Flight 001: 離陸
初投稿です、暖かいご声援をいただけると嬉しいです。
少しずつゆるゆる続けていきます。
「チェックリスト完了。エンジン異常なし、燃料圧正常。クリアランス待機中。」
冷静な声がコックピットに響く。F-15J戦闘機の操縦桿を握るのは、航空自衛隊のエースパイロット、相沢隼人一尉。
数々の演習とスクランブルを経験し、後輩からも一目置かれる存在だが、今日の任務は普段と違っていた。
「オペレーション・シグマ」――航空自衛隊の最新鋭技術を搭載した試験機を用いた極秘フライト。
滑走路の向こうでは地上クルーが最後のチェックを終え、隼人の機体に向かって親指を立てた。
「相沢一尉、こちら管制塔。クリアランスが下りました。滑走路36から離陸を許可する。」
「了解、相沢隼人、離陸する。」
スロットルを押し込み、エンジンが轟音を上げる。機体が前のめりになりながら滑走路を駆け、やがて地面を離れる瞬間、隼人は心のどこかで安堵を感じた。
(やっぱり飛ぶのはいいな……)
だが、その安堵は長く続かなかった。
「警告!予期せぬ磁場異常を検知!高度1万メートルで強い乱流発生の可能性あり!」
機体の警告灯が一斉に点滅し、コックピット内の計器が狂ったように動く。
「おい、なんだこれは!?タワー、応答せよ!」
だが、無線は一瞬のノイズを残して完全に沈黙した。
そして、次の瞬間――隼人の視界が歪む。
白と青の世界がねじれ、無数の閃光が視界を覆う。重力が消失し、機体がまるで異空間に吸い込まれるように落下していく。
「クソッ……!これは……!」
隼人は必死に操縦桿を握るが、Gスーツが悲鳴を上げるほどの重力変化に身体が押しつぶされそうになる。
やがて、意識が暗闇へと飲み込まれていった。