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Flight 014: 第二の試練——過去との対峙

◆ 塔を登る


「……妙な静けさだな」


隼人は剣を握るように拳を握りしめながら、塔の中を進んでいた。


塔の内部は 螺旋階段が天へと続く構造 になっており、吹き抜けの空間には薄く霧がかかっている。


「第一の試練では ‘過去の記憶’ に囚われかけた……次は何が待っているのかしら」


エリシアが慎重な表情で周囲を見回す。


「……あの時の記憶は、確かに俺にとって ‘乗り越えなければならないもの’ だった」


隼人は眉をひそめながら、拳を握りしめる。


「なら、第二の試練も ‘過去の何か’ に関係している可能性が高いな」


「……ええ、でも ‘何を試されるのか’ までは、まだ分からないわ」


「どんな試練が来ようと、突破するしかない」


そう言って、隼人は螺旋階段を一歩踏み出した。


だが、その瞬間——


ガシャンッ!


突然、塔の空間が歪むように揺らぎ、視界が暗転した。


そして、目の前に広がったのは——見慣れた家の景色だった。


◆ 高校時代の記憶——父との衝突


隼人の目の前にあったのは 実家の居間 だった。


そして、そこにいたのは——


「高校生の俺……?」


当時の隼人が、 険しい表情で父親と向き合っていた。


「なんで分からないんだよ、親父!!」


「分かるもんか! なんで ‘危険な道’ を選ぶんだ!!」


若き隼人は、拳を握りしめながら父に食ってかかる。


「俺は ‘空を飛びたい’ んだ!」


「空を飛ぶ……? それで ‘命をかける’ ってのか!」


父は怒気を含んだ声で言い放った。


「お前の ‘夢’ は、そんな ‘軽いもの’ じゃない!!」


「軽い? 俺は ‘本気’ でパイロットになりたいんだ!」


「分かってる!! だからこそ言ってるんだ!!」


父は拳を握りしめた。


「自衛隊のパイロットが ‘どれだけ過酷か’ も ‘どれだけ危険か’ も分かってるのか!? お前は ‘戦う’ ことを選ぶってことを、ちゃんと理解してるのか!?」


「そんなこと……!」


隼人は食い下がる。


「分かってるさ! だからこそ ‘俺は行く’ って決めたんだ!!」


「なら、俺は ‘行かせない’ って決める!!」


「……!」


若き隼人は 唇を噛みしめた。


そして——


「……なら、いいよ。俺は ‘自分で決める’ 。もう ‘親父の言うこと’ なんか聞かない」


「……隼人……」


「もう ‘家には帰らない’ 。 ‘俺の空’ は、俺が ‘選ぶ’ んだ」


若き隼人は、振り返ることなく 家を出ていった。


その後ろ姿を、父は 何も言わずに見送るしかなかった。


◆ 過去との対峙


隼人は 記憶の風景 を目の当たりにし、無意識に拳を握っていた。


(そうだ……俺は ‘あの時’ 、親父と決裂した)


(自分の夢を貫くために、 ‘家を出た’ んだ)


「……お前は、後悔しているのか?」


声がした。


振り返ると、そこには——


父の姿をした ‘試練の存在’ が立っていた。


「親の想いも知らず、 ‘自分の道’ だけを選んだことを——お前は ‘後悔しているのか’ ?」


隼人は 迷うことなく答えた。


「後悔はしていない」


「……そうか」


父の幻影は静かに言う。


「ならば、お前に問う。 ‘空を飛ぶ’ というのは、お前にとって何なのだ?」


隼人は息を吸い込む。


そして——


「俺にとって ‘空を飛ぶ’ ってのは ‘俺が俺であるためのもの’ だ」


「……」


「俺は ‘親父の気持ち’ を無視して、自分勝手に道を選んだ。でも、今になって分かる。親父は ‘俺を止めたかった’ んじゃなくて、 ‘俺を守りたかった’ んだって」


「……気づいたか」


父の幻影は微かに微笑んだ。


「けどな、親父——俺は ‘もう戻れない’ 。 ‘空を求める’ ことを、止めることはできないんだ」


隼人は まっすぐ父を見つめた。


「俺は ‘空’ に行く。 ‘飛ぶこと’ が ‘俺の生きる証’ だから」


その瞬間——


塔が揺れ、試練の空間が崩れ始めた。


「……立派になったな、隼人」


父の幻影は静かに頷いた。


「ならば、お前の ‘空’ を行け」


そう言い残し、父の姿は 風の中に消えた。


◆ 試練を越えて


「——隼人!!」


現実へと意識が戻る。


エリシアが隼人の腕を掴み、真剣な眼差しで彼を見つめていた。


「今度は ‘何を見た’ の?」


隼人はしばらく天井を見つめ、そして 小さく笑った。


「……昔、親父と喧嘩した時の記憶だ」


エリシアは黙って彼を見つめる。


「俺は ‘過去’ に戻ることはできない。でも、それを乗り越えて ‘前に進む’ ことはできる」


隼人は、ゆっくりと拳を握りしめた。


「もう ‘迷わない’ 。俺は ‘空’ に行く」


その言葉と同時に——


塔の先へと続く扉が、静かに開いた。


リィナが微笑む。


「お兄さん、 ‘風の流れ’ が変わったね」


「……かもな」


隼人は 空を見上げるように、塔の上を見つめた。


(次が ‘最後の試練’ か……)


風が吹く。


その風は、まるで彼を空へと導こうとしているかのようだった 。

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