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NTR人間、自身の末路を知る  作者: オーメル


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高校生9 影響力に賭けて

 ――――貴方の予言のお蔭で息子が事故から逃れることが出来ました。有難うございます。

 ――――〇〇社の者です。今話題の予言につきましてインタビューをしたいのですが、御都合のよろしい日を教えてはいただけませんか。

 

「…………」


 携帯に流れるダイレクトメールの数々に、俺は終始無言になる。

 内心は複雑だ。話題性の高さに喜ぶ気は起きず、感謝の言葉には罪悪感が出て来る。

 これは自分の目的の為。誰かを救うことを第一としていない行動。だからこそ自分勝手に突き進んでいるのだが、それでも批判の数より感謝や依頼の数が勝っている。

 最近では動画投稿者にもこのアカウントが紹介された。その熱量は凄まじいものがあり、なんと丸々一つ分の特集みたいなものを組んで投稿されている。

 更に驚きなのが芸能人にも紹介されたことだ。その所為でいよいよ新聞やテレビ関係者が無視出来なくなり、アカウントの持ち主を実際に表に引き摺り出そうとしていた。

 

 特に、とあるアイドルグループの一人からの熱意が高い。

 最初は感謝のダイレクトメールから始まり、その内容は犯行予告を送った相手についてだ。

 そのアイドルグループは六人で構成され、近々大きなスタジアムでライブをする予定だった。そのアイドルグループの事務所にスタジアムで事件を起こす謎の手紙が送られ、一時はライブそのものを取り止めにすることも視野に入れられていた。

 風向きが変わったのは、メンバーの一人が俺のアカウントを見つけたことにある。

 警察の犯人捜しとは別に個人で探してみようと一番人口の多いSNSを巡り、最終的に関係のあるワードを手当たり次第に検索していった。

 当たったのは、アイドルと犯行予告の二つ。纏めて検索することで俺の予言にぶち当たり、まだ何も解っていない状態にも関わらず極めて現状と一致する内容に見つけたと思ったようだ。


 そこで俺が呼ばれたら即アウトだったが、警察にしても事務所にしてもオカルトの話なんてあまり当てにはしていない。

 どうせ適当に作った内容が偶然命中しただけだと思いつつ、他に当ての無い状態で一か八かと情報通りに犯人が住む場所に警察は監視を付けた。

 そして解ったのは、犯人の男が電車と徒歩を使って事務所を遠目に見ていたこと。

 男はにやついた顔で廃ビルの屋上から事務所を眺め、アイドル達が出て来た際にはそちらに視線を移していた。

 男の荷物は白い紙袋が一つ。その中身が何かまではこの時点で解っていなかったものの、明らかにおかしい様子に警察は本格的な調査を行った。


 結果、男はアイドルグループの一人をストーキングしているところを警察に捕まり、取り調べをしている間に捜索令状を手に犯人のアパートの一室に踏み入った。

 あったのは異常な程のアイドルグループのグッズに、六個の手製爆弾。

 即座に爆破処理班を呼んで処理を任せ、そのまま男の罪状を追加させた。

 これにてライブの障害は取り除かれた。一時は開催も危ぶまれたイベントを事務所は無事に行い、同時に件のアイドル達は俺のファンになってしまったのである。

 ただ、殆どのメンバーは感謝のダイレクトメールだけで済んでいた。事務所のアカウントからも感謝を送られているが、何も反応を示さなかったことでそれ以上の言葉は無いまま。

 

 何時も通りに流れて行くと思って楽観していた俺は、だからこそ一人のメンバーが連続で送ってきた内容に眉を寄せざるを得なかった。

 本人の自撮り画像。それも学生の制服姿。制服そのものはセーラータイプだったので何処の学校かまでは解っていなかったが、それも本人が暴露したことで完全に判明してしまった。

 生徒手帳までセットなのだ。俺が悪人であれば好き放題に脅せる内容に、一時は注意の文を送りそうになった。

 彼女はどうやら俺に直接会いたいらしい。感謝を伝えるのに文章だけで済ませたくはないとのこと。

 そんなことなど気にしなくて構わないのだが、文面には必死さが滲んでいる。

 だから俺は――――彼女の表と裏の応援を全て意識的に無視した。それは何時か薄れてくれることを信じてのものだが、そう易々と解決するとは思えない気がしていた。


「それにしても」


 過去の自分の行動を思い返し、そのアイドルの生徒手帳を思い出す。

 彼女が通っている学校は俺が通っている所だった。だが学校で彼女の名前を聞いた覚えはなく、もしかすると変装をしている可能性がある。

 けれど、未来であれば話が違う。

 彼女は有名だった。それはアイドルとしてではなく、冒険者として。

 確か彼女は、日本のダンジョン攻略に多大な貢献をしていた。その細腕で振るえるとも思えない大剣を使い、国外国内のモンスターを両断していた筈である。

 所謂トップ冒険者の枠内に入り、広告塔として個人でモデルでの活動もしていた。その際に他のメンバーの姿は無かったと思うが、こればかりは俺には解らない。


 ここにきてついに。ついにトップ層が俺のアカウントを見ていることを公言したのだ。

 それ自体は喜ばしいことである。将来的に最強格に入れるならば、更にその前から鍛えてもらえれば飛躍の時は早くなるだろう。

 つい数日前に俺は二年生になった。

 今年の末付近でダンジョンが生まれ、中国で暴れ出す。怒涛の悪意は全世界で恐慌を引き起こし、無感動だった未来の自分の周囲も明るいとは言えない雰囲気になっていた。

 発表の時期まではまだ時間は必要なのかもしれない。まだまだ俺の話は鼻で笑われてしまう可能性は十分にある。

 だがそれでも、それでもだ。

 トップ層が見てくれたこの瞬間を逃すのは惜しい。注目で溢れるこの時期にこそ、俺の予言は大爆発を引き起こすのではないのか。


 文面は既に出来てはいる。投稿するのに大した時間は掛からない。

 今回のは本気だ。これまでのが遊びに感じられるくらい、俺にとっては優先度合いが違う。

 ダンジョンに関係する全ての選択肢が家族の今後に繋がる。――であればと、俺は敢えて投稿をする手を止めた。


「画像で、やるか」


 ただ文章を投稿するだけでは普通の予言と一緒であることは、前々から解っていた。

 事件や事故を遊びとするならば、これまでと一緒では変わらない。勿論人々は同じ予言として受け取ってはくれるに違いないが、俺の熱量そのものまでは伝わらない。

 なら、直筆文章を作ってそれを画像としてアカウントに投稿しよう。

 本当は動画の方が良いのは解り切っていた。それが一番明瞭に示せるものであると。

 そうしなかったのは、やはりまだ身バレをする訳にはいかないからだ。これだけ話題を集めてしまった以上、迷惑は俺以外にも間違いなく降り注ぐ。

 万が一にも両親に害があっては本末転倒だ。故に、親に迷惑をかけない範囲で覚悟を示す。


 使う物は白紙のノートとボールペン。

 最初にこれまでの感謝を伝え、次に予言の内容を書き、どうかこれを夢物語の一つだと見放さないでほしいと頼む。

 対処法まで書かなかったのは、そこまですると作り物感が強くなる。

 予言が予言となるのに必要なのは曖昧さだ。はっきりしないからこそ不思議で、そして奇妙な魅力に支配される。

 何度も何度もボールペンで書いては新しい紙を取り出して、最終的に出来上がったのは一枚の誰かに宛てた手紙のようだった。

 上から下に。右から左に。日本人が書いたと思わせる文面を何度も読み返し、俺は最後に自身のアカウントのIDを記した。

 

 紙を手に俺はコンビニに向かって歩く。

 外は既に暗く、長居をしては夕飯に遅れるだろう。

 最寄りのコンビニは駅前に無く、お年寄りの方が多い影響か人は少なかった。店員は暇になっているようで、レジ前にて欠伸をしていたのが見て取れる。

 そんな店員を無視しつつ、コピー機の中に俺は例の紙を放り込んで――最後に金を投入した。

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