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NTR人間、自身の末路を知る  作者: オーメル


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冒険者7 第一の王

 三層を突破し、四層を突破すると、光る苔が群生する洞窟の五層に到達する。


 ここまでの道中が順調だったのは、やはり事前知識があったからこそ。知らない状況ではまず下に続く階段を見つけるところから始まり、出現する敵の種類を把握していなければ無駄な警戒もしなければならなくなる。


 勿論、何もしないで平気なままでいられる程の強さは無い。俺のレベルは五層に到達した段階で五に上がったが、そこから明確にレベル上昇が遅くなっている。


 無視をしようにも敵は容赦なく此方を遮るので経験値自体は蓄積されているだろう。にも関わらず、最初からはどこか足りない感覚を抱いた。


 これが敵から貰える経験値量が低下している原因なのか、俺はボス部屋に通じる道を早足で進みながら横穴から出て来る角付きの兎を切り捨てる。


 苔のお蔭で周辺はよく見えていた。


 自然溢れる巨大な空間はトラックでも余裕で通れる。ジャンプをすれば今の俺なら天井に届くだろうが、冒険者になる前の俺では絶対に届かない。


 これから敵が大量に出現しても十分に武器を振るえるだろう。パーティーを組んで実際に戦う時にも此処ならやりやすい筈だ。


 とはいえ、今は敵の数は少ない。大部分は外に出て行っているので今のダンジョンは消耗時に近い状況にある。


 ボスまでの道程が楽になるのは有難い話だった。ここら辺の壁も掘れば鉱石が出るので、ゆくゆくは大量の人間が採掘に赴くだろう。


「……意外とあっさり到着したな」


 リュックに携帯を放り込んでいるので経過時間を今は見れない。


 ダンジョンに入ってから体感だと三十分くらいだろうか。本当は一時間は覚悟していただけに、こんな風に辿り着けたのは望外の偶然だ。


 だがその分、やはりソロで攻略するレベルには至っていない。安定帯の半分のレベルはパーティーでの挑戦レベルであり、一人では当たり前に挑戦するべきではない。


 もっとじっくりとレベルを上げるべきだが、時間を掛けられないままでは無理を通す他ないだろう。


 目前には錆びた鉄の扉。


 巨大な入り口は中世めいていて、現代らしさは感じられない。


 文様の類も存在せず、あくまでも扉は扉としての役割しか持っていなかった。その扉に手を当てると、簡単には開かないだろう鈍い感触がある。


 力を徐々に入れていく。冒険者としての膂力で扉は軋みをあげ、ゆっくりと開かれる。


 人一人分が通れるサイズまで広がった段階で内部に入ると、これまた室内とは思えない程の広い空間が俺を迎えた。


 円形の中で建造物は無い。強いて言えば部屋の隅に欠けの目立つ武器や割れたガラス片などのガラクタがそのまま放置されている。


 その中央。胡坐を掻いて此方を見やる巨大な存在に、俺の意識は自然と集中していく。


 体長四メートル。武器は巨大な大木で作ったであろう棍棒。襤褸の腰布だけが敵の服で、首には汚れの目立つ金銀のネックレスが付けられていた。


 腹が膨らんでいる。腕や足は正反対に細めであり、橙の髪を逆立てて肌は青白い。


 口は愉悦に歪んでいた。瞳にも愉悦の感情が滲み、どう見ても俺を見下している。


 これが小鬼の頂点。巨大な物体は最早小鬼ではなくオーガを彷彿とさせ、何なら小さめの巨人にも思わせる。


 化物らしさという点では正に順当な姿だ。


 見たことがあるので相手から放たれる威圧感に恐怖を覚えはしないが、緊張だけは避けられない。


 ゴブリンキングの周りには緑の肌に木の棒を持ったゴブリンキャスターが居る。


 此方は腰布を巻いているだけで、棒の先端には琥珀色の石が付いていた。


 サイズは他の小鬼と変わらない。他との違いは魔法を使えるかどうかぐらいなものだ。


 数は四。キングと合わせて五体がこのダンジョンでのボス構成だ。


 四体の取り巻きは幾度潰しても即座に復活する。このダンジョンをちゃんとした意味で攻略完了させるには、キングを倒し切るしかない。


 ナイフに付与を施す。使うのは全能力上昇のみ。


 更に肉体にも速度上昇を行い――――俺の行動に敵が動き始めた。


「――――!!」


 ゴブリンキングが咆える。


 キャスターは同時に魔法の構築を開始。青い光がキャスターの周囲に現れ始め、それらが形となって出現する。


 キャスターが使える魔法は標準的な攻撃魔法のみ。


 四体それぞれで使用魔法は異なり、地水火風の四属性で侵入者を殺しに来る。


 胡坐を掻いていたゴブリンキングが立ち上がった。四メートルの巨体が動くだけで僅かに地面が揺れ、しかしそんなことなど誰も気にしない。


 右腕に握っている棍棒を振り上げ、軽い調子で振り落とされる。


 直撃は絶対に回避しなければならない。巨木がそのまま降って来るような光景を見つつ、ギリギリのタイミングで真横に跳ねた。


 床が爆発する。土煙が周辺に広がり、石の礫が俺の肌にぶつかって落ちて行く。


 横目でどうなったのか確認すれば、軽い棍棒の一撃で床には小さなクレーターが出来上がっていた。


 モンスターがダンジョンに気を遣うことはない。どんなに破損しても直してくれると解っているから、フィールドダメージ上等の攻撃を軽く放ってくる。


 受け止めるのは最初から選択肢に無かったが、挨拶代わりの一発のお蔭で余計に回避しか道はないことを確信した。


 駆ける。五層で走らずにいた分、一気に接近して足首をナイフで切った。


「流石に傷口が小さいか……!」


 ナイフのサイズを考えれば足首に受けた傷は極めて浅い。


 とはいえ通常武器で相手の肌を切れたのは良い収穫だ。付与師を選択したのが間違いではなかったと再確認することが出来る。


 ゴブリンキングにしても蚊に刺されたくらいのダメージしかないのか、その場で俺に右足蹴りを放つ。


 地面を掬い上げる動作を前に、敢えて身体を支える左足に向かって跳ぶ。


 膝を蹴って更に跳ね、空中で俺とゴブリンキングの高さが揃った。


 間近で視線を交わす。相手は少し驚いた様子だったが、そんな相手の目に全力で蹴りを叩き込む。


 目玉の潰れる嫌な感触が足に伝わる。眉を顰める俺の前でゴブリンキングは唐突なダメージに体勢を崩した。


 建築物が崩れるような音を立てて身体が倒れる。


 ゴブリンキングにとっては久方振りのダメージだったのか、片手で左目を抑えていた。


 今なら。――そう思う俺の耳に空気を裂く音が届く。


 咄嗟にその場から後ろに下がると石の槍が地面に何本も突き刺さり、更に俺が回避した場所に今度は炎の渦と無数の小さな風の刃が襲ってくる。


 横向きの炎の竜巻は当たれば肌を容赦無く焼くだろう。風の刃とて碌な防御もない現状では掠り傷程度では済まされない。


 どちらも攻撃範囲は広かった。全力で周りを走ることで逃げ切れたが、そうなったらそうなったで最後に水による小規模な津波に襲われる。


 呑み込まれる訳にはいかない。今度は上に向かって壁を走り、津波よりも高い場所で魔法の準備をしている小鬼の姿を確認する。


 彼等の使う属性は単純で、複数属性を行使するものでもない。難易度も低いのでいきなりピンチにはならないものの、こうして組み合わさると途端に難度が高くなる。


 これがソロの難しい部分だ。全ての攻撃に対して個人で対処しなければならず、パーティーメンバーで分散する方法は使えない。


 この場合、ソロでの攻略法はただ一つ。


 攻撃付与。全能力付与。壁を全力で蹴り、弾丸のような速度で小鬼の眼前に接近。


 相手の驚愕を無視してナイフで胸を刺す。核を確かに砕き、相手が消滅するのも確認せず次の小鬼まで一息で走り寄る。


 魔法使いが接近戦に弱いのは常識だ。故にゴブリンキングが痛みに呻いている間に周りの雑魚を全て狩る。

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