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土曜日だけのメイド

作者: 瀬東

 土曜日の朝。アラームより前に目が覚めて、ベットから立ち上がる。

 洗面所で歯磨きした後、昨晩用意しておいたメイド服に着替える。ご主人様から頂いたメイド服に袖を通す時、幸福感に満ちているのを実感する。

 着替えを終えて、鏡の前で自分の姿を見る。衣服の乱れがないかを確認すると同時に、自分がメイドである事を再認識する。


 キッチンに立ち、ご朝食の用意を始める。今日はご飯と味噌汁と焼き魚。ありふれたメニューだけど、それだけに完璧な料理をお出ししたい。料理中にミスをしないよう慎重になる。


 予定の時間までに朝食が完成した。朝食はいつもご主人様より先に頂いている。メイド服のまま食卓に座り、一人で朝食を頂く。お米の水加減や味噌汁の味付けなどを確認しつつ食べ、我ながら美味しい朝御飯だったのでひと安心する。

 食べ終わって食器を洗い、後はご主人様がリビングに来るのを待つだけとなる。



「おはよう。」

 扉が開いて、ご主人様がリビングに入られた。

「おはようございます。」

 ご主人様に向かって一礼し、まずはお飲み物をご用意する。


「お待たせいたしました。」

「ありがと。」

「本日は、お味噌汁と焼き魚をご用意しております。魚が焼き上がるまで少々お待ち下さい。」

「分かった。」

 私のご主人様である、雲雀 玲奈(ひばり れいな)様 は、スマホを操作しながら相づちを返した。


「お待たせいたしました。」

 朝食を食卓にお持ちし、私はそばで控える。ご主人様はスマホを置いて、味噌汁のお椀をお手に取った。

「おいしい。」

「ありがとうございます。」

 ご主人様にお褒めの言葉を頂き、嬉しさが込み上げてくる。




 朝食の後は、お洗濯とお掃除にとりかかる。

 都内にあるタワーマンションがご主人様と私の自宅で、広さは2LDK。その一室に居候させて頂いている。毎日こまめに洗濯・掃除をしつつ、毎週土曜日はお家の隅々までお掃除し、合間で洗濯物を干したりをくり返す。

 大掛かりなものは毎週できないので、今週はどこを重点的に掃除して、来週は代わりにどこを掃除するかなどと考える。このお家を管理させて頂いているんだと実感する。

 


 昼食は、ヘルシーなサラダプレートをお出しした。

 前日に買った野菜をふんだんに使い、ご主人様の好みにあうドレッシングであえるという、正直あまり手間のかからない料理。ただ、色んな味付けを試したりして、ご主人様からも要望を頂き試しているので、朝食の和食に続いてこちらもお昼の定番の様になっている。


「晩御飯はいかがいたしましょうか。」

 ご主人様が昼食を召し上がった際に、晩御飯のご要望を伺う。

「なんでもいいよ。あるやつで適当で。」

「かしこまりました。」

「あと、晩御飯できたら上がっていいよ。」

「承知いたしました。晩御飯ができましたらお知らせいたします。」

「分かった。」

 ご主人様はそう言って立ち上がり、リビングのソファに移動された。



 昼食後は、ご主人様のお部屋をお掃除して、その後はお風呂場などの掃除に移る。掃除機や洗濯機など、音の響くものは主に午前中に行い、午後はなるべく静かなお掃除をするのが私のやり方だったりする。


佑香(ゆか)、こっちきて。」

 リビングのソファにいるご主人様が、私をお呼びになった。

「ここ座って。」

 言われるがまま、ご主人様の隣に座った。すると、私を膝枕にしてご主人様が横になった。

「おやすみ……。」

「おやすみなさいませ。」

 ご主人様の愛らしい寝顔を眺めた後、私も少しの間、眠りに入りました。



 夕方になって夕食の準備に取り掛かった。鶏の照り焼きをメインに、焼いたししとう、冷やっこを付ける事にした。

「お待たせいたしました。晩御飯のご用意ができました。」

「分かった。もう上がっていいから。」

「かしこまりました。それでは失礼いたします。」

 その場で一礼し、私の部屋へと向かった。これでメイドとしての業務は終了。メイド服から私服に着替え、私も晩御飯を頂く事にする。



「おまたせ。」

「お疲れ~。」

 ご主人様こと、幼馴染であり大学の同級生でもある玲奈と一緒に晩御飯を食べる。

「この鶏肉美味しい。」

「ほんと?良かった~」

 私がメイドであるのはメイド服を着ている時だけで、それ以外の時間はこうして一緒にご飯を食べたりして過ごしている。私としては24時間365日玲奈のメイドでもいいのだけど、毎週土曜日の約半日だけとなっている。


 晩御飯を食べ終わると、2人でソファに座り、テレビでサブスクの映画やらドラマやらを見る。これも土曜日の恒例になっている。

「玲奈さぁ、朝食の時そっけなかったよね。」

「そう?」

「なんかスマホいじったりしてるし」

「あれはクールなご主人様を演じてるんだよ。」

「なにそれ。」

 ご主人様とメイドとしての2人を、こうして振り返ってみたりもする。


 この奇妙な関係は、大学を卒業するまできっと続く。いつか雲雀家の本当の使用人になりたいと思っているし、玲奈もきっとそれに気づいている。ただ、焦る必要はない。私が玲奈のメイドであるのは事実だから。

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