Flight 008: 初陣
◆ 旅の途上
「ようやく森を抜けたな」
隼人は深く息を吸い込みながら、遠くに見える村を見つめた。
旅を始めて三日目。
二人は 王都グランフェルドの北方 にある アルド遺跡 を目指していた。
そこには 「風の民」の伝承 が残るという。
「遺跡の近くに ‘ノル村’ っていう小さな村があるわ。まずはそこに向かいましょう」
エリシアは地図を指し示しながら言う。
「補給をして、遺跡の情報を集める……ってところか」
「ええ。でも、油断はしないで」
「村に行くだけで何が起こるってんだ?」
「この辺りは オーク が出るって噂があるの」
「……オーク?」
隼人は眉をひそめた。
「異世界モノによく出てくる ‘豚の怪物’ みたいなやつか?」
「そうね。知能は低いけれど、腕力が強く、徒党を組むことが多いわ」
「……面倒くさそうだな」
隼人は慎重に周囲を見回しながら、歩を進める。
だが——
「……っ!」
エリシアが 何かを察知した 瞬間だった。
「——伏せて!!」
エリシアが叫ぶと同時に、巨大な影 が森の中から飛び出してきた。
オークの群れ だ。
◆ 突如の襲撃
「グォォォォォ!!!」
木々をなぎ倒しながら現れたのは、 身の丈2メートルを超えるオーク 。
その背後には、さらに 四体のオーク が続いている。
「……数が多いな」
隼人はすぐに 魔力弾 を構えた。
「エリシア、どうする?」
「数の優位はこちらが不利ね。でも、奇襲されただけで、態勢は整ってる わ」
エリシアは杖を掲げ、即座に 防御魔法 を展開。
バシュッ!
透明なバリアが、飛びかかってきたオークの棍棒を弾いた。
「隼人、後ろに回り込んで!」
「了解!」
隼人は素早く側面へ回り込み、魔力を込めた エアブレード(魔力の刃) を放つ。
シュバァッ!!
風の刃がオークの太い腕を切り裂き、鈍い悲鳴が響く。
「よし、一体負傷!」
だが、オークは怯まない。
他の個体が吠え、隼人へと突進してきた。
「……クソッ、こっちは数的不利なんだよ!」
隼人は咄嗟に回避しながら 魔力弾 を撃ち込む。
ドンッ!!
命中したオークが吹き飛び、地面に転がる。
だが、その瞬間——
「——隼人、後ろ!」
エリシアの叫びと同時に、隼人の背後で 強烈な振動音 が響いた。
(やばい、回避が間に合わねえ——!)
だが——
「——動かないで!」
エリシアの声と同時に、彼の目の前に 炎の壁 が立ち上がった。
「グォォォッ!?」
突進してきたオークが 炎に焼かれ、怯む 。
「助かった……!」
「隼人、次の攻撃を!」
隼人は炎の壁の向こうに魔力を溜め——
シュバッ!!
魔力の刃を放つ。
ズバァッ!!
直撃したオークが 絶命 する。
「……これで三体撃破!」
残るオークは二体。
エリシアは杖を構えながら、冷静に指示を出す。
「私は ‘防御’ を担当するわ。あなたは ‘攻撃’ に専念して」
「任せろ!」
隼人は地を蹴り、残るオークへと突撃。
彼の魔力弾が直撃し、最後のオークが地面に沈んだ。
——戦闘終了。
◆ 連携の手応え
「……なんとか片付いたな」
隼人は息を整えながら、戦場を見渡した。
倒れたオークの亡骸が散らばる中、エリシアは静かに杖を収める。
「私たち……意外と ‘相性が良い’ かもしれないわね」
「相性?」
「ええ。あなたは ‘高い魔力’ を持ちながら、戦場での戦闘経験がある。私は ‘魔術の理論’ に長けていて、防御魔法を得意としている」
「……確かに」
隼人は思い返す。
この戦闘では エリシアが防御とサポート を担当し、
隼人が前衛で攻撃を担う 形になっていた。
(役割が自然に分かれていた……まるで、元から訓練していたみたいに)
エリシアも、そんなことを考えていたのか じっと隼人を見つめていた 。
「……なんだよ?」
「……ううん、ちょっと ‘意識しちゃった’ だけよ」
エリシアは 微かに頬を染めながら 視線を逸らす。
(私たち、こうやって 一緒に戦える関係 なのね……)
隼人もエリシアの様子に気づいたのか、
ふと 視線を合わせるのを避ける 。
(……エリシアって、こんな表情するんだな)
しばらくの沈黙の後——
「……さ、村に向かいましょう」
エリシアが先に歩き出す。
「お、おう」
隼人も慌てて彼女の後を追う。
二人の間に 何かが芽生え始めた ことを、互いに自覚しながら——。
二人の旅は、次なる段階へ。