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愛と似て非なるもので、決して永遠とは呼べるものではなく一瞬の儚いもの。
一時的な感情の迷い。
それを恋だと僕は認識し、今までもそうやっていくつもの気の迷いを自らの胸の中で押し潰してきた。
そもそも、周りの友人の話を聞いていると、何故、人間は恋愛をここまで重視して生きているのか不思議に思って仕方が無かった。心の痛くなるモノなら触れなければいい、切なくなるような物語になるとわかっているのなら、始めからその始めの1ページを開かなければ良い。
僕は、普通の人間からしてみれば(なにが普通なのか、それすら僕はわからない)相当冷めた人間だった。
そんな冷めた人間にも、どうやら『モテ期』と、いうものはあるらしかった。中学の頃からバスケット部に所属していた僕は、高校時、身長は171センチと、決して高かったわけではなかったものの、一応ポイントガードとしては周りの足を引っ張らない程度の実力は実につけていた。レギュラーにも入れてもらい、その後、バスケ部のマネージャーと女子バスケット部の後輩に告白されるという、人生上の転機ともいえる時期が僕にも到来していた。結局の所、告白という勇気ある行動をしてきた女性達に対して、僕は心無い言葉で追い払ってしまった。(後に、僕のある事ない事が噂でクラス中に流れており、女というものの、恐さを知る事になった。)
それからというものの、僕にはそのような転機が再び到来する事無く無難に勉強をし、無難な大学を受験し、これまた無難に受かる事になる。
このまま淡々と人生は終わっていくものなんだ。
僕は、この世に生きる楽しみを、既に諦めつつあった。
失うものなど何も無い。もはや、これから無くなる物といえば『髪』くらいなものだ。
ジョークなのになにもジョークに聞こえない台詞を頭に思い描いては一人で含み笑い。女縁の無い極めて気色の悪い男に僕は育ってしまっていた。
しかし、人間は変わるものだ。成長し、恋愛をするものだ。
それを僕は、彼女と出会い過ごした、あの1年間で痛感することになる。