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NTR人間、自身の末路を知る  作者: オーメル


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冒険者25 評価

 十五人を相手にした模擬戦は、そのほとんどを一分も使わず終わらせた。


 唯一足掻いてみせたのは俺に質問をした女だけで、彼女は常にこちらを殺す方向で戦ってくれた。


 最後は体力切れで降参を告げたが、自分にできる範囲を模索しながらの戦いだったので、個人的に一番学んだのではないかと思う。


 試しに敢えて腕や脚で防御をしてみたが、威力そのものは低い。強く叩かれた程度であり、あれで骨を折るのは難儀するだろう。


 その分だけ彼女の身のこなしは軽く、速度があった。回避行動が間に合わなくても、肌や服に触れた瞬間に受け流しに移行したのは見事としか言いようがない。


 すでに彼女の技術は俺の先を行っている。職業に合わせた戦闘方法を教えることはできるが、単純な技術的な話になると俺はついていけないに違いない。


 模擬戦を終え、皆が起きるまで休憩となった俺は、誰とも会話せずに別室で老人と向かい合っていた。


 老人の手にはお茶の入ったペットボトルが一本。俺には何もなく、いかにも友好的ではない姿勢に、逆に感心してしまった。


「あれで全員ではないよな?」


「もちろん。組織にも予定はある。今日集まれたのが彼らであって、別日に呼ぶことは可能だ」


「そうか」


「それよりもだ。君が見る限り、今日の彼らはどうだった?」


 老人と俺がそろって移動したのは、彼らに今日の批評を聞かせる気がなかったからだ。


 良い評価だったらモチベーションが上がるが、悪ければ逆に下がる。特に今回は悪い評価を誰もが受けると思っていて、故に俺に話しかける人間もいなかった。


 もはや俺が予言の人間であることを彼らは疑わない。そこに老人の役職は影響せず、十五人はそろって俺の蹂躙で理解した。


 少なくとも、今は未来を知る俺が最強だと。成長していく過程で追い抜く可能性がないではないが、俺がここまで強いのは未来を知っていなければあり得ない。


 そして、だからこそ余計に評価を聞きたくないはずだ。そこには間違いなく、未来の冒険者たちとの比較が混ざっているからだ。


「思ったよりも良いな。彼らの職業を実際に見なければ分からないが、あの十五人で日本のダンジョンは攻略可能だろう」


「ほう。あんなに無様を晒してか?」


 老人の疑問は嘘に塗れている。


 彼とて分かっているはずだ。冒険者そのものを運用するには、個人レベルから国家レベルまでノウハウが足りていない。


 同じ人間だから同じ法律を適用してもズレが生じてしまうし、社会の常識に合わせようとすれば彼らに窮屈な思いをさせてしまう。


 老人の言葉は万人の思う意見だ。だからこそ、冒険者として俺は言わねばならない。


「彼らがあんな風に負けたのは俺を侮ったからだ。その侮りも今回で払拭され、彼らは素直に俺のアドバイスを聞いてくれるようになるだろう。もし今回の件があっても侮ってくるなら、さらなる教育でも施して、駄目ならダンジョンで殺してしまえばいい」


「殺すのは流石にまずいだろう。いかに国家でも隠蔽するのは難しいぞ」


「いいや、下手に理解の浅い冒険者を生き残らせても犯罪に走るだけだ。自分の方が一般人よりも強いと分かっているから、特に今はやっても逃げられてしまう」


 こればかりは絶対に言っておかねばならない。


 冒険者は人間の脳を持った兵器だ。暴れれば周囲に迷惑を及ぼし、能力で隠れて悪事を企てる。


 一般人が逆らっても事態は打開されず、冒険者を抑制するために冒険者を派遣せねばならない。


 彼らを管理するのであれば、殺すことも視野に入れておかねばならないのだ。実際に未来では表沙汰にはしていないものの、組合関係者が犯罪行為に走りそうになった冒険者をダンジョンで殺した例がある。


 風聞のために、いなくなった冒険者はボスモンスターに殺されたと処理された。


 これを俺が知っているのは、未来の俺が別の冒険者の経験談を聞いたからである。冒険者本人は酒を飲んで酔いながら愚痴のように零していたが、偶然にも組合で働いている人間が冒険者を殺す姿を見てしまった。


 結局、この話は他所に広まらずに終わっている。それは誰も彼も組合に目を付けられたくなかったからだ。


 高位にもなればもっと多くの情報を知っているだろう。その誰もが口を開けなかったところを見るに、日本政府そのものが一枚噛んでいると俺は予測している。


「幸い、日本のダンジョンは封鎖状態だ。ボスの性能も把握していない今であれば、自衛隊に紛れ込ませて殺す算段も立てられる」


「何とも物騒な話だ、まったく……それで、評価はどうなのだ?」


「特に良いのは俺に質問をしたあの女。攻撃力は低いが柔軟性は高い。速度を武器にして、良い得物を持てば瞬間火力も高くなるだろうな」


 脱線した話を戻し、評価を口にする。


 今回の最大の収穫は間違いなくあの女だろう。防御力を捨てた瞬間、ダメージに極振りすれば、彼女はアタッカーとして極めて優秀になれる。


 あとは彼女の職業だが、あの軽い身のこなしで思い当たるものが一つあった。それが正しいかを確認するのは後にするものの、ほぼ正解だろうとも思っている。


 合っていれば彼女は今後も重宝されるだろう。攻略のメインメンバーにしても問題ない。


 性格も悪くなかった。ころころと表情を変える彼女は、現場のムードメーカーにもなるかもしれない。


 他にも良いと感じた人間を挙げていき、老人はそのたびに黙って首肯する。


 すでに彼の中では攻略が脳裏にちらついているはずだ。こんな施設を用意した以上、政府は結果を必ず求めているのだから。


「――まあこんな感じか。あとは実際に職業を見て、能力の使い方を練習してダンジョンでレベルを上げていけば、勝手にクリアできる」


「ふむ、たった一回でここまで話が繋がるか。今日呼んだのは正解だったな」


「……貰うものは貰うからな、爺」


「言葉が悪いぞ。もちろん、報酬は支払うとも。黙っていた分だけ色も付ける」


「当たり前だ。未来のためでもあるから流石に怒りはしないが、何回も続けるようならこちらも勝手に動くぞ」


「分かっている。だが今回は事前に説明して来てくれるかが不明だった。仮に君が来ないと言った場合、彼らには無駄な時間を過ごさせることになる。そうなれば、ここを使う予算を用意させた国からいちいち文句を言われていただろう」


「…………」


 老人にも立場はある。俺と国で板挟みになり、黙って来いと言った。


 それは理解できなくもないが、流石に話は欲しい。俺が将来的に離れるためにも、別の冒険者は必要だったのだから、話と報酬があれば天秤は行く方に傾いたはずだ。


 もちろん、そんなことは言わない。老人にはずっとこの調子で難しい相手だと思わせておいた方がいい。


 少しでもやりやすいと思われたら酷使されるのが目に見えている。それで喫茶店の仕事にも支障が出れば、職場を紹介してくれた伯父に申し訳がない。


「報酬は一週間後に口座に振り込む。次回は事前に話をしておこう。行くか行かないかは自由だが、恐らくしばらくはあの十五人にアドバイスすることになる」


「了解した。では、俺はこれで帰って良いな?」


「うむ。これからもよろしく頼む」


 最後に老人と今後の予定を少し話して、俺は部屋を出た。


 これで仕事は終わり。カードで施設を出れば、その時点で予言者は終了だ。


 今日は少し疲れた。喫茶店で働いている間は精神的に疲れることが多かったが、今回は肉体的な疲れがある。


 久しぶりに模擬とはいえ戦闘をしたからだろうか。帰ったら家に保管してある花で回復薬でも作るかと決め、その後は誰とも会わずに建物から出て行った。


 日は少し西に傾いている。午後の時間の中、人混みに紛れて俺は普段歩くことのない東京でスーパー巡りに精を出すのだった。

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