち合わせていた喫茶店に着いているだろう。
当時から彼女が好きだったメロンソーダでも飲んでいるのだろうか。そして腕時計と、ギリギリに着いた僕を交互に見つつ、僕に向かってこう言うんだろう。
「分からないかなあ…?」
僕の人生を変えた、あの知的でありながらも可愛らしい『子悪魔スマイル』をしながら。
―君に出会い、
―僕は確かに恋をして、そして愛を知った。