Flight 007: 空戦の礎
◆ 新たな訓練:戦うための魔法
「さて、今日の訓練はこれまでとは違うわよ」
朝日が差し込む森の広場で、エリシアは隼人を見つめながらそう告げた。
隼人は手のひらを開きながら、昨夜の魔力制御訓練を思い返していた。
「また魔力の流れの調整か?」
「いいえ。今日は ‘戦うための魔法’ を教えるわ」
隼人は眉をひそめる。
「飛べるかどうかもまだ分からないのに、戦う魔法を?」
「そうよ。飛べるかどうかは 旅の結果 で決まるけれど、もし飛べたとして ‘戦えない’ なんてことになったら意味がないでしょう?」
エリシアはそう言いながら、足元に魔法陣を刻み、指先に小さな炎を灯した。
「この世界では ‘飛ぶ’ ということは特別な力。だからこそ、もし空を制することができるなら、それに見合った ‘攻撃手段’ も持っておくべきよ」
「……理にかなってるな」
隼人は腕を組み、納得した様子で頷く。
「よし、じゃあ教えてくれ。俺でも扱える ‘戦闘魔法’ をな」
◆ 遠距離攻撃魔法:フレアバースト
「まずは ‘遠距離攻撃’ の基礎からいくわよ」
エリシアは隼人の前に立ち、小さな魔法陣を描くと、ゆっくりと手をかざした。
「この魔法は ‘フレアバースト’ 。圧縮した魔力を一気に解放して、小規模な爆発を起こす魔法よ」
「爆発系の魔法か……」
隼人はじっとエリシアの動きを観察する。
「本来なら ‘火の魔法’ に分類されるけれど、私が教えるのは ‘魔力そのものを衝撃波として放つ’ 形。だから、属性に関係なく誰でも扱えるわ」
エリシアが静かに息を整え、魔法陣を通じて魔力を放つと、目の前の木の幹に 小さな爆発 が生じた。
ボンッ!
衝撃が広がり、木の皮がはがれ落ちる。
「これが ‘フレアバースト’ 。あなたの魔力量なら、威力を調整すればもっと大きな爆発を生み出せるはずよ」
隼人は深く息を吸い、両手を前に出す。
「魔力を ‘圧縮して’ 放つ……だな」
「そう。まずは ‘膨張する力’ を意識するの」
隼人は魔力をゆっくりと手のひらに集めた。
青白い光が、静かに渦を巻く。
「よし……いくぞ」
彼は魔力をさらに圧縮し、一気に解放する。
ドンッ!!
先ほどよりも はるかに強い爆発 が木の幹を吹き飛ばした。
エリシアは目を見開くが、すぐに表情を整えた。
(やっぱり……魔力の出力が尋常じゃないわね)
「……威力が想定以上ね。でも、それなら ‘制御’ が鍵になるわ」
「確かに……今のは、少し予想より強すぎたな」
「飛んだ先で、こんな威力の攻撃を制御できなかったら大変なことになるわよ?」
エリシアは厳しい口調で言った。
「もう一度。今度は ‘狙った地点’ に正確に当てなさい」
隼人は小さく笑う。
「了解。今度は ‘精密射撃’ ってわけか」
◆ 近距離戦闘魔法:エアブレード
「遠距離攻撃だけでは、戦いは成り立たないわ」
エリシアは次に、杖を振り上げ、空間に魔力を走らせた。
「今度は ‘近接戦闘’ に使える魔法を教えるわ」
彼女の杖が揺らめくと、魔力が風の刃となり、目の前の岩を真っ二つにした。
スパァンッ!
「これは ‘エアブレード’ 。魔力を ‘刃’ に変えて斬撃を繰り出す魔法よ」
隼人は目を細めながら、割れた岩を見つめた。
「剣を振るうように、魔力を ‘刃’ にするってことか?」
「そうよ。あなたが空を飛ぶと仮定した場合、敵に ‘接近されたとき’ に備える必要があるでしょう?」
「確かにな……空戦でも ‘ドッグファイト’ になれば、距離が縮まる」
隼人は呼吸を整え、魔力を手のひらに集める。
「エアブレード……やってみるか」
彼は腕を振り抜き、魔力を刃の形に変えようとする。
しかし——
ドンッ!!
突如、魔力が弾け、地面が抉れる。
「ぐっ……!」
「暴発したわね」
エリシアは冷静に見つめながら、ゆっくりと近づく。
「あなたは ‘斬る’ ことをイメージしていなかった。今のはただ ‘魔力を解放しただけ’ よ」
「……なるほどな」
隼人は再び魔力を集め、今度は 刃の形を思い描く 。
(斬る……確実に、敵を切り裂くイメージ……)
「はぁっ!!」
シュンッ!!
今度は見事に、風の刃が木の枝を切り裂いた。
エリシアは満足そうに頷く。
「合格ね」
「はは、ようやく ‘合格’ か」
隼人は汗を拭いながら、小さく笑った。
「これで ‘空戦用の攻撃手段’ は身についたってことか?」
「そうね。最低限はクリアしたわ」
エリシアは微笑みながら、隼人を見た。
「あなたは間違いなく ‘戦える力’ を持っているわ。ただ……それを ‘使いこなせるか’ は、これからの訓練次第ね」
「なるほどな」
隼人は拳を握りしめた。
「じゃあ、そろそろ ‘旅の準備’ にかかるか」
「ええ。これで ‘基礎’ は固まった。次は ‘本番’ よ」
◆ 旅立ちの準備
夜、エリシアと隼人は焚き火を囲みながら、地図を広げた。
「まずは ‘風の民’ の伝承を追うため、王都の北にある遺跡を目指すわ」
「飛べる方法が見つかるといいがな」
「それは ‘あなた次第’ よ」
エリシアは微笑む。
隼人は火を見つめ、静かに呟いた。
「……俺は、必ず ‘飛ぶ’ さ」
そして、二人は旅の準備を進めていった——。