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大量のアイテムゲット! 低ランクのアイテムだけど、初めて手に入れたドロップアイテムってなんだか無性に嬉しくない?

「能見くん大丈夫!? どこをやられたの? どこが痛いの?」


 酔ってへたばってると勇魚が駆けつけてくれた。心配そうに眉をひそめるその表情もやっぱりかわいい。勇魚ってマジ天使だ。気分の悪さも天使がそばにいるだけで和らぐ気がする。


「いや、どこもやられてないよ。ただ、回りすぎて気分が悪くなっただけ……」


 あっ、しまった!

 敵をかっこよく殲滅した後にぐるぐるラリアットしてたら酔って気持ち悪くなっちゃいました、なんて素直に言っちゃったら、せっかくかっこよく敵を倒したのが台無しじゃないか!

 ああ、俺のバカバカバカ! おたんこなす(死語)! 脳みそ筋肉の単細胞!

 おい、俺よ、いくらなんでも筋肉アメーバとか筋肉ゾウリムシは流石に言いすぎだろ。俺と俺の筋肉に謝れよ俺。ごめんちゃい俺。あと俺の筋肉。


「え、そうなの? えっと……じゃあ一応回復スキルかけとくね? 効果あるかわかんないけど」


 そう言って、勇魚は回復スキルをかけてくれた。なんだか気分が落ち着いた気がした。ただ単に時間経過で症状がおさまりはじめているだけかもしれないけど。


「マッチョくん、どうだ? 今の気分は?」


 いつの間にかそばに師炉極が立っていて言った。その後ろには参甲小百合子もついていた。


「目が回っちゃって……あんまりよくないですね……」


「あっはは! そうじゃない。君がおしっこチビりそうなほどビビっていた大量のモンスターを、自らの手で一瞬にして全滅させた今の気分はどうか? ってことさ」


「あ……」


 言われて気がついた。そだった。俺、ほんの数分前まで骸骨の群れにビビりまくってったんだっけ……。でも、いざ戦ってみると簡単に倒せてしまった。ビビってたあの頃はなんだったんだってくらいあっさりと一瞬で。


「な? 俺の言ったとおりだったろ? 君のステータスは物理だけで言えば世界でも有数の超有名S級冒険者であるこの俺より遥かに優れている。あんな雑魚モンスターがどれだけ群れたとしても君のステータスならなんの問題もないんだ。これでわかっただろ? 自分の強さを正しく知ることと、自信を持つ大切さが。その二つを大事にすれば、きっと君は一流の冒険者になれるよ。超一流イケメンS級冒険者のこの俺が保証する」


 師炉極はイケメンにしかできない実に爽やかなイケメンスマイルで言った。ホント、この人ってつくづくイケメンだなぁ。言ってることも最もだし。ただ性格だけがちょっとなぁ……。娘を過剰に溺愛することとか、崖から突き落としたりライオンか星一徹かってくらいぶっきらぼうで無茶なスパルタ教育を押し付けてくるのはちょっとダルい。師炉極のような昭和なやり方は二十一世紀生まれの俺には全然合わないし理解に苦しむ。


 それでも……内心では師炉極へ感謝していた。つか、感謝せざるを得ない。やり方は荒っぽいけど、彼のやり方は少なくとも結果として間違ってはいなかった。おかげで俺はまだ少し、少しだけど確実に俺の中に自信が生まれつつあった。そして、俺は一つの確信を得ることができた。


 どうやら俺は、とんでもない激強メチャムキマッチョになってしまったらしい。


 A級モンスターのドラゴンを倒し、そして大量のD級モンスターを簡単に一瞬で倒せるということは俺の実力はA級、いや、ひょっとしたらS級冒険者と同等と考えてもおかしくない。


 S級冒険者……それはそこにいる世界的有名な冒険者、師炉極と同ランクである。


 つーことはだ……俺も師炉極みたいなウハウハでガッポガッポな人生が送れちゃう感じですか!? ツーベン乗ってザギンでチャンネーとシースー! そんな素晴らしい光景が頭に浮かんできた。自信とともに夢がモリモリ盛り上がる。美人な奥さん貰ってかわいい娘ができて、誰もが羨む幸せな理想の家族がいる生活……まさに今の師炉極のようなバラ色の人生がすぐそこまで来てる! くぅ~! 夢が広がりんぐ!


 いや、決してそれらは夢じゃない。今は妄想だが近い将来いずれ実現するのはほぼ間違いない。そう、S級冒険者になればね!


 フッ……フフフのフ……!

 ダメだ、笑いが止まらんぜよ!

 俺の夜明けは近いぜよ!

 つーかもう明けたも同然っしょ!

 実力を確信し、自信を身に着け、余裕すら溢れるマッチョにもはや怖いものは何もない!

 矢でも鉄砲でも持って来んかい! ってなもんですよ!

 フフフフフ! ウフフ! アハハハハ!


 本当は遠慮なく声に出してもっと盛大に笑いたいことろだが、一人高笑いするマッチョメンは傍から見ておそらく相当に気持ち悪いので、そこは自制してモノローグで済まそう。


「あー、マッチョくん? 一人忍び笑いしているところすまんのだがね?」


「ハッ……!?」


 肩を叩かれ振り向くと、師炉極は教室で一人ラノベのお色気シーンを読んで薄気味悪い笑いを漏らすキモヲタ(まさしくかつての俺)を見るような引きつった顔で俺を見ていた。笑いを自制したつもりだったが抑えきれていなかったらしい。鎮まれ俺の妄想笑い! いや本当に静まってください。じゃないとメチャキモいんで。


 目の端で見た勇魚も少し引いてるように見える。漫画とかで顔に影の斜線が入ってるあの感じ。あの優しい勇魚にそんな顔をされるなんて軽くショックだ。でもまぁ、俺が悪い。ゴリデカ強力筋肉野郎が一人忍び笑いしてたらそりゃキモいわな。あの勇魚にも引かれちゃったらさすがの俺も恥ずかしさのあまり即反省モードに入るしかない。


「おいおい、急に笑ったり落ち込んだり忙しい男だな君は。そんなことよりやることがあるだろ? 忘れたか? 冒険者の心得、敵を倒した後にすべきことはなんだったかな?」


 言われて、俺はハッとなった。


 そうだ、敵を倒した後にすべきこと、それはまず第一に周辺の安全確認。

 俺はすぐに<索敵スキル>を……それはマンポ(笑)で使えないので、俺はマーモットみたいに身体をスッくと起こし、目視で敵の有無を確かめた。敵影無し。ひとまず安全と見ていいだろう。


 次にすべきことはパーティメンバーの無事だが戦ったのは俺だけだからこれも問題ない。

 その次はアイテムの回収だ。半透明緑色のスフィア状をしたアイテムボックスが俺を中心として四方八方無数に転がっている。前のドラゴンのときにはテンパってたからAクラスモンスターの希少なドロップアイテムをみすみす見逃してしまったが、何度もその轍を踏むわけにはいかない。俺は大量のアイテムボックスを急ぎ走り回って回収した。


「どうだ? なんかいいアイテムでもあったかい? ちょっと見せてみな」


 俺は言われたとおりに<デバイス>を起動し、入手アイテムの欄を師炉極へと見せた。以下の通りだ。



<Eランク防具・冒険者の服Aタイプ>×2


<Eランク防具・冒険者の服Bタイプ>×3


<Eランク防具・冒険者の服Vタイプ>


<Eランク防具・革の手袋>×6


<Eランク防具・皮のブーツ>×3


<Eランク防具・木の靴>×2


<Eランク武器・鉄のナイフ>×2


<Eランク武器・木刀>×3


<Dランク武器・青銅の剣>


<Fランク回復アイテム・癒やしの水>×9


<Fランク回復アイテム・治癒の軟膏>×7


<Fランク回復アイテム・毒消し草>×6


<Fランク回復アイテム・麻痺消し草>×7


<魔力の結晶・小>×49



「ま、そんなもんだよな」


 ぽんっと師炉極に肩を叩かれてしまった。

 たしかに大したアイテムはない。師炉極からすればカスアイテムばかりだろう。


 でも、俺は正直嬉しかった。だって初めて手に入れたアイテムだから。


 ランクが低くても、あんまり役に立たないアイテムだったとしても、初めてのアイテムはやっぱり特別だ。

 だってそうじゃない? ゲームとかでもさ、初めて手に入れた装備とかって愛着持っちゃってついつい引っ張って使っちゃうってことない?

 たとえばポケモン。初めて貰った御三家は最後までパーティメンバーだったし、初めて捕まえたコラッタも……あ、コラッタは一応進化させたけどすぐボックス送りだったわ。あのコラッタ、ボックスの中でまだ元気にしてるかしらん?


 ちなみに<魔力の結晶>は唯一ダンジョンの外に実体として持ち帰ることのできるアイテムだ。これをダンジョンを研究する機関、つまり国が買い取っている。ダンジョン冒険者はこれを売ることでお金を稼ぐことができるし、研究機関は買うことでダンジョンの研究が進むというわけだ。


 ダンジョン研究はその進捗が国家の存亡と国家間のパワーバランスに強い影響を及ぼすから<魔力の結晶>を大量に持ち帰ってくれるランクの高い冒険者はいわば国家のVIPと言って過言ではない。高ランク冒険者は国家の未来を担う存在だから国家に優遇され、特別な権力を持つのは当然のことだ。

面白いと思った方、ブクマ、評価お願いします! モチベに繋がりますので!

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