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予言

暗い内容です。

私はこの静寂の空間にただ一人、(たたず)んでいる。

何をしても許されるような気がした。

私は正しい。誰がなんと言おうと私の行動は正しい。

倫理的には間違っているのかも知れないが、私の正義にはかなう行動だ。

私は倉井美湖くらいみこが嫌いだ。

ただの同族嫌悪だけど。


私の名前は倉井美湖(くらいみこ)

自分で言うのもおかしいけれどただの美人だ。

普段はまぁ、ひきこもりをしている。

基本的にはひきこもりだけど、通信で学校の授業を受けていて、一応社会とは繋がっている。

今日はなにもすることがない。いや、今日に限らず、毎日大したことはしていないけれど。

今日はパソコンは修理にだしているし、課題も終わっている。

スマホでSNSや掲示板みて時間を潰すのもいいんだけど、いつも長時間見てしまう。

見過ぎると心が病むんだよな。

精神衛生面上あまりよろしくない。

..................。

外に出ようかな。

そうだよ。こういうきっかけがないと多分、私は一生動けない。

手始めに散歩からだ。

外は私の気分とは裏腹に晴天だ。

当たり前のことだけど気分に天気は合わせてくれない。


私が外に出ない理由は、 パソコンが壊れているからだけじゃない。そんなの関係ないんだ。

本当は、自分が変わらなければいけないのが怖いんだ。

外に出れば、楽しいこと、人生を豊かにしてくれることだって待っているのに。

それにまだ10代なのにひきこもって歳相応な青春をしないのだって本当は嫌なのに。

私は時々、なんのために生まれてきたのだろうかと考えることがある。ひきこもるために生まれてきたのだろうか。

私は死にたいわけじゃない。私は人よりも容姿だけは優れている。

可愛いってことはきっと幸せになれる可能性だって高いはずなんだから。自殺なんてもってのほかだ。

私が自殺したことを私のことを嫌いな奴等が知って笑う顔を考えるだけでも憎い。だから死ねない。

もしも死ぬとしたら事故とか事件とかに巻き込まれた方がよっぽど良い。人として正しいことをして死にたい。


「美湖。」

私は住宅街から離れ、ショッピングモール方面に行こうとした直後、背後から男性に声をかけられる。

私は驚きのあまり叫んでしまいそうになる。

「なにしてるんだ」と彼は問いかける。

中学生の時の同級生の男子と鉢合わせてしまった。

名前は明野真昼(あけのまひる)。真昼は黒くて無地のシンプルなカーディガンを着用し、髪型は短髪を伸ばしナチュラルセンターパートにしていた。

外見は中学生の時からそれなりに変わっているが 彼の雰囲気や話し方、声量は変わっていなかったため私はすぐに真昼だと判断することができた。

「こんな昼間から何をしているの。」はこちらのセリフだ。テスト期間なのだろうか。

私は真昼が口を開け、何かを言おうとしているのを見逃さなかった。だから私は真昼が次の言葉を話すより先にその場からすぐさま離れた。


俺は呆然としたままその場に立ちすくんでいる。 彼女がどこかに逃げてしまった。今追いかけなければ彼女に会う事はできないのに。俺は彼女に会えたことを喜んでいる。喜べている。彼女が元気そうでひとまず安心した。だが同時に彼女と会うことは俺の中の心の整理をしなくてはいけないとも思った。

俺はもっとちゃんとした服を着ていればよかったと少し後悔をした。


私は中学生の時、真昼に告白された。 だけど返事は有耶無耶(うやむや)になったし、告白とは別の件で仲違いしてしまってだいぶ気まずい。

私も真昼のこと

少し、少しだけいいな

って思っていた。

真昼と付き合ったら、真昼は目立つし、発言権も強いから

私をいつでも助けてくれるし、ずっと一緒にいてくれるだろう。

だけど、それどころじゃなかったんだよな。

もう何も誰も信じることができなくて

自分のことしか考えられなくて

1年も前の話だから真昼はもう私のことなんて好きじゃなくて他に好きな人いるかもしれないけどね。


私は大通りではなく、裏道を通った。 裏道は路地裏で昼間でも辺りは暗く、飲食店から出ている生ゴミの匂い、嘔吐物の匂い、酒の匂いなど嗅覚を刺激する。

私がひきこもる前の話だから情報の正確性は低くなっている可能性があるが、今まで不審者などの目撃情報は聞いた事はない。

私はここは静かで人通りも少なく心地がよい。

「ふぅ、落ち着く。」

しばらく裏道を歩いていると、そこに人がいた。

前言撤回、私は不審者かと(いぶか)しんだ。

顔をフード付きのケープで隠し目元が見えず、フードから粗雑に結ばれた髪の毛はちょこんと可愛らしく覗かしている。

髪の色は私と同じ髪色をしていて、髪型は友人の為谷莉子(ためがやりこ)と同じ髪型をしている。

少々、既視感を感じる。

また、その人物は水晶玉を持っておりどうやら占い師のようだ。

「おーい!」

占い師が誰かを呼んでいる。

声は高いわけでもなく、低いわけではないため声から性別を判断することはできない。

「そこのフード被ってる君だよ! ちょっとこっちに来て!」

占い師がさらに大声で呼ぶ。

辺りを見回すが誰もいない。 私はフードを被っているし該当する人物は私だけだ。

「 行ったほうがいいのかな?どうしよう。」

あれ、なんだろう。怪しいはずなのになぜか惹かれてしまう。

私は警戒しながら占い師に近寄る。

「お主の今日の運命を占ってやるぞ。 出血大サービスでなんとタダで!」

「えっどうしてですか。」

「お主からは死期が近い人間の気を感じた。 これは占わなければならないと占いの神様がいっている。」

占い師が透明で大きなビー玉のような水晶玉を見つめている。

こういうものってどこで買えるのだろうか。

この人には水晶玉に未来が見えているらしいが私からは何も見えない。

「お主、早く家に帰ったいいぞ。 さもなければ死ぬぞ。 あと、悪い事は言わない。 もうしばらく家から出ないほうがいい。」

それは唐突に言われた。

「え?しばらくってどのくらいですか。」

「うむ、25年から30年くらい。」

「どうして、そんな長期間、それに私が死ぬなんて。」

「お主が中年になる頃には生存率も上がっている。

人の恨みを買ったんだと思うが、 まだお主は行動をしていないから わしはそれに至る過程がまだ読めない。今からお主がどう動くかでもう少し未来が読めるのだが。 だが、わしの占いは当たる。 無視しないほうが良い。」

「はぁ、どうも。」

私は占い師に対し、初対面の時より警戒心が強まった。感謝の言葉を告げその場から離れた。


怪しい占い師から、嘘みたいな予言をされて。

私があの人に何をしたっていうのよ。 あんな予言、私に対しての嫌がらせよね。

占いなんて良いことだけ信じればいいのよ。

私は信じてなかった。でも、いきなり不吉なことを言われて怖かった。

気分転換に雑貨屋に寄ろうと思い足を運んだ時、私の腕に細長い鋭利なものが(かす)った。

「痛っなに?」

鋭利なものは飛んで一瞬で何処かに消えてしまったようだ。

私は辺りを見回した。誰もいない。ということは私は遠距離攻撃されているようだ。

私の腕が赤く赤く真っ赤に鮮血に染まる。

「嘘でしょ。私本当に命狙われているの?」

私はその場から逃げなきゃいけないのに、身体が硬直している。

「やだ。こんな死に方は嫌だあ。」


「美湖ちゃん?」

「わっ」

私の名前を呼ぶのは........

「えっどうしたの。腕から血が出てるわよ。」

莉子ちゃんだ。

私は莉子ちゃんに体を引っ張られ、移動することができた。

「ありがとう。莉子ちゃん」

私は莉子ちゃんの家に招かれた。

莉子ちゃんは大学一年生で今日は授業が終わって自宅に帰っていたところ私を見つけたらしい。

莉子ちゃんが手当てをしてくれた。

「傷は思っていたより全然深くないみたいね。」

「ほんと!よかったあ。」

私は、ひとまず安心した。

私と莉子ちゃんはリビングに移動した。

「美湖ちゃん、あそこで怪我していたけれど、どうしたの?」

「あのね、私、、、、」

いや、ちょっと待て

私は、莉子ちゃんに事情を話そうと思ったが、話したら大事(おおごと)になるだろうし、警察にいろいろ質問攻めにされるのはちょっと.....

それに裏道のことを話さなければいけないし、話して親に怒られたくないし。

私が黙っていると、莉子ちゃんに口の中に何かを押し込まれた。

これは温かくてほんのりシナモンの香りがする甘くて食感がサクサクしている。

「どお、クッキー作ったの。焼きたてだよ。」

「ほいひいを。」

「えー、何言っているのかわかんない。」

私は急いでクッキーを食べる。

急いで急いでこの小麦粉の塊を食べる。

莉子ちゃんはぎゅっと優しく手を叩いた。

「別に言いたくなかったら、言わなくていいよ。 ただ、私は美湖ちゃんが心配だったんだ。」

私と莉子ちゃんはクッキーを食べた後、漫画読んだりテレビを見て遊んだ。楽しい。

私は莉子ちゃんと遊んでいると中学生や高校生が経験するべき友情を経験しているみたいで嬉しくなる。

私は、暗殺者のことを忘れ、莉子ちゃんとの遊びに没頭した。

「莉子ちゃん。またね。」

「バイバーイ!美湖ちゃん!」

私はこの楽しい時間の余韻に浸りながら帰路を辿る。


私は自宅のマンションに着いた。

その時、真昼が手を振りながら私に話しかけてきた。

「よっよお! お前さなんか用事あったん? 」

「なんか今日その暑いな。 喉が渇くだろ。飲み物、あっこの自販機でなんか(おご)るぜ。」

今日の平均気温は15度、別に喉が渇くほど暑くない

「別に。それより私やることがあるの。」

「えっ!?暇そうに散歩していたじゃないか。」

暇だからって別にやることがないわけじゃない。やることがあってもぼんやりしたくなることだってある。

あまり外にいたくない家に帰りたい。

私、怖いよ。 もしかして私を殺す人って真昼じゃないよね。

だって十分に動機はあるんだから。 嫌だ。怖い。

今この瞬間の全てのものに恐怖心が溢れてくる。何もかもから逃げてしまいたい。

「意味がわからない。忙しいのにぼんやりしているなんて非効率的すぎるぞ。

やること終えてから遊んだ方が楽しいぞ。

なんかやるなら、俺が手伝ってもいいぞ。」

視界が揺れる。世界が回る。歪む。

「おい、大丈夫か?」


私は倒れた。

私は、目を覚ます。

そして布団にくるまわれていた。

私は今まで気を失っていたことを理解した。

ここはどこだろう。ベットしかない。寝室かな。

うん、そうだよね。ここはいたって普通のベットルームだ。独房ではない。

もしかして誘拐されたのか。私はこれから拷問にでも合うのだろうか。

私は恐る恐る布団から出て、部屋から出て行こうとした。

突然扉が開いた。

「美湖、起きたんだ。もう起きて大丈夫か?」

真昼が扉から出てきた。

ということはこの部屋は真昼の自宅か。

この状況は私にとっては(かんば)しくない。

なぜならこの家の間取りを私は知らないし、真昼に体格差だって負けている。

だからどこに逃げようとも、間取りを理解している真昼の方が有利だし、どこかに罠が仕掛けてあるのかもしれないし凶器を隠しているのかもしれない。

袋の中のネズミだ。

「美湖って付き合ってるやつとかいるの?」

もしかして真昼は私の親類まで殺す気なの

「何が目的なの?」

「目的っていや別にそんな大それたものじゃないんだけど、えっとほら付き合っている奴がいたら、男の部屋にいるのダメだろ。」

配偶者を殺す気はないのか。本心かどうかはまだわからないが、疑う理由はない。

「そっか、交際相手はいない。」

「本当か!」

「うん。私、帰るね。」

「あ、うん。」

えっいいの?妙にあっさり帰してくれるな。

私たちはニ階から一階に移動する。

真昼は私に普通に話しかけているけど、拒絶されるのが怖くないのかな 。

なんか色々してくれてるし、真昼は犯人じゃないのかな。

本当に私のこと心配してくれているのかな。

「真昼」

「何?」

「ありがとう。布団とか。」

「いいよ。そんなの別に。それより」

「美湖って高校楽しいか?」

「俺は美湖がさ、いないと高校つまらんわ。 なんで中学の途中から、いや、ごめん。なんでもない。」

「......。」

「なにも楽しくない」 とは言わない。

「なぁ、やっぱ教えてくれないか。何があったのか。」

「嫌だ。あれは私の中ではもう終わったの。」

今更話しても事実は変わらない。

「でも、俺は納得できない。美湖が泥棒したなんて。」

やめて。思い出させないで。 お願い!


これは、一年ほど前の私が中学生の時の話だ

私は冴えなかった。

頭がいいわけでも運動ができるわけでもない。面白いわけでもない。多分三軍。三軍女子だ。

だけど、一軍で人気者の真昼と仲がいい。

私となぜ仲よくしてくれるのと聞いたことがある。なんとなく心地がいいかららしい。

多分人気者だから人より色々気を遣わなきゃいけないのが疲れるから無口な人といるのが楽なんだろう。

私はある日クラスメイトの屑見一月(くずみいつき)に呼び出された。

屑見は活発で髪型はショートカットヘアににしている。

屑見の髪型は教師からの評価が良い。

部活はバレー部で、バレー部はかなりの強豪だ。その分いじめとか仲間はずれもあるみたいだ。 屑見は男子とも仲良くできるいわゆる一軍女子だ。

屑見は不機嫌そうに爪をいじりながら男と喋る時より声のトーンを一つ下げてこちらを見下したような顔をしてこう言った。

「あんたさ、明野と全然違うタイプだよね。 」

「明野はさ、生徒会とかサッカーとかやってるけどあんたはさ特になにもしてないじゃん。 」

「なんで明野と仲良いの?不思議だわー。 」

なぜあなたにそんな事言われなくてはいけないのかと思ったのと同時に彼女からしてみたら私みたいなやつが真昼と仲がいいことに疑問を持つ事は自分でも感じていたので一理あるとも思った。

「明野のこと好きなの?」

「好きじゃない。 」

「じゃあ、これからは明野と仲良くしないでよね。」

「仲良くしたらさ、わかっているよね。」

「.......うん。」

私は彼女が真昼のことが好きなこと、真昼と仲が良い私のことが邪魔だということがわかった。 私は真昼にはこのことを話せなかった。当然だ。

だから私は

「今、忙しいです。」

「今、用事があるんです。」

と冷たく対応しても変わらず真昼は話しかけてきた。

なので、私は屑見からいじめられた。 いじめにあうのは初めてではないし、無視や仲間はずれなど想定内の内容だったから 耐えることができた。

教師に相談するなど反抗はしなかった。しなかった理由は2つ。

相談したかったが、良い結果になるとは限らない。余計悪化するリスクを考え我慢した。変に悪目立ちするのは、他の人間からもヘイトを買うと感じたから。


ある日 私は風邪で学校を休んだ。

37.2の微熱だったから1人で寝込んでいた。 学校に行きたくなかったし、ちょうどよかった。昼間にインターホンが鳴った。

セールスとか宅配便かと思い一度は無視した。しかし5分ほど置いてもう一度鳴ってので仕方なく出た。

「嘘でしょ。」

私は驚いた。そこに真昼がいたからだ。

「なんで....?」

私はおそるおそる扉を開けた。

「あっ美湖だ。良かった。出てくれて。 プリント持ってきたぞ。」

「あ、そう。それはどう、もありがとう。」

休んだのは一日だけだから机の中に入れっぱなしにしておけばいいのにと思った。

プリントに触れ、受け取ろうとした時それは言われた。

「あのさ、お前屑見から嫌がらせされているらしいな。」

「.......」

「だから、俺がガツンと言ってやったぜ!弱いものいじめは人としてダサいからやめろって。俺そういうことする奴嫌いだって言ったんだ。

そしたらあいつ泣いて、もうしないから許してだってさ、

んで俺は明日、美湖に謝るならいいよって言ったんだ。

屑見は根はいい奴だから....いじめられたのに嫌かもしれないけど美湖も話せば仲良くなれると思うよ。」

私は驚きと絶望で言葉が出なかった。

真昼、最悪なことしてくれたな。

ふざけるな。 誰がそんなことしてと頼んだんだ。 と心の中で叫んだ。

真昼は倫理的には最善だけど私にはとっては最悪なことをされてしまった。






この作品は鬱未満。

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