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メスガキの命令で全裸にさせられるマッチョガイ

 ああっ、クソほどムカつく……!

 レントンの煽り顔コラみたいな顔して煽りやがって……!!

 覚悟しろよ、絶対に俺の拳でテメェをぐっちゃぐちゃのめっちゃめちゃのぎったぎたにしてそのキレイな顔面を赤塚不二夫作品みたいにして吹っ飛ばしてやるぜ……!!!


「おい! どんな気持ちだって聞いてんだろ!?」


 メスガキが爪の先を勇魚の首に浅く突き刺した。


「うっ……」


 うめく勇魚の首筋からツーと赤い糸を引くように血が流れ出す。


「や、やめてくれ! わかったわかったから! なんでも言うことを聞くから勇魚を傷つけるのはやめてくれ!」


「の、能見くん……」


「えぇ~? なんでも言う事聞いてくれるのぅ~? お兄さん、筋肉の癖してやっさし~ぃ☆ じゃあねぇ、そこで服脱いで欲しいなぁ~☆」


「えっ……!?」


「え、じゃないでしょう~? アタシぃ、お兄さんみたいな自分のことを強くてかっこいいと思ってるチョーシに乗ったバカをその彼女の前で徹底的に辱めるのがだ~い好きなんだぁ~☆ だからぁ、さっさと脱げよ」


 こ、こいつ……ガチのマジで最低最悪のクソメスガキだ……!

 まさか全裸土下座とかさせるつもりなのか? フェアリーテイルみたいに!


 世の中には「かわいい女の子二人の前で全裸になれて土下座もできるなんてご褒美じゃん?」とか言い出す超絶変態ドMブタ野郎もいるらしいが、俺にそのケは全くない。どっちかっていうとちょいSな方だ。

 俺がマゾで女の子に裸を見せて喜ぶタイプの変態ならまだ良かったのだが……いや、よくないな。そんな性癖、この場はよくてもいつか逮捕されそうだし。


 あぁ……俺の人生始まって以来の屈辱だ。怒りのあまり脳の血管がブチギレそうだが、キレてる場合でもなければ逡巡している暇もない。勇魚を人質に取られている限り、俺はメスガキの言うことに素直に従うしかない。


 俺は服を脱いで下着姿になった。


「へいへいへい! 誰が下着着てて良いって言った? 下着も脱ぐんだよ! 全裸だ全裸ァ!!」


 やっぱ全裸か。くぅっ……好きな女の子に初めて見せる全裸がまさかこんな形だなんて……いや、待てよ? ピンチのときには逆転の発想が大事だってジョースター卿も言ってた。


 そうだ、逆に考えるんだ。脱いじゃってもいいさ、と……そうだ、それだよ!

 脱いじゃっても良いんだよ!

 なぜなら俺はマッチョ!

 一般ピーポーと違って今の俺はシュワちゃんばりのマチョメン!

 この芸術的な肉体美をむしろどんどん晒していくべきだ!

 芸術なんだから何を恥ずかしがる必要がある?


 昔はオリンピックだって全裸だったんだし、ミスターオリンピアといえばシュワちゃんだ。

 つまり全裸ボディビルはアリってことだ。

 後半、ちょっと自分でもよくわからない論法になってしまったが、まぁ深く考えないほうがいいだろう。今は正気よりも狂気を大事にしたい。人前で裸になるって結局のところそういうことだから……。


「わかった……! 脱ぐぞ……!」


 俺は意を決してグンゼのパンツを脱ぎ、まるでヒーローが登場時にマントを捨てるがごとくパンツを投げ捨てた。そしてとにかく明るい安村を参考にポーズを取った。

 これなら「安心してください、穿いてますよ」さえしなければシンボリックな部分はちゃんと隠せ、なおかつ俺の素晴らしい肉体とあいまって芸術点がかなり高くなる。


 ふっ、完璧だ……。


「どうだ! 俺の素晴らしい肉体は! さぁ、とくと鑑賞しやがれ!」


「な、なんでそっちがそんなノリノリなの? これ辱めなんだけど一応……」


「の、能見くん……」


 呆れ顔のメスガキ。顔を真赤にする勇魚。


 違う、俺の望んだ反応はそれじゃない!

 彼女らはこの肉体が究極の美であることにまだ気付いていないらしい。

 芸術の上辺しかなぞっていないから、そのような浅い反応しかできないのだ。

 今の俺はいわば芸術の蘊奥(うんのう)。心の目で見なければ、この肉体の本当の美がわからない。それを少し教えてやる必要がありそうだ。


「二人共! もっとちゃんとよく見ろ! これはただの男の裸じゃないんだ! これは究極の肉体美。筋肉の描き出すラインと陰影のコントラストに注目したまえ! ミケランジェロの彫刻に勝るとも劣らないこの美をしっかりと目に焼き付け脳に刻みつけるのだ!」


「ちょっとぉ……アンタの彼ピ、激ヤバなんですけどぉ……」


「そ、そうかなぁ……ふ、普段はそんなことないんだよ? 今だって、能見くんが裸になってるのはあなたが命令したからだし……」


「えぇ~!? アタシのせい~ぃ!? アタシ、変態露出狂の本性現して思う存分楽しめなんて一言も言ってなぁ~~いぃぃ!!!」


「ちょっと待てぃ! 聞き捨てならん! 誰が変態露出狂だ! 勇魚も言ったけどお前がやらせたんだろお前がぁっ! それにこれは断じて変態じゃない! そんな不埒で下劣なものと一緒にするな! これは芸術なんだ!」


「ゲイ術? 急にホモホモしいのはちょっと……アタシ、BLとか興味ないんだよねぇ~」


「ゲイの術じゃねぇ! 芸術だ! アートだよ!」


「ああっ、もうっうるっさい!!! ゲイだかなんだか知らないけど、黙って大人しくしろ! このアホマッチョ!」


「だ、誰がアホ……うわぁっ!?」


 いきなり背後からむんずと首無し巨人に身体を掴まれた。


「は~~~い☆ 気持ち悪い変態はここで処刑しちゃいま~す! あ、一応言っとくけど、抵抗しないでね? ちょっとでも怪しい素振り見せたら、お兄さんのかわいい人、殺しちゃうから☆」


「くっ……」


 大人しく従うしかない。一切無抵抗で微動だにせず巨人に掴まれるのはまるでガキの頃に遊んだソフビにでもなったような気分だ。

 いや、裸だから着せ替え人形の方が近いか。今からドSメスガキにいいように弄くり回されるんだろうなぁ、ああ、今から憂鬱。


「きゃッハ☆ いいザマねぇ~~~! こうやって見るとなんだかお人形さんみたいでかわいく見えるね! アッハーーー☆ ムキムキマッチョ人形なんてやっぱりキモーーーーイ☆ 売れるわけないじゃんそんなの! G.I.ジョーブームなんて何十年前の話だっつーの☆」


 G.I.ジョーを知ってるなんてお前何歳だよ、と危うくツッコミかけたがギリギリのところで口をつぐんだ。余計なことを言って機嫌を損ねちゃ損するだけだ。


「そうだ☆ 万力ゴッコしたいなぁ! ねぇねぇお兄さん! アタシ万力やるから、お兄さんは潰されるほうね☆」


 メスガキは俺が見た中でもっとも醜い笑顔でそんなことを言った。

 ゴッコっていうかそれただの拷問じゃねぇか、と思った瞬間、巨人の手の圧力が急激に強まった。

面白いと思った方、ブクマ、評価お願いします! モチベに繋がりますので!

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