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メスガキを葬り去り、さぁこれからヒロインとのラブシーン……といきたいところだけど、さすがにご両親の前じゃ無理でした。

「くっ……くくくく、あはっ☆ あっハハハハハハハハ……!!!」


 突然の哄笑はあのメスガキだ。


 まさか、まだ生きてるのか……!?

 俺は慌てて振り向くと、そこには上半身だけを残したメスガキの姿が! 俺は『太陽の刀』を構えたが、


「よくもアタシを殺してくれたねぇ……褒めてア・ゲ・ル☆ プリモンちゃんはめったに人を褒めないんだよぅ? とくに人間なんかはね……」


 そう言って、不敵に笑うメスガキの顔がどんどん粒子となって薄れてゆく。


「でもねぇ、アタシなんかを倒したところでいい気になっちゃダメだよぅ? アタシなんかよりもっと恐い人たちがいーっぱいいるんだからぁ☆ だからね、すぐにお兄ちゃんたちもアタシと同じ末路をたどることになるよ……アタシ、お兄ちゃんたちが来るのを楽しみにして待っててアゲルからねぇ……☆ げヒッ、えヒヒッ、うヒヒヒ、あハッ、あヒヒヒヒヒ……げゲッ………………」


 最期に寒気のする壮絶な微笑みを浮かべた直後、メスガキは完全に粒子となって消滅した。代わりにアイテムボックスが出現する。


 今度こそ死んだ……のか?

 うん、多分、ちゃんと倒せたんだな……。

 はぁ、驚かせやがって……ふぅ、やっと終わったか……長かったな……何万文字も戦ってた気がする……。

 でも、なんとかなってホントに良かった。


 ほっ、と心の底から安堵。そのせいで俺は『太陽の刀』をしまった直後、急に身体の力が抜けてその場にへたり込んでしまった。


 あかん、もうしばらく動きたくない。肉体の疲れというより気疲れだ。さすが<職業:筋肉>だけあって体力は全然問題ない。けれど張り詰めていた神経が一気に弛緩したせいで、しばらく一歩たりとも動きたくなくなった。


「能見くん、大丈夫!?」


 勇魚が駆け寄ってきて、心配そうに俺の顔を覗き込んだ。ああ、俺を気遣ってくれるその表情をもやっぱりかわいい。やっぱり勇魚って天使だなぁ。天使は何してもかわいいと相場が決まってる。


「ああ、全然大丈夫。身体はへーき。ただ倒せてホッとしたら力抜けちゃってさ」


 力なく微笑む俺に突然、勇魚が抱きついてきた。普段の勇魚からは想像もできない強い力で、彼女は全身全霊で俺を抱きしめてくれた。ただ抱いてくれるだけで何も言わない。

 それでいい。今の俺たちに言葉はいらない。力いっぱいのハグだけで充分に伝わっていた。


 俺はそっと勇魚を抱きしめ返した。勇魚、君は本当に天使だ。ただこれだけなのに、こんなに心も身体も安らぐなんて……。いい匂いもするし、柔らかいし、女の子って不思議だぁ……。


 あぁ、もうずっとこうしていたい。できればこのまま流れでベッドインしたい……なんて飛躍しすぎかな? でもさ、これだけ熱く激しく抱き合うってもう両想いだよね? だって普通好きな人とじゃないとこんなに抱擁しないよね?


 少なくとも俺はもう完全に勇魚が好きだ。ロマンティックが止まらない。

 で、もし勇魚が俺のことを好きだったら……そりゃもう付き合うしかないよね!

 で、付き合ったら抱き合ったりしてるうちにそういう流れになるじゃないですか……!?

 抱擁からの倒れ込む二人、互いに互いを求め、まさぐり、吐息をかわす……うっ、ヤバい……なんか男のシンボリックな部分がむずむずしてきた……!


 くっ、勇魚のあまりのかわいさについつい妄想が爆発してしまった結果、俺のアレがアレしてしまってる……!


 バカバカ、俺のバカ! 何を妄想で先走ってるんだ!

 鎮まれ! 鎮まりたまえ! なぜそのように荒ぶるのか!? 俺のオッコトヌシよ鎮まれ!


 とか祈ってみるけど全然鎮まる気配もない。

 ちぃっ、こうなりゃ俺のたくましい太ももで挟んで押さえつけて隠すしかねぇ!

 秘技『たんたんタヌキのタマ隠し』だ!

 あらよっと、こうしてこうやってこうするの……ふぅっ、これでひとまずなんとかなるか。 


「見せつけてくれるねぇ……女子高生が裸の男に抱きつくのは、パパ感心しないなぁ……!」


 その声にハッ! となって振り返ると、いつのまにかすぐ近くに師炉夫妻が!


 あっぶねー、『たんたんタヌキのタマ隠し』やっててよかった。もしアレがアレしてるところを見られたりなんかしちゃったらもう大変だからな。社会的に抹殺されかねない。

 勇魚は顔を真赤にして慌てて離れた。さすがにご両親の前で抱き合ってばかりいられないよな。俺、裸だし。


「おいマッチョくん、君の実力は認めるがね、勇魚ちゃんとの不純異性交遊まで認めたわけじゃないぞ?」


「お父様! 変なこと言わないでくださいっ! 能見くんはお父様みたいな人じゃないです!」


 勇魚が顔をますます赤くし猛抗議。

 そうだそうだ、もっと言ってやれ!

 少なくとも俺は師炉極より筋肉紳士(ジェントルマッチョ)

 勇魚とは清く正しく美しいプラトニックラブな関係です。他人に後ろ指さされるようなことは断じて何一つしてないと神にだって誓える。


「勇魚ちゃん、ぜーんぜんわかってないぞ! 男ってやつはなぁ、一見紳士の皮をかぶってるもんなんだ。女の子がロマンティックな気持ちで男と肌、男の方はそりゃもうエロエロなことばっかり考えてるんだ。そこのマッチョくんだって勇魚を抱きしめながらどうやってベッドインしようか、なんて考えてたかも知れないんだぞ?」


 うっ、ちょっと図星……。似たようなこと妄想してました。すんません。


「お父様っ! さっきも言いましたが、能見くんは絶対にそんな人じゃありません!」


 くっ、勇魚の擁護がまるでワカサギ釣りで使う氷を削るアレのごとく良心にキリキリくるぜ……! すまぬ勇魚、俺、結構そんな人かもしれません。


「あらあら、あなただってまだ女子高生の私に同じようなことしたじゃないですか? あれはもう二十年も前になりますか……あれはとても寒いダンジョンの蒸し暑い夜でした……。ダンジョンから出られなくなった私とお父さんは互いの無聊と持て余した体熱を慰め合うために――」


「わー!? やめろ小百合子ちゃん! 子供の前でなんて話をするんだっ!?」


 のほほんとした顔と口調でとんでもないことを口走る参甲小百合子の口を慌てて塞ぐその夫師炉極。マイクロビキニ美魔女に全裸のイケメン中年の取り合わせはちょっとした黄昏流星群だな。長い歴史のある漫画だから、探せばこんな中年カップルの話が見つかりそう。


 しかしこの夫婦、娘の前でなんて話をしてるんだ。親のそういうのって子供は見たくも聞きたくもないんだぞ。勇魚がグレたらどうしてくれる。ほら、今も横で勇魚が死んだ魚のような目で見てますよ。


 俺も幼い頃、親父の部屋を勝手に探索してるときに机の中から両親のラブラブベロチュープリを発見してしまった日は一日メシが喉を通らなかったものだ。そんなプリクラを恥ずかしげもなく撮っちゃうような両親だから、若い頃はそりゃもう息子の俺の前でもR15なイチャラブ三昧ですよ。いくらなんでも◯◯◯や◯◯◯◯はやりすぎだ。子供の教育に悪すぎる。あんな両親に育てられてよくグレなかったと俺は俺自身を褒めてやりたいよまったく。

面白いと思った方、ブクマ、評価お願いします! モチベに繋がりますので!

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