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Scene 4

 目の奥に痛みを感じた。もう一行か二行、締めとなるような文言を入れたほうがいいようにも思えたのだけど、そこで気力が潰えてしまったというか。

 斜めに背を起こしたベッドのうえで寝返りも打てず、というか身動きすらできず、できることといえばギプスにくるまれた右手の指先でなんとかタブレットを操作するだけ。なぜに自分がそこまでしてこの作業をしているのかわからない。

 でも、投稿サイトで公開ボタンをタップしたとき、とりあえず達成感のようなものはあった。というか、高揚感? 公開というからには誰でもネットでこれを読むことができる状態なんだ、いったいどれくらいの人が読んでくれるんだろ――どきどきわくわくするよね、そういうの。

 目をつむって――もう開けてられないから――いろいろな感情が自分のなかに去来する混沌とした有様を観察する。

 小説投稿サイトに開設したアカウントのアイコンは、絵師さんがフリーでの使用を許諾しているカワイイ女の子の絵を借用。「小説書き始めました! 高2だよ(ピース) 特技はプリンの早食い。よしなに〜」と自己紹介欄には書いた。まさかそれが病院のベッドのうえに身体中にギプスをハメられて転がっているヒトだとは誰も思うまい。

 ふふふ。

 この笑いは自虐なのか、それとも、ある種、世界に対し秘密を所持していることへの優越からなのか。

 どっちでもいいけど。

 なんにせよわたしが誰でもないということには変わりようがない、小説を書き始めてそれをネットで公開したところで。別に死んでも良かったのだ、あの事故で。どっちであろうとたいした違いはなかった。わたしは誰でもないのだから。

 でも足掻く。

 なぜだかわたしは足掻いている。

 わたしのやるべきことは、これではないのかもしれない。てか、違うに決まってる。けどわたしは判断しない。したくない。衝動に任せる。別にいい。違っててもいい。白紙で答案を出すほどわたしは潔くないだけ。出されたのが解けない問題ならば、不平不満で回答欄を埋めてやる――そんな気持ちなのかも。わからんが。

 いいじゃん、べつに。

 わたしの人生だもの。


 一晩明けて確認してみると、第一話へのアクセス数が「3」と表示されていた。

 ふふん。

 そんなもんか、とも思うけど、まあ、見てくれた人はいるのだ――どこまで読んだのかは知らんけど。


     *


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