マイクロビキニお母さんとほぼ全裸アフロお父さん
まさか母親の眼の前で娘さんにキスしたり抱き合ったりしていられるわけがない。俺と勇魚は同じ極を持つ磁石が反発するように素早く離れた。ああ、名残惜しい
「ち、ちち、違うの! これはその、ちょっと具合が悪かったから、能見くんに介抱してもらってだけなの!」
顔を真っ赤にして弁解する勇魚。そんな勇魚もやっぱりかわいい。けど、そんな元気いっぱいに腕をブンブン振って必死に否定する仕草を見せつけて「具合が悪い」は通らないんじゃなかろうか?
「ふふふ。勇魚ももう大人になったのねぇ。お母さん、嬉しさ半分寂しさ半分だわ」
ふーっ、と参甲小百合子がアンニュイな溜息をつくと、メテオの影響かズタボロだった彼女のローブが音を立てて崩壊した。
ローブの下はマイクロビキニの美しい肢体だった。高校生の娘がいるとは思えない、まだ二十前後といっても通るほど艷やかに均整の取れたナイスバディとマイクロビキニはよく似合って……って、えぇぇーーーッ!? ま、マイクロビキニ!? 何故にそんな格好!?
ダンジョンで不純異性交遊がどうのこうの言ったくせに、自分はそんな格好なんですかお母さん!!
やはりあの師炉極の奥方様、この人も一筋縄ではいかない癖の持ち主だったか。
「お、お母様! なんなんですかその装備! あっ! 能見くんもそんなまじまじ見ないで!」
勇魚の両手が俺の目を覆う。こんなイチャイチャもなかなかいいな、とは思いつつも、参甲小百合子のマイクロビキニ姿を見られずに残念がってるもう一人の自分もいた。
いやいや、冷静になれ俺。相手は四十過ぎだぞ?
そんなおばちゃんのマイクロビキニ姿ってもうマニアックの極みだぞ?
親世代だぞ?
あ、でも近頃は熟女ものも流行ってるって聞くから、俺に限らず案外皆母性に飢えているのかもなぁ。
そんなことを思いつつも、瞼の裏に参甲小百合子のマイクロビキニ姿が焼き付いて離れない俺なのであった。
「これが私の持ってる装備の中じゃ一番強いんだから仕方がないでしょう? でも、意外と似合ってるでしょう? ねぇ、マッチョさん?」
「ははは……」
笑って誤魔化すしかない。クラスメイトの女子の隣でそのお母さんのマイクロビキニ姿を似合ってると口に出してしまうのも色々と危ないし、かと言って似合ってるっちゃ似合ってるものを似合っていないと嘘をつくのも違う気がする。
よって笑って誤魔化すのが最適解だ。
「勇魚ちゃんったら嫉妬しちゃって。マッチョさんは高校生よ? こんなおばちゃんの身体なんて興味ないわよねぇ?」
「ははは……」
もう一度笑って誤魔化した。笑って誤魔化すって便利だよね。
もちろん興味がないと言えば嘘になります。勇魚の指の隙間からかすかに見える参甲小百合子を今もこうして目で追っているあたり、正直に言えば興味津々なのは否めない。
でもこれって俺が悪いか?
悪いのはそんな中年離れした美しすぎる美魔女な参甲小百合子だ。そんなの思春期高校生男子だったら誰だって見ちゃいますよ。つまりこれは不可抗力なのです。よって俺は無罪。閉廷。
「こうやって女の子は大人のオンナになっていくのねぇ~。勇魚ちゃんの成長をお父さんにも見せてあげたかったわ~」
「おい、人を勝手に殺すな」
いつの間にか師炉極が俺たちのすぐ後ろに立っていた。ほぼ全裸で。あの立派だった装備は剣と焼け焦げて崩壊寸前の股間部分の布切れを残すだけで見る影もない。その上、髪の毛はチリチリに焼け焦げてアフロヘアになっちゃってる。ドリフの爆発オチか。
メテオが直撃するとこうなるのか。ある意味恐ろしい。ついさっきまで颯爽と勇ましかったあの伝説の勇者がこんな悲惨なことになってしまうとは……でも、しかし、うーん、これじゃまるでこち亀の白鳥麗次みたいな凋落っぷりだな。この人はつくづく三枚目になるのを運命づけられてるんじゃなかろうか。
悲惨と言えば悲惨だけど、まぁ、<メテオ>の直撃を受けて全裸にならなかったどころか死ななかっただけでもラッキーと思うべきなんだろうな。もし完全な全裸になっちゃってたら、それはもう本当に目も当てられないわけで。
しかしどうして股間だけ奇跡的に守られたのだろう? ドラゴンボールや北斗の拳でも股間部分は破れないのと同じで、運命力的な何かが働いたのかな。
「お父様……!」
勇魚が半裸パーマの師炉極に駆け寄り、その汚れまくった胸の中に飛び込んでいった。抱き合う親娘。
「よかった……お父様がご無事で……」
「こんなかわいい娘を残して死ねるもんか」
ぽろりと涙を流す娘の頭を師炉極は優しく撫でた。感動の親娘劇場だ。あぁ、俺ってこういうのに弱いんだよなぁ。泣けてくるよ。俺はハンケチを取り出して涙を拭った。
肝心の父親の姿がおもしろおかしいし、それを暖かい目で見守る参甲小百合子がマイクロビキニ姿という一風変わった親子劇だが、それでも泣けるシーンには変わりがない。
「あハハハハハハハ………………!!!!」
突如響き渡ったメスガキ悪魔の声に感動のシーンはすぐに打ち切られてしまった。
声の方へ目を向けると、空中でニヤニヤ笑うヤツの姿があった。
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