ふしぎなもり
ぼく、しってるよ。
こうえんのうらにある、せのたかーいざっそう。
もしゃもしゃしてるくさがいっぱいはえてるところ。
はがれかかったアスファルトのところから、ちょっとのぞいてみると…みえるんだ。
くさのなかなのに、ちょっとあかるい。
ざっそうだらけなのに、なんかキラキラしてる。
ぼくひとりだけならとおれる、ふしぎなみち。
いりぐちはちょっとせまいけど…なかはひろいんだ。
チクチクとはっぱがささるけど…なかではささらないんだ。
こーこー、ふぉっふぉ!
ぺこー、ぺこー!
きゅりりりり!
もっぞ、もっぞ……
ターン、ターン…
きいたことのないなきごえがするよ?
おもしろいおとがきこえるよ?
ふしぎな、ふしぎなもりのなか
ひとりぼっちだけど、さびしくない
ひとりぼっちだから、おもいっきりたのしめる
ひとりぼっちだって、まえにすすめる
ふしぎな、ふしぎな…もりのなか。
おなかなんてすかないよ。
ぜんぜんつかれないよ。
こわくなんかないよ。
ぼく…ずっと、ここにいたい。
ねえ…ここにいても、いい?
ふしぎなもりは、なにもいわない。
ふしぎなもりは、なにもいってくれない。
ふしぎなもりは、なにもいわずに、みちをひらく。
あーあ、きょうも…かえらないといけないみたい。
……また、くるね?
こーこー、ふぉっふぉ!
ぺこー、ぺこー!
きゅりりりり!
もっぞ、もっぞ……
ターン、ターン…
もりのこえが、とおくなっていく。
もりのこえが、ちいさくなっていく。
もりのなかなのに、ちょっとくらい。
もりのなかだったのに、なんかぶきみ。
ぼくはすすみたくないのに、ずんずんすすんでいく、ふしぎなみち。
あんなにひろかったもりのなかが…せまくなっていく。
チクチクとささるのは…なにかの、はっぱ。
……。
………!
………いたぞ!!
「ケイタ!!!」
ぼくだけがしってる、ひみつのもり。
ぼくだけがいける、ふしぎなもり。
ざっそうがなくなっちゃったから、いまは、いけないけれど。
ざっそうは・・・また、はえてくるはず。
きっとどこかに・・・また、ふしぎなもりはあらわれるはず。
ぼくが、ふしぎなもりのことをわすれなければ。
きっと、いつか・・・いけるって、しんじてる。